長崎空港からは長崎バスの空港リムジンに乗車。長崎空港の利用は島原鉄道に乗りに来た2007年3月以来だ。その時はタクシー利用だったので、リムジンバスは今回が初めてである。
長崎バスは県営バスと共同運行の出島道路経由便に加えて、11月1日から新路線の道ノ尾経由便を新設した。いささか地理不案内の地ながら、長崎電軌に効率的に乗るには軌道の北の端である赤迫(あかさこ)から乗車するといいと判断した。その赤迫を通るのが道ノ尾便なのだ。さいわい、赤迫でも「電車1日乗車券」が売られていることを確認している。
空港内のバス乗り場に行くと、航空機が遅れたこともあり長崎、諫早、島原、佐世保行きのバスがそれぞれ発車時間を過ぎて待っていた。長崎行のバスバースに止まっていた県営バスの運転手に道ノ尾便のことを聞くと、「このバスが出た後に入ってきます」とのこと。結構な乗りで県営バスが出て行った後、長崎バスが入ってきた。ISUZUガーラの新車だ。これはついている。しかし、せっかくの新車なのに乗り込んだのは3人だけ。長崎市内までの人は、いま出て行った県営バスに乗っていったに違いない。
予定より5分程遅れて、バスは発車した。空港島から出る橋を渡ると、大村ICから西九州自動車道に入った。高速道にも関わらず、反対車線の高速路線バスとすれ違う度に、会社に関係なく運転手は挨拶していた。珍しい! 反面、長崎行きの九州急行バスに追いつくと、いとも簡単に追い抜いていた。路線バス同士の追い抜きは以前は見られなかった光景だと思う。
長崎多良見ICで長崎バイパスへ、その先、川平有料道路へ入った。有料道路は井出園交差点が終点で、そこからは一般国道206号線を走る。沿線は意外と開けており、最初の停留所の打坂で一人下車客があった。長崎本線の旧線が見えてくると赤迫である。電車の停留所が見える。ここでリムジンバスを下車した。
・長崎空港11:15(長崎バス)→赤迫 *長崎200 か・798

