サラバにとっての初めての企画だった今回のライブ。
いろいろありました。当日、現場ではリハーサルから多くの問題が発生。そのほとんどは企画したこちらの段取りの悪さが原因。多くのことを学ぶ。しかし、それ以前に周りの人に迷惑をかけ、ドギマギさせてしまったことに反省。
それでもライブが始まると楽しくなる。ステージと客席の間には親密な空気が流れ始める。みんなでリレーの意識を持ってひとつの夜を作っていくという意味では成功したといえる。
サラバ楽団の演奏で始まったこのライブ。まずはaponiにバトンを渡すべく2曲(ソーセージ、秋深し)を演奏。少々硬い演奏ではあったけれど曲調にも助けられ楽しいスタート。
そしてaponi登場。椿るうこさんのソロしか知らない僕らにaponiの音は新鮮に聴こえる。唄に力がある。るうこさんのピン(タイの弦楽器)やギターに、蛇のように絡みつく唄。ベースやシンセサイザーを操るヤッサンの音がやさしくそんな唄に寄り添い作品の器をグーっと広げていく。
段々ヤッサンが蛇使いに思えてくる。蛇使いに魂を注入され、愛情を注がれた唄はどんどん自由になっていく。そんな自由さの感覚はマルク・シャガールの「ダフニスとクロエー」という連作を観たときの感覚を思い出させた。
多くの栄養を貰ったaponiの演奏は客席を巻き込み、独自の世界へ連れて行ってくれた。そして、次の出演を待つソン・ジ・クアルトへ確実にバトンを渡してくれた。
次にバトンを受けたソン・ジ・クアルトは、自分達の仕事をよく分かっている。それが証拠に、1曲目からaponiが作った空気を、あっさり自分達の空気に変えてしまった。それはソン・ジ・クアルトが得意とするボサノヴァという音楽の力なのか、ボーカルのunaiさんとトランペットの瀬戸さんのコンビネーションなのか。
そんな掴みどころのないソン・ジ・クアルトはマイペースにライブを進行していく。MCを織り交ぜながらじっくり唄を聴かせてくれる。ライブの運び方がもうすでにボサノヴァのリズムになっている。
ソン・ジ・クアルトの演奏を聴いていると、unaiさんは唄う人になりたいんじゃなくて、唄そのものになりたいんだということに気付く。ならば少しでもその唄に近付こうと瀬戸さんのトランペットが唄い出す。そこに小さな楽団が生まれる。
そして、小さな楽団が演奏する唄は、ジャンルを越えて子守唄のように客席を静かに包んでいった。あの場にいた多くの人たちは懐かしさに満たされた。まさにソン・ジ・クアルト(部屋の音)になる。
大雑把ではありますが、サラバが感じた両者の感想です。この時点で思うのは、この企画はライブ全体を最初から最後まで観て欲しいということ。実際にこの日観に来てくれたお客さんの半分くらいは途中参加という形になった。そこが少し残念。
それでも仕事の関係やいろんな事情を抱えながらも、来て下さった皆さんに深く御礼申し上げます。
そしてaponiとソン・ジ・クアルトの両演者と会場となったわからん屋にも深く感謝致します。
という訳で、以下はこの日のサラバの曲目です。長々と失礼致しました。
1、君が僕を好きになる
2、悲惨な戦い (詩 高階杞一)
3、手紙
4、夜の穴 (曲 アントニオ・カルロス・ジョビン)
5、赤い花 (曲 エウセビオ・デルフィン)
6、海のかけら
7、春の便り
8、時雨
9、犬と僕

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