はじめはどんなご縁だったか?
たまたま農場の前を通りがかっただけ?たしかそうだな。
ときどき農場に卵を買いにいらっしゃるのは近所に別荘をお持ちのAさんというご夫婦。
いつも静かに入っていらして、奥様がにこにことお話をされるのをご主人がやはりにこにこと聞いていらっしゃる。
何回かお話をさせていただくうちに、ご主人は定年まで大学教授をされていて、在任中には高校の社会科の教科書の執筆もされていた事を知った。
へぇ〜
勉強しない子(私)にとっては、教科書なんてすごい遠い存在だから、それを書く人なんてさらに遠くて、まさに、「へぇ〜」だった。
ちょっと珍しい動物、この辺で言うとニホンカモシカ、に出くわしたような感覚になった。
(あ、例えが悪いですね。すみません。)
少し前の日曜日の朝、またいつものように、静かに、卵を買いにいらして、いつものように雑談になった。
「佐藤さん、読みましたよ。」
ネットで知った京都大学の先生や学生が立ち上げた「自由と平和のための京大有志の会」の宣言を自分のSNSに貼り付けておいたら、Aさんそれをご覧くださった。
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http://www.kyotounivfreedom.com/news/manifesto/
戦争は、防衛を名目に始まる。
戦争は、兵器産業に富をもたらす。
戦争は、すぐに制御が効かなくなる。
戦争は、始めるよりも終えるほうが難しい。
戦争は、兵士だけでなく、老人や子どもにも災いをもたらす。
戦争は、人々の四肢だけでなく、心の中にも深い傷を負わせる。
精神は、操作の対象物ではない。
生命は、誰かの持ち駒ではない。
海は、基地に押しつぶされてはならない。
空は、戦闘機の爆音に消されてはならない。
血を流すことを貢献と考える普通の国よりは、
知を生み出すことを誇る特殊な国に生きたい。
学問は、戦争の武器ではない。
学問は、商売の道具ではない。
学問は、権力の下僕ではない。
生きる場所と考える自由を守り、創るために、
私たちはまず、思い上がった権力にくさびを打ちこまなくてはならない。
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うれしくなって、少し大きな声で
「そうですよね。学問は学問、何ものにも干渉されない至高なものですよね。」
なんてチョー生意気を言ってみても、いつものようににこにことうなずいてくださる。
それから、その日国会周辺で行われたデモの話をすると
「私も60年安保の時は国会を取り囲みに行きました。」
え?そうなんだ。
本当にとても静かで、しかも国立大学の教授で、しかも教科書を書かれていたような方だから
デモとかとは無縁なのかと勝手に思っていた。
そっか・・・そういうものなのだな。
うちのような農場をおもしろがって、ブログを読んでくださってわざわざ買いにお越しになるなんていうのは、半端な好奇心じゃないもんな。
好奇心の体力とでも呼べばいいのか?持久力、集中力が桁違いなのだろう。
その好奇心に、右だの左だの体制だの反体制だの関係ない。
今どうなっていて、これからどうしていくべきか。好奇心と行動。
大学で学生に教え、公民の教科書を書く「知性」とはこういうことなんだな。
自分の浅はかな思い込みを恥じる。
何日か前の新聞に作家の保阪正康のコラムが載っていた。
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http://sp.mainichi.jp/shimen/news/20150912ddm005070015000c.html
戦後70年の8月、さまざまな風景が描かれたが、実は意外と思われる出来事があった。あえてふれておきたい。
8月14日の安倍晋三首相による談話発表の前に、元首相5人が安倍首相に提言を試みた。戦後の長期間、マスコミで働いてきた記者・編集者が、「歴代首相に安倍首相への提言を要請するマスコミOBの会」をつくり、12人の元首相に要請文を送ったのだという。その結果、5人が文書で1人が電話での回答になった。この5人の文書を、たまたま私も入手したのだが、安倍首相に対する率直な不満や不信を知り、驚くほどの内容であった。
羽田孜氏の提言には、「『戦争をしない』これこそ、憲法の最高理念。平和憲法の精神が、今日の平和と繁栄の基礎を築いた。特に、9条は唯一の被爆国である日本の『世界へ向けての平和宣言』であり、二度と過ちを繰り返さないという国際社会への約束」とあり、末尾は「安倍総理から日本を守ろう」と結んでいる。
鳩山由紀夫氏の2400字に及ぶ提言では、いくつかの鋭い指摘がされている。たとえば、「あまり報道されませんでしたが、昨年オバマ大統領が来日した際の記者会見で、『小さな岩のことで中国と争うのは愚の骨頂』と諫(いさ)めた通りです。安保環境が悪化しているならまだしも、その時よりはるかに良くなっているにも拘(かかわ)らず、『戦争に参加するための法案』を、なぜ今更議論するのでしょうか」と弾劾している。
安倍首相の答弁がまったくの筋違いであることを具体的に書いた後、集団的自衛権の行使に反対の持論を明らかにして、「私は日本を『戦争のできる普通の国』にするのではなく、隣人と平和で仲良く暮らすにはどうすれば良いかを真剣に模索する『戦争のできない珍しい国』にするべきと思います」と結ぶ。
