フェリーで、暇を持て余したオッチャンに話しかけられる。
「今夜は満月です。満月は年に12回しかありません。曇りの日もあるので、ちゃんと見れるのは年に2回くらいしかないでしょう。
さあ、行きなさい!」
僕はこういう話には一応乗ってみる方である。
本当だった。
雲を立体的に浮かび上がらせ、その上にコウコウと満月。
雲の下には、こちらに向かって放射状に、月光の絨毯が敷かれている。
ドラマチックな、実に見事な満月であった。
オッチャン、ありがとう!
朝から劇場入り。
思っていたよりも早く作業が終わり、19時過ぎには退館。
いざ博多ラーメン!!
以前にも行ったことがある、愛しの「八ちゃん」へ。
店が見える。
チョウチンが、消えている。
………こんなことってあっていいのだろうか。
しかし看板をよく見ると、夜9時開店とある。
なるほど今までは飲んだ帰りに寄っていたので、開店時間など気にしたこともなかった。
そもそもこんなに早く劇場の外にいること自体とても珍しいのだ。
しかし、夜9時に開店し、2時半に閉店。営業時間5時間半。これはもう自信の現れ以外の何物でもない。
先輩二人と僕、ラーメン馬鹿三人組は、八ちゃんに敬意を表し、浮気はしないと腹をくくった。
コンビニで缶ビールを買い、近所の公園で待つこと1時間。
僕達は銀行強盗に向かう者達のように歩き出した。
赤々とチョウチンが灯る。
店に着くとすでに満員。
更に待つこと5分。
いよいよ決戦の時を迎える。
「ラーメン、バリカタ(麺はすんごく硬めでお願い)」
言葉数は少ない方が真剣勝負にふさわしい。
やはりあの味だ。
「替え玉、バリカタ」
「替え玉、バリカタ」
量は少ない方なのだが、またたく間に3玉を平らげていた。
完全に僕達の負けであった。
来て良かった。
何とも言えない達成感。
腹をさすりながら、すがすがしい面持ちで店をあとにする。
八ちゃん、ありがとう!
帰り道、明日のターゲット「だるま」の場所を確認して宿に着く。
んっとに、バカだなあ。


0