2012/1/30

今の子どもが生きる時代  教育・学校・教師


 先週のビッグ・ニュースのひとつは日本の貿易収支が31年ぶりに赤字になったというものでした。

 要因としてはまず東日本大震災でサプライズ・チェーン(部品供給網)が切れ、自動車をはじめとする多くの輸出産業で生産が滞ったこと、また原子力発電所が停まったことで火力発電用の原油やLPガスの輸入が飛躍的に増えたことが挙げられています。

 ただしそうした一過性かもしれない要因以外に、輸出面では自動車や家電の輸出が歴史的円高や新興国の追い上げによって長期的に低落していることや、日本企業が海外に出たため海外で生産された日本企業の製品(部品)が輸入額に組み入れられていることもあり、こちらの方はむしろ年々昂じている永続性ある要因と言えます。そこから、日本の貿易赤字は今後も永遠に続くかもしれないと見る人々もいます。

 もっとも貿易収支はともかく、国全体の収支(経常収支)は今後ともしばらくは黒字のままだと考えられています。それはこれまで31年間の貿易黒字がいわば貯金のようなかたちで(実際には債券や株式・現預金などで)残っていますのでそれを食いつぶせばよいのです。ただしだからと言って呑気に構えているわけにはいかないでしょう。現在の円高が続けば外国企業の追い上げの厳しい自動車・電機といった業種は、どんどん海外に出ていかざるをえないのです。

 すると次に出てくるのがこういう論理です。

「もう日本は、自動車・電機といったこれまで国を支えてきた産業で生き残ることはできない。したがってこういった産業はどんどん人件費の安い海外に出て行ってもらい、そこで稼いだ金を日本の本社に送金してもらう。本社はその資金を元により付加価値の高い製品を生み出し、新たな産業を生み出してそれで勝負するしかない」
 
 もちろんそれは理屈としては正しいものです。しかしそこにあるのは「企業が生き残るためには」「経済大国日本が生き残るためには」といった徹底的な企業・国家論理であって日本および日本人の生き残りという点については、どこまで深く考えているかはなはだ疑問です。

 例えば私たちの学校にいる児童生徒のことを考えてみてください。そこに「より付加価値の高い製品を生み出し、新たな産業を生み出してそれで勝負」するような子が何人いるでしょう。

 私たちの子や教え子の大半は凡人です。そのほとんどがサービス業に従事し、工場で働くようになります。その広汎な選択肢のうち「工場」が丸ごと消えたらどういうことになるのでしょう。へたをすれば教え子の半数近くが路上生活者です。

 最近、日本の家電メーカーが次々とテレビ生産から撤退していますが、製品のレベルが追いつかれたわけではありません。3Dテレビの比較テストを見たことがありますが、現在でもテレビの技術は頭ひとつ抜け出ています。しかし「日本の製品は確かに優秀だが高い」のです。そしてその高さは「レベルの高い製品をつくっているから」ではなく、「実勢に合わない円高によって製品価格が高額に誘導されているから」なのです。そしてそれは政治の力で「なんとかできる」水準のものなのです。

 正直言って、私は日本が経済大国であり続けることにも、世界的企業を維持できるかどうかにもあまり興味がありません。ただ一つ願うことは私の子や教え子たちが、安定的な仕事に就ける時代を維持したいということです。


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