細川護熙氏は「安保法制の審議について」と題し、2500字で自らの意見を鮮明にしている。冒頭ではっきりと、「安保法制関連法案は廃案にすべき」と断じ、その内容と手続きの両面で問題があると指摘する。内容については、「憲法9条をもつ平和憲法を変えることは(解釈改憲によるとしても)、世界に確立した平和国家日本のイメージを損なう危険があるばかりでなく、日本人自身にとっても、その目指すべき将来の国家像を混乱させる」と訴えている。さらに首相以下閣僚のあいまいさも憂慮する。
「例えば集団的自衛権行使のいわゆる3要件のひとつに『存立危機事態』があるが、しかし、ここには『武力攻撃事態』のような外部から客観的に判定可能な指標がない」、つまり首相の恣意(しい)的判断の歯止めがないと言う。末尾では、やじを飛ばすような唯我独尊の姿勢に苦言を呈し、「そのような手法で、違憲の疑いの強い安保法制を成立させることは、わが国の国益を損なうことになると言わざるを得ない」とたしなめている。
このほか村山富市氏、菅直人氏の提言もあるが、しかし羽田、鳩山、細川の3氏の見解と論点は確かに55年体制の社会党よりも筋が通っているし、密度も濃い。この3氏はいずれも自民党に籍を置くところから政治活動をスタートさせている。それも田中派に属していて、3氏とも田中角栄元首相に教えを受けている。3氏の動きを見ていると、田中政治は単なる金権政治と批判されるが、実はそれとは別に鋭い歴史感覚をもっていたのではなかったかと思わせる。
日中国交回復に至るプロセスには歴史的清算の覚悟がある。さらに、日本列島改造論は、商社などの土地買い占めで本来の構想とは別の形になって解体したが、そこには都市の恩恵を地方に分散していくとの田中哲学もあったのだろう。この哲学が不可視よりも可視を大切にしたり、国民の欲望を政策化したりするなどのマイナス面があったにせよ、3氏のような見解や歴史観を育てたとすれば、やはり田中角栄は、昭和という時代の傑出した政治指導者だったといっていいだろう。
今、安保関連法案の推進役である自民党の谷垣禎一幹事長は宏池会の出身、高村正彦副総裁は三木派の流れをくむのだが、宏池会を率いた前尾繁三郎、大平正芳、さらに鈴木善幸ならば、こうした安保関連法案にどのような反応を示すだろうか。あるいは三木武夫は、しばしば戦前からの議会人であることを誇りにしていたが、今のような法案審議にどういう意見を述べるのかも、その政治経歴と併せて考えてみるべきであろう。
これは愚見といわれるかもしれないが、昭和を動かした政治家はどのような門弟を育てたのか、この安保関連法案の審議を見つめながらじっくりと考察してみたい。
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政府が今週にも成立させたいこの法案を、国民の多数の支持しているとは、考えにくい。
外交上の緊急性がはたしてあるのだろうか?
あるいは国内で採決を急ぎたい勢力があるのだろうか?
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http://www.asahi.com/articles/ASH9B5S9HH9BUTFK01C.html
経団連は10日、武器など防衛装備品の輸出を「国家戦略として推進すべきだ」とする提言を公表した。10月に発足する防衛装備庁に対し、戦闘機などの生産拡大に向けた協力を求めている。
提言では、審議中の安全保障関連法案が成立すれば、自衛隊の国際的な役割が拡大するとし、「防衛産業の役割は一層高まり、その基盤の維持・強化には中長期的な展望が必要」と指摘。防衛装備庁に対し、「適正な予算確保」や人員充実のほか、装備品の調達や生産、輸出の促進を求めた。具体的には、自衛隊向けに製造する戦闘機F35について「他国向けの製造への参画を目指すべきだ」とし、豪州が発注する潜水艦も、受注に向けて「官民の連携」を求めた。産業界としても、国際競争力を強め、各社が連携して装備品の販売戦略を展開していくという。
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私は、勉強が出来る子ではなかった。
だけど、こうして元大学教授という知性と立ち話をすると、(どんなに勉強が出来ないヤツでも)考える事を止めてしまっちゃいけないんだなと思う。
政治家も官僚も経済人も学者も、自分の都合のいい所で、考える事を止めてしまっているように思う。
この国の風土でお百姓を営み、アメリカの農場でメキシコ人労働者と働き彼の国を底から覗き上げた経験がある鶏オヤジは思う。
東洋と西洋の終着点ともいえる国で、考え続ければ、この法案ではない、もっと違う新しい時代のやり方があるはずだと強く思う。
あ、そうだ思い出した。
なんで元大学教授なのかを知ったのかを思い出した。
卵を買いにいらした最初の頃、雪の日にAさんの車が脱輪したんだ。
何か音がしてるな?と思ってみてみたら脱輪しててJAFを呼ぼうとしてたんだ。
こっちは慣れてるから、丸太と板でちょこちょこっとやって脱出したんだけど、その時そんな話になったんだ。
そうそう、その時「へぇ〜」って思ったんだ。
とても申し訳なさそうにされていたな。
シャイで 物静かで 強い責任感がある。そんな元大学教授が時々農場にお越しになる。
