「夜の鶏小屋を見回ったりすることあるんですか?」
( お客様 A 様)
そうですね。ときどきは行きますよ。
ヒヨコがいるときはヒヨコの寝床がちゃんと温かくなっているかどうかチェックしなければなりません。
大人のにわとりは咳をしていないか、くしゃみをしていないか、夜寝ているときが一番わかります。
あとは、まわりの物音。
聞き耳をたててケモノの音がしないかどうか。静かだから昼間よりわかります。
何かが来ていると、それにおびえて、カラのかっこうが悪くて出荷出来ない「はねだしたまご」が多くなっちゃいますから。
番犬と夜の鶏小屋の見回り。
イヌといっしょに作業する。大変ですけどちょっと楽しい作業であったりもします。
(佐藤ファーム・佐藤ジョージ)
--------------------------------------
鶏小屋のあるこのあたり、東京から150キロぐらい。
かつて、国道からまがった細い道をあがってくるしかなかったこのあたりは、夕方になると食料品の行商のトラックがやって来た。
トラックのスピーカーから客引きの「八代亜紀」が大きな音で流れていた。
それが村の西側にそびえる南アルプスにこだましていた。
街灯も少なく、夜は闇につつまれた。
この頃は、道も広くまっすぐになり、人も家もずいぶん増えた。
移住や別荘の人気ランキングに顔を出しているそうな。
おしゃれな車も走ってる。スーパーなんか出来ちゃったりして、便利便利。
でもね。夜になるとね・・・・。
お腹を空かしたキツネが金アミを引っ張っていく。
若いにわとりの部屋ばかりねらっていく。若いのはやっぱりおいしいのかな?
何でわかる?においがちがう?
タヌキはどっちかっていうとゴミあさり。食べるものないかって、ウロウロしている。
同じように夜になると鶏小屋にウロウロしにくる近所の放し飼いのネコとは折り合いついてるのかな?
テンはヒヨコ専門。最初は目の粗い金アミをすり抜けられてやられちゃったけど、もうそんなヘマはしないよ。
イノシシは裏の空き地で穴掘り。秋のミミズはおいしいらしい。
でも鶏小屋の通路まで入りこんで夜の作業をしている俺を「ブヒ!」と威嚇するのはやめてよね。
ネズミがいる。こぼれたエサを拾い食い。
いてほしくないから捕まえるけど、完全にはいなくならない。
モグラは鶏小屋のまわりのミミズがお目当て。
見かけることは少ないけれど、ときどきぽっこり新しい巣穴があいている。
フクロウがエサ小屋ののき下にとまっている。
そのネズミとモグラをねらってる。
奥の方でバキバキいってるのはお猿が空いてる別荘を今夜のお宿にしたから。
お猿のウンチは臭いのだ。
月夜の晩は150メートルほど行った尾白川の河原でクマがうかれて踊ってる。
(これはウソ。でも朝イヌと散歩に行ったらただ歩いただけじゃない、遊んだような足跡がついてたな。)
さてさて、ひとまわりしたところで、あとは番犬にまかせて軽トラでうちに帰る。
しばらく走るとまだ古いままの狭い県道をふさぐようにノロノロ走るダンプがいる。
右へ左へフラフラと。
・・・まったく。この酔っぱらい運転は、スズキのおっちゃん。
ダンプで飲んで帰ってくるのはおっちゃんぐらいなもんだよなぁ。
道路バタの用水路に脱輪したって手伝わないかんね!
今は。
この村の同じ場所で同じ風景を見ながら、森のケモノ、村人、越してきた人、がそれぞれ層をなすように暮らしているような気がします。
やがて、森のケモノたちも姿を消していくのでしょう。今は少しでも彼らといいつきあいをしたいと思います。
(と思っていたら、河原のクマは鉄砲で撃たれてしまった。地元の猟友会のハンター・普段は大工さんの作業場に吊るさってました。そのあと軽トラの荷台でお肉になってたなぁ。)
--------------------------------------
セブン—イレブン・ジャパンとヤフーが新しく立ち上げたWebマガジン「4B(フォービー)」に
農場のことが紹介されています。ぜひご覧下さい。
http://4b.yahoo.co.jp/
書いたのはこの人 渡辺穣
http://www.w-magic.jp/joe/