「佐藤さんとこ、鶏小屋無事だったんですねっ!」
いつも卵を買いに来てくださるご近所のママに、農場まで車で来られるようになったと連絡を入れておいたら、農場に来て開口一番。
それほど今回の雪はひどくて、彼女が自宅から農場まで走ってくる間も、目に入る農業施設はペシャンコになっていたのだそうだ。
「そりゃ俺ここにずっといたからね。」
かつてうちも大雪で鶏舎をペシャンコにされた経験があるから、降っている間もずっと屋根の雪下ろしをしていた。
夜一度食事をとりに自宅に戻ったら、その間の雪で車が出せなくなり、やむなく徒歩で農場に向かおうとした。
歩き出したものの、すでに腰までの雪が積もっていて、普段20分ほどの道のりに2時間もかかってしまい、あわてた。
「どうすりゃいいんだ!くそっ!」
なんとかたどりつき、すぐに作業にとりかかっても、もう肩までの高さになっていて作業が出来ない。
足場を確保しないと踏ん張れない。力が雪の中に消えてしまう。一人で叫んでいても雪の中に消えてしまう。
「あ〜ちょっと待ってろ、待っててくれ。」
夜が明けても、まだ降り続き、止んだのは昼前だった。
止んだところで、この厚さの雪に屋根や柱が耐えられるはずがない。
ほっとする間もなく作業を続ける。
悪いけど鶏のエサやりよりも雪下ろしが先だ。エサの時間だから腹が減ったと要求する鳴き声だけど、ちょっと待たせる。
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それから6日間ほど、同じ作業をしてました。
屋根の雪の重さに鶏舎がいつまで耐えられるか、時間との戦いでしたので、連絡もおろそかになっていました。
申し訳ありません。
一部報道などされているようですが、今回の大雪は、特に農業施設に大きな被害があったようです。
町内でもつぶれてしまった施設が多くあります。
(県東部のブドウやモモのハウスは8割の被害だと聞いております。)
うちも無傷というわけにはいかず、かなり修理が必要な状態になっています。
道路の状況もかなり良くなってはきましたが、クロネコの集荷は来週から、ゆうパックは動き出していますが一日程度の遅れはあるそうです。
この間、たくさんのご心配や激励をいただきました。
本当にありがとうございます。
まだ雪は残っています。これからまだ作業通路を確保して、それから順番にあちこち修理をしていきます。雪が融け、地面が融けないと出来ない作業も多いので時間はかかると思います。
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でも雪です。
春になれば融けます。
春になって、また働けば、いつか元に戻せます。
百姓なんてそんなもんです。
この国はずっとそうやってきたはずです。
そこがFUKUSHIMAとの違いだと思います。
非常に大雑把に言います。
この国は、この国のこの自然と向き合い、畑を耕し、お蚕に糸を吐かせて、それを売った外貨で軍艦を買って、近代化してきた国ではないかと。
だから、畑を耕せなくなるような科学技術の失敗は、もっと大真面目に反省し、もっと大真面目に検証し、もっと大真面目に考え直さなければならないのではないかと。
それがこの国の人の務めではないかと。
それが出来るのがこの国の知性ではないかと。
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重ねて御礼申し上げます。
みなさんのお言葉を抱きしめて、また粛々と、春の準備をする虫や獣の様に作業を進めてまいります。
走り書きになってしまいましたが。
ありがとうございました。
