お百姓の仕事っていうのはとても作業の効率が悪い。
そもそも作業の種類が多いし、作物なり畜産物を育てるわけだから時間がかかるし。
その上うちみたいに個人でやってるお百姓は、請求書書いたり集金したり営業出たり。
はたから見れば、馬鹿みたいに効率が悪いと思う人がほとんだと思う。
けど、それをやる側になってやってみると、実際、こんなもんなんだよね。
食糧を作るって、機械や電気や石油、化学肥料や薬にあんまり頼らずに、自分の身の丈でやってみると、ホント大した事出来ない。
動くお金も少ないけど、いったいこれで何人分の食糧を作っているんだろう?って思う。
2008年にノーベル物理学賞を受賞した理論物理学者の益川敏英博士が書いた「科学者は戦争で何をしたか」という本がある。一般の人向けの解りやすい本。
「ノーベル賞科学者益川敏英が、自身の戦争体験とその後の反戦運動を振り返りながら、科学者が過去の戦争で果たした役割を詳細に分析する・・・解釈改憲で「戦争をする国」へと突き進む政治状況に危機感を抱く著者が、科学者ならではの本質を見抜く洞察力と、人類の歴史を踏まえた長期的視野で、世界から戦争をなくすための方策を提言する。」(2015年集英社新書)
その中に「科学者自身でさえ、巨大化した科学の中で、研究が分業化、細分化されて、自分がしている研究が、一体どんな目的でなされているか、その全貌が全く良く分かっていない場合が多いのです。」とある。
そうだよね。科学者だって意思を持って全体を想像する事をしないと、悪意の為政者にもてあそばれる。
それにはまず、身の丈を知っていないとという事なんだと思う。
「近頃の若い者はスマホやゲームばかりで外に出ない。まったく。」
という科学者のボヤきを聞いたのは、サイエンスフェスタという高校生の科学研究発表会でのこと。
山梨科学アカデミーの博士が、フィールドワークの重要性を説いていたのだけれど・・・
そこらにいる典型的なおじいちゃんが言いそうな台詞だったから笑った。
その博士も深くかかわる大村智自然科学賞という中高生の表彰の式で。
ノーベル医学生理学賞受賞者大村博士が
「人を思いやる心を持って初めて科学が社会の役に立てる。科学+人格=社会貢献というシンプルな方程式を覚えてほしい。」
とスピーチしていた。
この場合の人格って、自分の身の丈を知ると翻訳していいのだと思う。
受賞者の中高生に向けてのスピーチに、教育者でもある大村博士の反戦の意思を感じる。
ヒトが社会を形成する動物に進化して、社会が脳で想像出来る大きさを超えた。
それでいろいろと不都合があるように思えるけど。
身の丈感覚を手放さなければいいのだと思う。
馬鹿みたいに効率が悪い農業を仕事にしている人が知り合いにいたら、その人を見ていればいいのだと思う。