栗というのは。
その根を地面に垂直に深く伸はすのではなく、水平に浅く広げる性質を持っている。
だから良い栗の木を育てようと思えば、果樹園の土の上層部・浅い部分の状態が大事になる。
畑を耕さず、逆に草を生やし、それを刈る事で管理する「草生(そうせい)栽培」という果樹の栽培方法がある。
土を耕さず、起こさず、そのままの状態で適度に草を刈り、そこに住む微生物や虫や小さな動物の生態系をそのままにして管理する方法。
地面の表面に近い部分には、沢山の生物が棲んでいる。
菌や微生物、虫、ミミズの類、モグラ。ヘビやカエルやネズミなんかは地面の上や下を行ったり来たりする。
こうして書き出すとなかなかにぎやかだな。
だから、そこを耕さず棲んでいる生き物の生態系をそのままにして、土を生き生きにぎやかにして、果樹の根も生き生きにぎやかになってもらい、いい作物の収穫を目指す、のが草生栽培。
耕さなくていいんだ?楽?と思われがちだけど、もちろん注意深く、適度に草の管理をしなければならないからむしろ手間はかかる。
草を必要以上に刈らず、その上から施肥をして、枯れた草や肥料の分解を微生物や虫たちの生態系に委ねるという方法は理にかなっている。
いい収穫が出来ると思う。
さらにそこで、肥料を化学肥料ではなく有機質の物に代えたいという場合は、肥料の質が問題になると思う。
土にすき込まないので、有機肥料を表面に放置する事になる。
完熟した堆肥などでないと、やっぱり臭い。
この頃は果樹園っていったって、どこもすぐそばに住宅地がある。臭いがねぇ・・・
有機肥料はこういう場面では肩身が狭い。
特に。
都会・都市農業でそれをやるには、本当に臭いがしない良質な有機質肥料ガが必要になる。
「暑い夏だったけどどうです?栗の出来は?」
「あれだけ暑いとやっぱりダメでしたね。難しいです。」
杉並区高井戸での栗の草生栽培には、どうしても臭いがしない鶏糞が必要、ということでトラックを飛ばして取りに来る農家がいる。
暑い夏だった事なんて誰も忘れちゃってるけど、厳しい夏だったよね、と労い合う。
暑い夏が過ぎ、収穫を終えたこの時期の施肥を“お礼肥え”と言う。
栗もこの鶏糞で養生してもらう。
「怪我とか気をつけてくださいね。」
「ジョージさんも。」
鶏糞満載のトラックが都会の栗林に向かいゆるゆると走り出す。
みなさん道を開けてくださいね。W
(というわけで焼きたて「くりのないとう」の焼き栗いただいちゃった!ホクホクうまうま!)
