現代の採卵養鶏は分業化されたシステムが出来上がっている。
エサはエサ屋さん、ヒナの供給はヒヨコ屋さん、その品種の改良は開発業者、ヒナを育てるのはヒナ屋さん、産まなくなったにわとりを処理場まで運ぶのは廃鶏業者。
採卵養鶏場は、たまごを産み出す少し前の大ビナをケージにいれるところから、卵を産ませてパッケージして発送するまで。
それぞれの守備範囲はけっこう狭いもんだ。
「せっかくやってるんだから、ヒヨコからやってみればいい。」
にわとりを飼いはじめて何年かたったころ、ヒヨコ屋のタグチさんがそう言った。
それまでは孵化して60日ほどたった中ビナと呼ばれる大きさのヒナを入れていた。
それぐらいの大きさが初心者にはちょうどいいとされていたから、そうしていた。
でもせっかくやってるんだから、いろいろやってみたほうが楽しそうだ。
そんな感じで、うちは大手の養鶏場にはない、ヒヨコから成鶏までいる農場になった。
やってみると、やっぱり大変だった。
いっぱい失敗をした。
この場合「失敗」っていうのはヒヨコを殺してしまった、という意味になる。
いくら本を読んでも、目の前でピヨピヨ何かを要求しながら衰弱して死んでいくヒヨコたちのことがわからなかった。
いつ頃からか。まあ、たまたま偶然そこに近所の子どもがいて「ひよこ見に来る?」と気まぐれで誘っただけだったのかもしれない。ヒヨコがいるときに子ども達を誘うようになった。
ひよこに触って「すべっこい!(山梨弁。やわらかくてすべすべしている、のような意味か?)」と言っていた子ども達もそろそろ社会人。
大勢来てくれたり、来なかったり、やらないときがあったりもした。
何年か前から、少し積極的に「ひよこにさわろう」と名前をつけて会を開くようになった。
男の子がヒヨコの部屋に入る。はじめはおっかなびっくり。
しばらくすると慣れてきてヒヨコを追いかけ始める。つかまえてダッコする。
一羽二羽いっぺんに何羽もつかまえておおはしゃぎ。
そのうち興奮してだんだん手に力が入ってきちゃったぞ。
「そうっとね。」
声をかけると我に返る。またやさしくつかまえる。
そうっとがまんしている姿が好きだ。力をいれてしまえば死んでしまう小さな生き物をつぶしてはいけないと自分に言い聞かせながらキャーっとなりたい気持ちをおさえている子どもたちが好きだ。
秋もう少し寒い頃、地元のお祭りで「ふれあい動物園」なるものがやって来たことがある。
ミニぶた、カメ、ウサギ、ハムスターなんかに触れるようになっているちょっとした動物園。
それとヒヨコ。たまごからかえって一週間目ぐらいかな?通常そのまま処分される採卵鶏のオスをヒヨコ屋さんでタダでもらってきたんでしょう。みんなわいわいさわってる。
でも、係りのオジサン。この寒さじゃ寒すぎる。ピヨピヨ言ってるのは寒さに対する要求だ。
ほら、もう隅っこで一羽死んでるよ。早く片付けてあげな。
そんななにか大それたことがしたいわけでもない。出来るわけでもない。
農場にヒヨコがいるんだから。さわりに来て、っていう話。
見るだけじゃなくてさわって「すべっこい」って思ってもらって、それが大きくなったにわとりがいて、そのにわとりがたまごを産んでいて。
産みたてのたまごをにわとりからもらってきて、自分たちでおこした焚き火で目玉焼きにして、持ってきたおにぎりとでお昼ごはんにして。
おなかがいっぱいになったらまたひよこにさわってもいい、森のなかを探検してもいい、川で遊んでもいい、絵を描いてもいい。
トラクターに乗りたい?いいよオンボロだけど。
段ボールであそんでいい?いいさいいさ。
農場ってこんなとこ、鶏小屋ってこんな感じ、にわとりってこうやってかわれてるんだ。
そう、で、オジサンは毎日ここでエサをあげてるのさ!
毎日たまごを箱に詰めて出荷してるのさ!
ほらちょうど集荷のトラックがやって来た!
積み込むの手伝っちゃおうか!
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5月24日 土曜日 「ひよこにさわろう」を開催します。
午前10時頃から農場を開放します。よろしかったら遊びにきてください。
国道20号「白州中学東」交差点を諏訪に向かって左折(甲府に向かって右折)、白州中学手前グランドの土手を「べるが」方向に左折、「べるが通り」に入らず、道なり直進してください。
ログハウスの前を通過し、尾白川にかかる橋を渡って、上り坂になります。
坂を上りきったところ鋭角にコンクリートの細い道を左折すると正面にエサの銀色のタンクが見えます。
そこが佐藤ファームです。
ただ普段はふつうの農場です。針金が出ていたり、クギが出ていたりもします。
子ども達の安全のために十全な対策はとれていません。どうか保護者の方といっしょにご参加ください。
ケガや事故に対する対応がとれないこともご承知ください。まだ小さな農場がご近所の方をお誘いしてワイワイやるというレベルを出ておりません。広く皆さまをお誘い出来る充分な体制にはなっておりません。
その点ご了承いただきまして、どうか保護者の方の責任でご参加ください。
何もないただの小さな農場です。でも何か見つけていただけたのなら幸いです。