お客様からタマゴの黄身の盛り上がりについてのご質問をいただいた。
で、お答えを書いた。
そのままブログにのせるのも何なので、ちょっと加えたり削ったりして。
お客様へのご案内。
お客様
いつもタマゴをご利用いただきましてありがとうございます。
黄身の盛り上がりについてご案内いたします。
たまごの黄身の盛り上りは、いくつかの要素で決まってきます。
まずは、産んでからの時間。
これについては、マスコミでもちょくちょく取り上げられていて、皆さんよくご存知ですね。
産みたてがもっとも盛り上がっていて、時間の経過とともに平らになっていきます。
その間の温度が一定の方が、変化はゆっくりです。
あとはたまごを産むニワトリの状態。
ニワトリは一日120グラムぐらいのえさを食べ200ccぐらいの水を飲み70グラムぐらいの卵を産み120グラムぐらいの糞をします。
そういう生き物です。
夏はたくさんの水を飲み体温を調整します。(ちなみに汗をかきませんので、自然の状態では砂浴びをして体表温度を下げます。)
冬はあまり飲みません。
(人間と同じように)動物として当たり前の行動が、卵の盛り上がりに影響します。
そうです。冬はぷりっとしていて夏はだらっとしています。
ケージの養鶏やブロイラーでは糞の処理を楽にしたり黄身の盛り上がりを出すために、飲む水の量を制限する場合があります。
ニワトリの日齢も影響します。
産卵を開始してから最初のころの卵は、サイズは小さく、殻は厚く赤玉でしたら色は濃く、割卵したときの盛り上がりもあります。
加齢とともにサイズが大きくなり、殻が薄くなり、薄い水のような卵白の割合が増えて全体的に盛り上がらなくなります。
去年ご案内しましたように、現在うちの農場はベテランのニワトリが多いです。
これは、エサの高騰、ガソリン値上がりにともなう資材の値上がりなど養鶏の経営環境が厳しくなる中、どんどんヒヨコを入れ産まなくなったらどんどん処理して、という風潮に流されそうになってしまう事への反省があり、大事に飼おうと試みた結果です。
ですから、今うちのタマゴは大きなサイズが主流です。殻も中身もご存知のとおりです。
8月には産み出す群れがいますが、それまではベテラン主体のチーム編成(?)となっております。ベテランの味をお楽しみください。
ヒヨコ時代の病気の後遺症。
これも黄身の盛り上がりに影響します。卵巣・卵管・子宮など生殖機能に影響が出る病気はたくさんあります。
そんな病気に若い頃かかってしまうと、影響が残ることがあります。
うちでは薬品類の使用にはたいへん慎重です。
(これは長くなってしまいますので大筋の話になりますが)かつてブロイラーの成長促進剤として使われたアボパルシンという薬品が、広く使われているうちに、「耐性交差」によって人間に対して病原性を持つバンコマイシン耐性腸球菌を生み出してしまったという苦い経験が養鶏業界にはあります。(現在アボパルシンの使用は世界的に禁止されていますが、数年前の日本農業新聞では、輸入鶏肉の抜き取り検査で検出されることがあると報じられていました。)
薬を使わず風邪を治すのがいかに大変か、という話は、おりしも現代の医者が江戸時代にタイムスリップしてしまうという話題のテレビドラマ(最終回視聴率なんと26パーセント!)
からも想像していただけるかと思いますが、やはり大変な手間とコストがかかります。
安易に予防的な薬剤使用に走る気持ちはわかります。
キツネやイノシシに対するストレスというのもあります。
今朝もお猿が桑の実を食べに木に鈴なりになっています。これを犬といっしょに追い払います。
ここは、まだまだ野生動物がいっぱいいます。
こいつらが夜、早朝鶏小屋のまわりをうろうろします。
そんなことがあると殻の格好が悪く出荷出来ないはねだしたまごを沢山産みます。
殻の格好が悪いということは、当然中身も「格好が悪い」ということです。
見た目はよくても中身に影響が出ているはずです。
さてさて、長くなってしまっていますが。
これらが複雑にからんで 新鮮イコールこんもりぷっくりとはなりません。
「平飼いだから黄身がぷっくり」という売り文句にしている農場もありますが、正確に厳密に説明するとこうなります。
「場合によってはケージのたまごの方がいい場合もあります。なぜなら・・・」
とご説明申し上げるのが私ども現場の責任だと思っています。
もし、いつもたくさん若いニワトリがいて、薬剤を使い完全に消毒し予防し風邪をひかさずに、ケモノがいない場所で飼うことができたら。
もうちょっとそろったタマゴを出荷出来ると思います。
うちは夫婦で管理する1700羽の農場です。
それでいっぱいいっぱいです。
毎日「命」と向き合うとなると今のところそれがいっぱいいっぱいです。
もし。
目の前に同い年のお坊様がいて「仏様のことはわかりましたか?」
と聞いたら「いえいえまだまだ。」ときっとお答えになるでしょう。
「で、あなたは?」
とお坊様が聞き返してきたとしたら・・・
「いえいえ、わたくしもニワトリのことは、まだ何もわかりません。」
と答えるのだと思います。
まったく無信心者の私ですが、そんなことを考えることがあります。
1700羽のニワトリと2匹の犬と家族と。
毎日毎日、命と向き合っております。
長々となってしまいましたが、タマゴについてのご案内でございます。
不足な点がございましたら、お気軽にお申し付けください。
いつもありがとうございます。
佐藤ファーム・佐藤ジョージ