紅葉も里まで降りてきて、ちょうどいい、いい感じの日に、
お客さまが二人連れでいらした。
もう長く付き合ってもらっている小売店さんとそのお連れ様。
そうだなぁ・・想像していただけるかなぁ・・
うちのお客さまはほとんどそうなんだけど、取り引きが始まるとお付き合いが長くなる。かけ引きをしながら落としどころを探っていくみたいな商習慣がない業界だし、作るほうも売るほうもバカみたいに理想を追いかけているようなところがあるから、会えば考えている事を、いつも、全部ぶちまける。
だからね、なんかね、お取引先様なんだけど、古い友人みたいな感覚がある。
とりわけ、今回いらしたMさんは、私的な事もいろいろ話す友達。
いつものように鶏小屋に入って、鶏を見てもらって。
「臭くないですね。」
「これぐらいの密度だと臭いもこんなもんだよ。平飼い養鶏でも大手だとこの4倍ぐらい入れてるところもあるし。
別に特別、何しなくても、こんなもんだよ。床、土だし。
鶏糞(野菜農家が使うので袋詰めにして出す)作業、他人に取らせると底の菌が住んでる大事な所まで全部もってっちゃうから、自分でやる。それが疲れる。笑」
そんな会話をゆっくりする。
それから農場をぐるっと見て、一角に積み上げているブロックの前で
「ここ焼き芋やるとこ」
「あ、ホントだ。焼き芋やった跡がある。笑」
テキトーに落ちてる枝燃やしてやる焚き火の跡を見て笑う。
一本だけ立っているミズキの木の下で
「ここがお墓、代々の番犬の。四匹埋まってる。笑」
農場の裏から森に入っていく。
「それ、何かの獣道。」
「そうだ、クマが木を引っかいていった跡がすぐそこにあるから見に行かない?」
「これサルのわな、こんなの捕まるわけないよね。笑」
「で、これが牛塚、昔トラクターみたいに使ってた牛や馬のお墓。
ここが多分この集落の鬼門で、塚にして邪気が入ってくるの防いでるんじゃない?
この村は古くて縄文時代から人が住んでたみたいだし、風水がわかる人が見たら、解りやすい村の造りロケーションになってるんじゃないかな?」
しばらく歩いてまた農場に戻り
農に関するあらゆることをだらだら話す。
「岐阜大の農学部が名前が変わって、応用生物科学部とかになっちゃったんだよね。
それってどうよ?って思う。
なんか根本の思想というか哲学というかが違うんじゃないか?ってね。
農学って、命の利用っていう部分だけ取り出せるものなのかな?
農業って、もう少しすべての事に連動していると思うし、それがこの国の気候風土だと思う。
戦略的に穀物生産するのがアメリカ穀物メジャーだと思うけど、この国の農業はもう少しいろいろコミコミで成り立っていると感じるよ。
生命工学(?)の部分だけを取り出すんじゃなくて、森羅万象に連動させていく方向が未来的だと思うけど。」
なぁんて話を話す。
気心が知れた農学部出身の人だから、かなり端折って乱暴なぐらいな雑さですっとばして話す。
ま、農家がやる畜産だから、境目がない。
鶏飼いも焼き芋もイヌの散歩も、キツネやタヌキやクマや牛馬、村の歴史や農村の構造や風水、全部つながってる。
それが農業、それで農業。
あんまり話が長いので、番犬もあきれて昼寝をはじめる。
「飼い主が笑ってるからイヌも緊張しなくていいって思うみたいだよ。
にわとりも多分そう。さっき小屋にはいってもらった時もおとなしかったでしょ。普通平飼いでも知らない人が小屋に入るともっとざわつくもんだけどね。
最近、やっと少しわかってきたんだ、俺。」
小売店とかネット販売とかの、
お客さまがいらしたので、
笑いながら未来のことを話した。
