卵の養鶏場とお肉の養鶏場がある。
卵の養鶏場では卵を産むために品種改良された鶏がいて、肥育の養鶏場には太るための専用の鶏がいる。
卵の鶏はどのぐらい卵を産むか?肉の鶏どのぐらい太りやすいか?を主題に改良を重ねられてきた。
鶏の品種改良は今から150年ぐらい前から始まっている。
家畜としての鶏は2000年ほどさかのぼると言われているけれど、現代につながる産業としての養鶏はその頃からで、同時に品種改良は始まっている。
同じ量の餌を食べさせて、どの鶏がいい成績で、それを残して交配させて、さらにいい成績を残すかどうか調べて・・という実験をくりかえして品種にしていく。
今、日本で飼われている鶏は、そのほとんどが外国鶏だ。
海外のブリーダー(品種開発交配業者)が開発した品種が、赤玉、白玉、鶏肉、どのジャンルでも主力になっている。
農場はヒナ屋さん(ヒナ供給業者)からヒナを買い、卵や肉の生産をする。
供給される優秀な品種であるけれど、再現性がない「一代雑種」であるためそのヒナを買い続けなければならない。
(一代雑種を大雑把に言うと、優秀な個体を得るために何代にもわたって交配させて優性遺伝を発現させる技術。だからうちの卵を孵化させても親と同じ性能が得られないようになっている。毛色も卵の殻の色も産卵率もバラバラになる。)
その元の鶏を押さえるブリーダーってやつは、 穀物メジャーが資本を持つビッグビジネス。要するに餌と鶏、セットって事なんだよな。
かつて日本でもやってたんだよ。
縮小されて移転してしまったけど福島の白河の森の中に国の種畜牧場があってノーリンクロスの品種名で開発していた。
山梨にも農協の連合会が地元ブランド鶏や牛や豚の開発のために持ってたぐらいなんだけどね。
今は宗教団体の研修施設になっている。八ヶ岳の南斜面にあって、日が当たるいい農場だったのにな。
たま〜にスーパーとかで唐突に「国産鶏が産んだ玉子」ってうたってる玉子がある。
買い物のお客さん側にすれば何で?どういう意味?って思ってしまうだろうけど、それは、そういう業界事情があって、それで、そういう生産者の思い入れ。
ネットで流れたのはこんな話。
大手フライドチキンチェーンが連想されるコラージュ写真に毛のない鶏が写っていて「その大手チェーンでは遺伝子組み換え技術で(処理が楽なように)毛のない鶏を開発してその肉を使っている。」っていう解説が付いていた。
まあ・・・こんな話ありそうだよなっていう、いかにもありそうな、誰でも考えそうな安っぽい話なんだけど、これが結構あちこち流れちゃってた。
・現代の養鶏では採卵鶏でも肉用鶏でも、これ以上ないぐらい品種改良されていて(例えば採卵鶏では卵をピーク時で98パーセント産む。100羽いて一日98個。)遺伝子組み換え技術が入り込む余地はもうない。
・それに、やっぱり遺伝子組み換え技術は、非常に劇的な環境で行われるからものすごくコストがかかる。
そのコストに見合う利益が出る可能性がなければ、研究は行われない。
・それだけのコストをかけるのならば、もっとすごい毛抜きの機械を開発できるはず。
(業界雑誌を見てみると、屠殺から食肉加工まで最新の機械の広告が載っている。その性能もすごくなってる。)
知ってさえいれば、こんなベタな話が嘘だと誰でも冷静に判断出来るのにな。
もしかしたら・・・
あまりに大量に流通している事実を、みんなどこか直感的に疑って不安になっている事の裏返しなのかもしれないな、とも思う。
大丈夫ですよ。そんな事に遺伝子組み換え技術は使われてません。
ケージ飼いの鶏がストレスから互いにつつきあうのを防ぐために鶏用の赤いカラーコンタクトレンズが開発されたり(実用化は「?」ですけど)
窓のないウィンドレス鶏舎で30分ごと照明を点滅させて産卵率を調べる実験をしたり(この技術、普及しませんでした)
夏の暑さ対策のために夜中の一時に電気つけて鶏たたき起こして餌食べさせたり(これはやってる所あります)
肉用種の育成期に増体率がいいからって抗生物質の使用を奨励したり(出荷前は休薬義務あり)
・・・そういう喜劇的な事はやってますけど。
品種改良に遺伝子組み換え技術は使われてません。
つづく・・