「みなさ〜ん、いいですかー。このベルトコンベアでたまごが運ばれ、ここで選別・箱詰めされまーす。」
1983年カリフォルニアのとある大養鶏場。
その年、交換留学制度を利用してアメリカの農場で実習していた。この日は全米にちらばっていた同期の学生が集まり研修で農場見学に来ていた。東洋からの団体の見学客にわかりやすい英語でゆっくり説明してくれる。
カリフォルニアの乾いた大地に、体育館のような建物がずらずらと並んでいる。その向こうの方からカタカタカタカタとたまごが機械で流れて来る。まるでハリウッド映画の未来社会のようだ。
その10年後。日本で見た大きな養鶏場はもっとすごかった。
これまたカタカタと遠くから運ばれて来たたまごは何十もある機械の手にひとつひとつつかまれて瞬時に重さを量られ、そのまま重さ別に枝分かれしてビニールパックにつめられる。蓋のシールまで全自動だった。
機械好きな日本人のこと、今はもっとすごいことになっているんだろうなぁ。
2003年4月7日 鉄腕アトムが作られた。
国際救助隊サンダーバード(1964年英国BBC制作の人形劇)の指揮官ジェフ・トレーシーは1970年生まれという設定になっている。
そうか。僕たちはもう未来にいるんだね。
たしかに未来にいるのだけれど・・。
たまごが機械で運ばれてきて、ロボットアームで掴まれてパック詰めされていくのは見ていてとても楽しい。だけどそのたまごを産むにわとりはこれでいいのかな?
にわとりは、余計なカロリーを消費しないため小さな金属製のカゴに入れられている。
たまごを産むのに必要なだけの栄養を(不足するものは化学的に合成したもので補い)消化吸収しやすいように加工されたエサと、水と、電気の照明と、すべてギリギリ必要な分だけ与えられている。
そのストレスを軽減させるための鶏用コンタクトレンズや、必要のない羽毛を少なくする品種改良とか、研究されている。
そもそもその養鶏場が、臭いからって市街地がら遠くはなれた山の中にある。とかとかとか・・。
これは果たして未来的なのかな?
「たまご、なくなっちゃったからちょっと買ってくる。」そんな暮らしの中にある養鶏場。
「今、ヒヨコいるんだって。寄ってから帰るね。」学校の帰り、ランドセルしょったまま道草する養鶏場。
「すみません。昨夜、イノシシがうろうろしててたまごの出荷が遅れます。お客様にそうお伝え下さい。」言い訳する養鶏場。
そんな養鶏場の方が、今の「未来」じゃないのかな?と思う。
まだやること整備しなきゃいけないことはいっぱいあるのですが、こんな養鶏場のほうが未来的だと信じています。
いつも新しい未来を探しています。わくわくする未来を。
新しい未来を探すために、地面でにわとりを飼い、「ひよこにさわろう」の日をやり、番犬とキツネを追いかけ、山梨県立科学館に通います。
きっと未来はやって来る。