いや〜何かスゴい映画を観たような気がする
「ラストサムライ」で政府軍との決戦の前日、結集しつつある圧倒的な敵の兵力を見下ろしながら、トム・クルーズが渡辺謙に「昔、テルモピュライの戦いでギリシャ軍は300人の軍勢で100万人のペルシャ軍と戦った」と語りかけるシーンがあるんだが、この映画の舞台はまさにその戦い。ワーナーマイカルのHPを見たら「紀元前480年」にあった出来事なんですと。私ぁ世界史には詳しくないんだが、紀元前5世紀頃と言えば日本じゃまだ縄文時代じゃないの?ま、それはともかく日本でも少数部隊が大軍に挑む戦いはちょっとはあるけど(桶狭間の戦いとかね)それにしてもスケールがハンパじゃないよなぁ。だって、3333倍の敵だぜ?このような場合、戦術的には大軍の自由が効かない狭隘な場所を予定戦場にするという発想は洋の東西問わず必然ともいえる選択なんでしょうな。
さてこの映画、一言で言うなら「美しい、ただただ美しい映画」とでも言おうか。
もうね、どのシーンもまるで絵画を見ているようだったよ。フィルムに焼き付けられた全てのコマをどう抜き出しても絵になるね。スローモーションと早送りを組み合わせる手口って最近は見慣れているはずなんだけど、なかなかどうして、まだまだ発展する余地があるんだなぁ...監督の腕次第?。戦いのシーンは戦士一人一人が中心で、その卓抜したテクニックをじっくり映しつつ、その隣で戦っている戦士もきちんと捉えているから、本当にその場にいるような気分になれるよ。しかも、殺陣がまた見事で素晴らしい。当然首や腕や脚が飛びまくるんだけど、殺陣があまりに見事なもんだから全然グロさを感じないんだよね。特に二人一組でお互いをカバーしつつ縦横無尽に切りまくるシーンなんか血が逆流するくらいシビれた。久々に自分が持っている「XY」染色体を意識したよ。「雄(オス)」って、誰でもこういうの見ると血がたぎると思うんだが・・・ちょっとアブないかな私(笑)
スパルタ人とは?とか、スパルタという国はこうなんだ!とか劇中で語られてるけど「ほ〜そうなんだ。左様ですか」としか言いようがない。当時は当時の価値観で教育を受け、それが当たり前だし疑いようの無いものだったろうから。そんな世界で生まれ育った人間に現代の価値観を当てはめて「こいつらそろいも揃って殺戮マシン。死ぬのが怖くないのかよ」とか言うのはヤボだよな。でも、ちゃんと夫婦・親子の絆はあったみたい。その両立は難しかろう...と思う事自体ナンセンスなんだろうね。まぁこの映画が、そのへんは真実を描いているというのが前提だけど。ほら、よくあるでしょ?変に美化するパターンって。何せ世界史には疎いもんで、そこんとこは判断できん・・・けど、何せ2500年前の話だ、どうでも良いか(笑)
誰にでもお勧めできるか、と聞かれたら「?」だろうね。でも宙を舞う手足、飛び散る血しぶきにすら映像美を感じてしまう出来映えの「あくまでも娯楽超大作」なので、それだけでも私は充分楽しめました。
☆☆☆☆☆
見終わってね、どうして古来日本の合戦で「盾」が普及しなかったかが解ったような気がするな。超合金がある時代じゃないから、スパルタの戦士のように、筋肉ムキムキで相当な基礎体力がなければ、あのクソ重そうな鉄製の「盾」を左手に持ちつつ右手の「片手剣」と共に両方自由自在に扱えまい。そもそも片手だけで剣を振るうのは、もの凄い腕力が必要だろうから。