2011/3/10

子どもは一瞬で変わる  教育・学校・教師


 昔、ある小学校に赴任した時の話です。

 まず呆れたのは始業式・入学式の喧騒です。とにかく誰も話を聞いていない、うるさい、入場もばらばらで並ばせるのが容易でない。次にびっくりしたのが清掃のうるささで、全校550名ほどが好き勝手に飛び交っている。当然そんな学校では深刻なイジメ問題があり、職員は細かな事件への対応に追われる毎日でした。

 幸いその年は大量の職員の入れ替えがあり、学校の雰囲気を変えるには好都合でした。4年生担任の若い教師は集会のうるささに苛立ち、毎回誰よりも早く自分のクラスを体育館に入れ、静かに座らせた上で入場してくるほかのクラス一つひとつを静かにさせる活動に取り組みます。音楽専科の先生は全校音楽をほとんどショウ化して、毎回子どもを挽きつけて歌にのめりこませようとしました。校長先生は挨拶運動に熱中していました。そして私は、騒がしい清掃が大嫌いですので(だって大人になって、みんなで楽しく騒ぎながら作業する工場に勤めるなんてことはありえませんから)、毎日清掃の時間になると学校中歩き回り、怒鳴り回り、校内ではすっかり「一番恐ろしい先生」で定着してしまいました。ところがものごとはそんなに簡単に納まらないのです。

 丸1年そんなふうにしてきましたが、清掃は時間中、私の移動する部分だけが静かで、全体の騒がしさは2割減といった感じで落ち着いてしまいました。先生たちもみんなでがんばっているのに、それより進みません。

 どんなに大きな学校でも全員が静かに黙々と清掃する学校というものには経験がありましたから、絶対にできるはずなのにどうしてもうまく行かない。それが不可能な場合もあるのかもしれない、そう思い始めた次の年の4月です。

 入学式の翌日はそこそこ、ところがそれから一週間のうちに毎日清掃が静かになっていって、翌週には学校中がシーンとして15分間を過ごすことができるようになったのです。

 その月の職員会議で、生徒指導の先生が「子どもって一週間で変わるんですね」。そう言ったのが印象的でした。

 思うに入学式の翌日から見えないところ何かの動きがあったのです。可能性としては新6年生です。それから各学年・各クラスに「1年進級したのだから、ここからやりなおそう」という思いを持った子どもが何人かいたのです。その雰囲気が一週間の間に全体に広がって、かつてあんなに苦労したことが一瞬にして成立してしまったのです。

 カウンセラーの富田冨士也は、子どもがやり直そうとする日は年に5回あると言っています。三回の始業式、誕生日、節分(邪を払ってやり直そう!)です。なかでも1年進級した4月の始業式には重いものがあります。

 私たちは丸一年間あきらめずに「静かな清掃」の指導を続けました。それは1年かかって「翌年の4月に子どもがなすべきこと」を示してきた活動だといえます。子どもが「やり直そう」と思ったとき、一年年長らしくするためには何をしたらいいのか、よく分かっていたということです。

 いよいよ終業式も間近になりました。今の学年をきちんと閉じるとともに、さりげなく4月の行動指針を与えておくに都合のよいときです。


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