空港リムジンは、ISUZUの最新鋭バスだった。

運賃表示機は液晶画面を2枚並べたものだった。

空港島を出る。
赤迫バス停は長崎電軌の電停手前に置かれていた。バスを降りると、電車の操車小屋を探す。軌道の西側に小さなプレハブのような建物があり、係員が常駐していて、やってくる電車の折返しのポイント操作をやっていた。通用口から入って「1日乗車券を下さい」と申し出ると、「はいちょっとお待ちください。いま電車が到着しましたので切り替えをやっています」とのこと。その間、トイレを拝借した。助かった。
「1日乗車券」(500円)は車内では売られておらず、主要停留所周辺の売店、市内のホテル等で売られている。車内売りをやってもいいのではないかと思うが・・。1日乗車券の地図を眺めていると、「よし、もう一度全線完乗してやるぞ」と思えてきた。最後に長崎電軌に乗ったのは30余年も前なのだ。
時刻表ではなく、来た電車に乗り継いでゆくことで全線走破に取りかかった。最初の電車は201号車だ。発車して直ぐ、3000系連接車とすれ違った。そこで1日乗車券の利点を生かして、浦上車庫前で下車。連接車を待つことにした。浦上車庫は昔と変わらないたたずまいだった。1972年の春に車庫の外から写真を撮っていると、「いま花電車の台枠を作っているから見て行かないか」と誘われた思い出がある。
1本待ったら蛍茶屋行き3連接車がやってきた。アルナ工機製のリトルダンサーで、2006年度のローレル賞受賞車だ。A−C−B車で1両を成している。最後部台車上に一段と高くなったクロスシートがあったので、ここへ座る。長崎市内を観光しながらの路面電車旅となった。長崎駅前で1〜3系統が分かれるが、左側の3系統に入る。トンネルを抜けると公会堂前。ここは3方分岐の交差点だが、電車は左側に入って行く。右側のポイントを通過する系統はなく臨時運行しか通らない。諏訪神社前を通過。かつて定期観光バスで訪問したことがあるが、こんなところにあったのだ。少しずつ上り勾配となり、どん詰りが蛍茶屋終点である。停留所手前にWクロッシングがあり、電停は島式ホームとなっている。電停の先にも線路は伸びており、人工地盤の上にはロイヤルホストが、下が蛍茶屋車庫となっている。
蛍茶屋からは4系統・正覚寺下行きに乗車する。先ほどの公会堂前を直進し、長崎市の繁華街に入っていった。長崎一の繁華街である西浜町電停は、3方分岐のため交差点の手前と先に2つ設置されている。左方向に分岐するのが正覚寺下へ行く4系統である。電車は交差点を左に曲がる。電車信号機は交通信号とタイムラグを設けて分岐を現示しており、交通信号が青に変わる前に左方向の矢印が出た。終点の正覚寺下は川の上にホームがある電停だった。Y字型の終端で電車は直ぐに折り返してゆく。
正覚寺下からは1系統・赤迫行きに乗車。西浜町でいったん降りて5系統の石橋行きに乗り換える。電停に着くと、前に石橋行きが接続をとって止まっていた。これに乗ってもいいのだが、西浜町は3方分岐の交差点なので、5系統が最初に止まる西浜町電停から乗ることにした。わずか数十mとはいえ、分岐部の線に乗り残しは作りたくない。
降りたついでに、長崎一の繁華街であるアーケード街を散策した。再び西浜町電停に来ると、ちょうど石橋行きが止まっていた。車内は1日乗車券を持った修学旅行の中高生でいっぱいだ。満員は好きではないが、修学旅行と1日乗車券の取りあわせは実にすばらしい。
石橋行きは大浦海岸通りから単線になる。1閉塞のようで、この先は1コ列車しか入れない。やがて反対方向から電車がきて信号が進行に変わる。終点の石橋は川に沿って電停が設けられていた。ここで電車の乗り歩きは小休止して、グラバー園の見学に出かけた。電停のすぐ上の山の上にグラバー園があるのだ。
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赤迫バス停で下車。ここで電車に乗り換える。

