「ゴリラは戦わない」という本がある。(中公新書ラクレ2017年)
京都大学総長でゴリラの研究者である山極壽一さんと前の旭川動物園(北海道旭川市にある入園者数日本一の北端の動物園)の園長小菅正夫さんの対談集。
もちろん一般向けのわかりやすい本。
ちょっと長いけど最初の紹介の部分。
「小菅正夫さんはとても運がいい人だと思う。それは一つには動物と長年付き合ってきたからだ。動物には人間の言葉は通じない。だから動物たちに関心を持ってもらい、信頼感を増すためには、どうしても「この人間なら大丈夫」という安心感を言葉ではなく、体全体で表現しなければならない。
とりわけ、動物園ではその表現が重要になる。自然の環境では動物たちは自分の仲間に頼ればいいが、動物園ではその仲間がいない。仲間がいても信頼できるとは限らない。自分の生活空間は限られているし、餌を与えてくれるのも、自分の健康を気づかってくれるのも人間である。その人間が頼りなかったり、運が悪そうに見えたら、動物たちは不安になる。・・(略)・・小菅さんは長らく獣医として、動物園の園長として、動物と人とが築き上げてきた信頼のピラミッドの頂点に立ってきたのである。運に恵まれているように見えなければ、それが勤まるわけがない。」
ふふふ。
そだね〜。 でなきゃ勤まんない。
平飼いの養鶏場だって、番犬や鶏に信頼してもらわなきゃ成り立たない、同じだからわかるわかる〜。
そんな書き出しで始まって、ゴリラやニホンザルの生態や社会を基に、進化をたどりながら、ヒトの子育て、食生活、これからの人間社会の作り方に話を深めていく。
わかりやすい本だけど、そこはそれ、天下の京都大学の総長だから、一つ一つの話が深くて広くてつながっている。
「ゴリラは人間よりカッコイイ!!」と「人間はゴリラに学べ!!」の二章から成る面白い本。
お時間のある方ぜひどうぞ。864円。
連休、ここ北杜市はすごい人出だった。
いやぁホントに。
道の真ん中に車止めて山に向かってスマホかざして写真撮ったり、どうしてここで交通事故?って場所で車がボコボコだったり。
地元のスーパーやジェラード屋に行列が出来たり。
住民にしてみれば普段の生活空間がアミューズメントパーク状態になるから、それはそれで面白いちゃ面白い。
もちろんやって来る観光の人にとっても気軽に行ける田舎っていうアミューズメントパークって事でやって来るんだろうけど。
うわ〜っと大勢やって来て、うわ〜っと時間やお金を消費しては帰る。
それでここらで商売してる人は潤う。
その消費の潮が引いて、また静かになったので、農場から車で1分ほど山に入った熊がいる森に行ってみた。
名水百選・尾白川が見下ろせていい気分。
そうそう、あのあたり。子供が小さい頃犬と一緒によく泳いだな。
「動物園はこれからますますその役割を強めていく筈である。超スマート社会の到来で、人間が自然と離れていくのを食い止めてくれるのが「野生の窓」である動物園だからである。だからこそ動物園は野生を忘れてはいけない。そして、野生動物たちが急速にその本来の暮らしを失いつつあることも忘れてはいけない。私たちはまだ野生動物から学ぶことが沢山ある。野生を失った時、動物園も人間も進化の歴史から切り離された、ただの人工物に成り下がってしまうからである。」
(同じく「ゴリラは戦わない」から)
誰もいない川で犬や子供と必死になって泳いで遊ぶなんて、アハハ、馬鹿みたい?
だけどこっちは大真面目だった。
ここでこんな風に家畜を飼って、番犬育て、子供育ててとなると、自分には足りないものだらけだったからね。
いっぺん、自然に身体放り出して、いっぱい失敗して。
それから何かを獲得しなきゃ、どうにもならんかった。
で。それで、今現在上手くいってるかどうかは、まだまだこれからなんだけど。少し野生に踏み込んで生き物を考える、ま、うちはそんな農場。
日常の中に野生はある。
尾白川の川辺にはキャンプ場もある。Tokyoには農業の現場を身近に感じられるこだわりの野菜や食品を扱うお店もある。その素材をストイックに使ってお菓子を焼く職人がいて、それを売る店がある。
うん。
動物園がそうであるように、日常の中に野生の窓はある。
ぜひ見つけてくださいね。
