朝の農場作業を終えて三軒茶屋に向かう。さて・・・
甲府で乗り換えた特急あずさで隣に40代の男性が座る。
普段、半径5メートル以内にいる動物といえばニワトリか犬かで。
見える範囲に広げても、サル、シカ、タヌキ、キツネ、イノシシの順番でその次がやっと人間になる。(家族と集荷のトラックのドライバーさんを除く)
だからこの距離、すぐ隣に誰かがいるという事だけで「いつもと違う状態」でちょっと緊張するんだ、実は。
しかもこの男性が(紳士的なサラリーマンなのだけれど)香水のようなものをつけていて、その香りが強すぎて、それでさらにくらくらしてくる。
ふだん嗅ぐにおいは、森の臭いか、鶏糞とか犬とかニワトリとかの臭いだから、そっち系は少々臭くても大丈夫なんだけど、むしろこっち系のいい匂いはダメだ。
電車なのに船酔いしそうだ。ぐぅ〜・・・
新宿にたどりつき、それから渋谷。
酔い覚まし(?)にハチ公のスクランブル交差点あたりをぐるぐる歩いたけど、酔いが覚めないうちに時間になってしまい、乗り換えの田園都市線のホームにもぐりこむ。
あんまりいい感じじゃないな。ふぅ・・・
案の定、たまごカフェが始まっても、ちっとも上手く話せない。
話そうと思っていたことが出てこないし、ネタ帳を見ても自分が書いた字が目に入ってこない。
まいったな。あちゃちゃ・・・
冷や汗をかきながら話してしていると、結局、お客様が助けてくれる。
お客様からいくつか質問をいただいて、それでやっとお客様の気持ちがわかるようになる。
何を話せばいいのか、何を話に来たのか、やっと目が覚める。
お食事とお菓子とお茶で2時間半。
予定を30分オーバーして終わりのご挨拶。
「下手ですみませんでした。でも、少しでも農場の話が出来た事をうれしく思います。本当にありがとうございました。」
それから、CafeCafeさんにお礼を申し上げて駅に向かって歩き始めると携帯が鳴る。
「いかがですか?」「いまそちらに向かってます。」
早稲田であった取引先の自然食品店さんの会合の二次会におじゃまさせていただく段取りになっていて。
割り込んでいって、最新の養鶏事情を駆け足で説明する。
最近増えている大手養鶏場がやっている平飼いたまごと、意識がある農家がやっている純正(?)平飼いたまごの違いをわーわー話す。
「違うんですよ。全然。」
お開きになって、お誘いいただいたうちのたまごを扱ってもらっている神奈川・大和市のヘルスロード・
ミウラ店長と、終電をにらみながら新宿南口の店で話しこむ。
「食品の安全性とかを論理でお客様に伝えるって大事だと思うけど、うちの農場の場合はもっと・・こう・・お客様の感情をゆさぶって、情緒的に、買い物して欲しいんですよね。」
なんてものすごく!抽象的な話をする。
「安全だけを言っているとどうしても自分のとか自分の家族の健康だけを考える・・ある意味、利己的な買い物になっちゃうんじゃないかって。」
「もっともっとうちの農場・俺の事おもしろがってもらって、感情に訴えて、シンパシー感じてもらえれば、もっと(俺がいた)メキシコとか、世界の食糧事情まで、お客様の意識が広がるんじゃないかって・・・ま、思い込みだけど!」
時間切れで、ホームに駆け下りて最終の特急あずさ。
甲府からの最終各駅停車は午前零時をまわる。
途中からはもう俺が座る車両は一人だけ。なんとか寝過ごさないようにがんばって、軽トラを停めてある穴山駅に降りる。
無人駅の改札をぬけるともうすっかり暗闇で。
田舎のこんな時間は、もうホントに真っ暗で、何の音もしなくて。
俺以外は何も、動いてさえいない。
ふぅ。
息を一つついて、元の日常に戻っていく。
行ったり来たりして・・・何が出来るのかな?何か出来てるのかな?
今日会った人の顔が浮かぶ。
・・・・・・もうちょっと、がんばろっと!
(「たまごカフェ」お越しいただきましてありがとうございました。もうちょっとがんばってまいります。画像は今回のお菓子・ミルフィーユです。)