赤迫から3系統・蛍茶屋行きに乗車した。

乗車した201号の車内。

岩屋橋から専用軌道に入る。

車庫前で降りると反対側に2000系軽快電車が止まっていた。

浦上車庫の全景。

旧字体がいい。

3連接車がやってきた。

クロスシートに座って3系統終点の蛍茶屋まで長崎の街を眺める。

終点の蛍茶屋は路面電車ではめずらしいに島式ホーム。

蛍茶屋電停の先は車庫線。人工地盤で上には店舗が入っていた。

蛍茶屋からは4系統・正覚寺下行きに乗車する。

正覚寺下電停は橋の上にある。

Y字型終点のなので乗降が済むと直ぐに折り返してゆく。

正覚寺下から西浜町1・5系統電停まで乗車。前に石橋行きが停車中だがここからは乗らない。

西浜町交差点を5000系連接車が通過していった。

西浜町4・5系統乗り場から5系統・石橋行きに乗車。併用軌道ながら一方通行で車は通らない軌道敷を緊急自動車が通過していった。

大浦海岸通りから終点まで2駅間は単線となる。電車信号は×を表示している。

終点の石橋。左側は小川になっている。
石橋電停から路地裏を歩く。グラバー園へは正面から入る他に、石橋電停からグラバースカイロードという斜行エレベーターでも行ける。斜行エレベーターは、段差のある地形によくみられる。観光用というより地域住民の足として利用されている。出入り口には「地域住民優先」との表示が出ていた。
斜行エレベーターを降りると、今度は垂直エレベーターに乗り換える。だんだんと見晴らしが良くなってきた。垂直エレベーターを降りると、丘の上の地域住民の狭い道があった。その横に「グラバー園第2ゲート」があった。
入場券を買って入ると、グラバー園の一番奥にある旧三菱第2ドックハウスの前に出た。高度があるので長崎港と稲佐山を俯瞰する素晴らしい景色である。中を見学していると、数名のボランテイアガイドの方がいらした。そこで少しばかり案内を頼むことにした。30余年ぶりの訪問であることを告げると喜んで案内して下さった。
旧リンガー邸、旧オルト邸、そして旧グラバー邸、いずれも重要文化財であるが、中を見学することが出来た。グラバーさんはスコットランド人だったので、建物の煉瓦の組み方は「イギリス積み」であった。
予定外のグラバー園探策だったが、一番思い出に残る場所となった。それと斜行エレベーターを利用して第2ゲートから入ったが、正面ゲートからだとずっと上り坂+階段、それもかなりの勾配となっており、このルートの方が楽であることも解った。
正面玄関から土産物屋が並ぶ道を下るが、大勢の修学旅行生とすれ違う。大浦天主堂下の電停から再び乗り歩き開始となる。
やってきた電車は満員だった。結構なことだ。一番前に立つと、次の大浦海岸通りで複線に戻るポイントを眺めることが出来た。築町で下車。ここで1系統の長崎駅前方面へ乗り換えだ。電停の近くに出島があるので見に行った。正面側は運河を隔ていて、いかにも出島の雰囲気がある。反対側は本来は海に面していたハズだが、埋め立てられており、1m位の水路というか溝だけが残っている。復元するなら埋め立たところをとりのぞかなければならず、難航しているようだ。
築町で降りたついでに新地の中華街へ行ってみた。3時を過ぎていたので「支度中」の店が多かったが、せっかく長崎に来たのだからチャンポンか皿うどんを食べたい。「高級中華料理料亭・桃華園」という店が開いていたので、さっそく皿うどんを注文した。結果は「当たり」だった。麺が極細でパリパリしており、なかなかの食感だ。実は私は各地にある中華街の中で長崎が一番貧弱だと思っていた。少し考えを改めなくてはならない。
築町電停に戻り、1系統赤迫行きに乗車する。きょう乗る最後の電車は366号車だ。昭和36年製なので360型というのだそうだ。またもや大混雑しており、運転台背後にやっと立つスペースを見つけた。運転台には日立のコントローラーが鎮座している。
長崎駅前で降りる。7回乗り降りした。1回120円の運賃だから「1日乗車券」は元を取ったことになる。久々に乗った長崎電軌は元気があって頼もしかった。
・赤迫12:13→浦上車庫前 *201号車
・浦上車庫前12:28→蛍茶屋 *3003ACB(3連接車)
・蛍茶屋12:58→正覚寺下 *216号車
・正覚寺下13:17→西浜町 *504号車
・西浜町13:35→石橋 *504号車
*石橋(斜行エレベータ)・・グラバー園
・大浦天主堂下15:05→築町 *212号車
*築町・・中華街・・出島・・築町
・築町15:45→長崎駅前 *366号車

石橋電停近くで見かけた衣料品&なんでも屋さん。

石橋電停から歩いてすぐの所にグラバースカイロードという斜行エレベーターが出来ていた。

斜行エレベーターは途中で、垂直エレベーターに乗り換える。

グラバー園の頂上にある旧三菱第2ドックハウス。

グラバー園から長崎港と対岸の稲佐山を眺める。

グラバー園を出て、最寄り駅の大浦天主堂下から5系統に乗車。修学旅行生で満員だ。

1つ目の大浦海岸通りから複線に戻る。

築町で下車。現金客だと乗換券が発行される。

築町分岐に置かれた電車信号。

分岐を1系統1500型が通過してゆく。

築町から歩いて新地中華街へ行く。皿うどんを食べた。

これが出島。

反対側(海側)は埋め立てられているため、溝しか残っていない。ほぼ陸続きである。

築町から1系統で長崎駅前まで。乗った366号車の主幹制御器。

長崎駅前で乗り歩きは終了。

1〜3系統の分岐ポイントは芸術的文様だ。

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