12月のこの年の瀬。
どんよりとした曇り空、ご近所さんがたまごを買いに来て下さった。
北風の中、足踏みをしながら少し立ち話。
「私、何でも好きなんだ!」
犬があたりの臭いを嗅ぐときみたいに鼻を上に向けていたずらっぽく笑う。
多趣味なこの方は何でもやる。いろんな話をたまごを買いがてらしてくれるのだけれど、いつもまわりにいる友人・家族のわいわいという人の「気配」がする。
いいなぁ、この人。こんな天気だけどこっちまで楽しくなる。
昔っから商店街が好きだ。
八百屋さんがあって魚屋さんがあって豆腐屋さんがあって、総菜屋さんがあって。
若い頃も東京に遊びに行く時間があったら、ディズニーランドより商店街めぐりしたいと思っていた。
そんなところに住んでいたなら、やっぱりそこで毎日お買い物をするんだろうな。
営業で東京をグルグルまわっていて東急 大岡山駅で降りた。
改札を出て右に歩いていくと大岡山北口商店街というのになっていく。
電気屋さんがあって喫茶店があって、小さなお店がごちゃごちゃ連なっている。
そんな中にある自然食品店を訪ねてみた。
小さなお店だけれど、小綺麗にしてあって、商店街のお店らしくちょろっと道路にまで野菜がはみ出てる。
お店のご主人と話をさせていただく。店が狭いから話は商店街の道路で。
向かいの喫茶店とその隣の店の隙間で立ち話。
店を眺めながら話すことになる。へー隣がお肉屋さん、揚げ物も売ってるんだ。揚げたてのコロッケを買っていくお客さん。
反対が靴屋さん、路地の角地になっていて天井まで靴が積み上げられてるお店。
ふふ。いいないいなこの感じ。
しばらく話し込んでいるとママチャリに乗ったお母さんがキキッと止まってネギだけ買ってカゴに入れた。
そっかー、そのお母さんはここんチのネギがおいしいことを知ってるんだな。
夕方になってきて人の流れが多くなってきた。これ以上はおじゃまなのでご挨拶して失礼する。
商店街の人の気配を背中にして駅の改札まで戻る。まっ赤な夕日。
農場がある白州は西にアルプスが立っているから、赤い夕日は久しぶり。
街並みが赤く染まっていく。あちこち明かりがつき始めた。
さて、今年もあと少し。
年末のご注文をやりくりしながら出荷している。
山ほどたまごがあればいいのだけれど、冬至前後なんて自然にしてれば最もたまごを産まない時期だ。
作り置きしておけるものではないから、産んだぶんだけ行きわたるようにやりくりの出荷になる。(お客様すみません。)
だから毎年、暮れはドタバタ。お店がやっている間は出来るだけご都合に合わせて出し切る。
最後までドタバタする。
お陰様で今年もいろいろなご縁をいただき、いろいろな方とお会いすることが出来た。
で、最後に会う人は多分大晦日、宅急便のドライバー・オダギリさんだ。
「オダギリさん、明日からお仕事ですか?」
「ええ。サトーさんも、ですよね。」
「そうですね。今年もお世話になりました。お気をつけて。」
きっとこんな会話をするはずだ。
人がいて、営みがあって。何て心地がいいんだろう。
そんな誰かの営みに、スッと入っていけるようなたまごでありたいと思っています。
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新年5日から東急目黒線大井町線大岡山駅 「輪屋」
http://www.rinya.jp/index.html
で佐藤ファームの「おいしい平飼いたまご」をお取り扱いいただくようになりました。
沿線の方はぜひお立ち寄りください。