国立文楽劇場にて、夏休み特別公演の第一部を観る。
第一部は「親子劇場」と題され、親子連れが楽しめるものに工夫されている。
ふだん楽屋裏で接している演者さん達を客席から観るのはとても新鮮。これはさすがに他のお客さん達には味わえない、僕らの特権である。
演目は「日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)」より渡し場の段。そして「舌切雀」。
「日高川」は有名な安珍・清姫のお話。全部は長すぎるので、名場面ひとつを抜粋というかたち。
改めて、お芝居というものは、観客といろいろな約束事を共有することによって成立しているのだと感じる。文楽には文楽の約束事があり、また文楽ならではの「見せ方」がある。
ふだん楽屋まわりのモニターで何度も目にしているのだが、生の舞台はやはり全く違った空気感で迫ってくる。実に新鮮。
休憩をはさんで「舌切雀」。そうか、こんな話だったかと、懐かしさ半分、驚き半分。
昔話や民話の世界には、動物と人間の交流がテーマになるものが、少なくない。
お話にもよるだろうが、概して、動物は「人間味」があり、「大人」であり、要するに「人間」ができている。
一方、人間の方は、恩知らずで業が深く、要するに非常に「人間くさい」。
この両者によって、ニンゲンなるものの幅と奥行きを描こうとするこの仕組みは、なかなか良くできたものだと感心してしまう。
クライマックスには雀達が(ワイヤーで吊られて)人形遣いの方もろとも宙を舞うというシーンもあり、ちびっこ達にも見所がたくさん用意されていた。
今回の公演は三部構成。全てを一度に観るのはそれこそ一日仕事になってしまうが、僕は日を変えて二部も三部も観れることになった。こちらはがっちりとした大人向け芝居。楽しみだ。
写真は「すずめのおやど」の住民たち。
人間と同じ大きさ。着物まで着ている。


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