今日で三日間続いた「えべっさん」が終わる。
恵比寿様(えびすさま)が関西弁では「えべっさん」となる。恵比寿様はもとは兵庫の西宮神社の祭神で、海上・漁業の神、そして商売繁盛の神様だそうな。
東京出身の僕は、こういう催しがあるということ自体、知らなかった。
年末から忘年会だクリスマスだとさんざん飲んで騒いで、ゆく年くる年、明ければ明けたで新年会、胃袋も肝臓も酷使したうえに、一週間ちょっとでエベッサン。
これまたこれで皆さん縁日へと繰り出し、なんだかんだと賑わってしまう。
よくだなあと思いはしたが、アキンドの街大阪ではやはり欠かせないものなのだろう。
僕がこの行事を知ったのは、7年前、大阪で初めての正月を迎えた時であった。
友人の結婚式に呼ばれ、相手は僕のフトコロ具合を熟知しており、「唄ってくれたら交通費は出します」などと有り難い心遣い。本当に出してもらったのだが、しかし一銭も包まないというのも気が引けた。
そこで、ご祝儀稼ぎのためにテキ屋をやったのだ。
これもまた貴重な体験と張りきった。すると、アイツは声もでかいし食材の扱いも慣れておる。ちょいとスジがよろしいということになったのだろう。三日目には
お茶屋の大きなテントから連れ出され、とある屋台に辿りついた。
屋台には「イカ焼き」と書いてある。
要するに「焼きイカ」、つまりイカの姿焼きのことだろうかと思った僕に罪はない。
東京には空だけでなく、イカ焼きもないのである。
たこ焼きやお好み焼きに比べるとはるかにマイナーだが根強い人気を誇るこのジャンクフード。水解き小麦粉でクレープ状のものを作り、卵とイカの細切れをのっけてペッタンコに焼く。ソースをべったり塗ってできあがり。これが意外なくらいに旨い。
ぺったんこにするために二枚の鉄板で挟み撃ち、この状態で180度回転させ、両面から焼くことができる「イカ焼き機」まで存在するとは驚きであった。
テキ屋の上司は「こんな感じや」と2〜3枚実演してみせると「ほな」と人ごみに消えた。
お客の数だけ試行錯誤を試みたが、なにせ実物をロクに知らないからまったくオリジナルな個人的な成長しかしようがない。
しかしお祭り気分とは恐ろしいもので、これがよく売れたのだ。
右も左も分からぬ街で、たった一人で屋台に立ち、お客が来れば「ハイイラッシャイ!」、その日まで存在すら知らなかったものを焼いて「ショーバイハンジョー」。
「俺って、インチキな存在だなあ・・・」
タバコの煙が寒空に消えて行くのだった。
そういえば、この「イカ焼き屋」の10日ほど前、住吉大社のやはりテキ屋のテントで、サザエを焼きながら、僕は21世紀を迎えたのであった。
いろいろあるなあ。
さて、我が相棒、三上ゆうへいは今年に入ってすでに二曲を書き上げた。なかなか良い出だしである。
我がサラバ楽団もショーバイハンジョーと行きたいところだ。
えべっさん、よろしくお願いしまーす。

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