アストル・ピアソラやキング・クリムゾンのレコードにコンプをかけてベキベキにして、爆音で鳴らして独り部屋にて踊る。そんな僕の夜。大切な想いを失って高まった異様なテンションのやり場を無くして、人生の伴侶、それはいつも音楽。腹から声を出してうたい踊る。カフェーや部屋に戻れば必ずそこには音楽。心に秘めていた大事な言葉を丁寧に絞り出し、大切なあなたに丁寧に伝えましょう。伝わればとてもハッピー、笑顔でハッピー。抑制していたすべての感情を解放し、パブのなかに満ちる愛。ここにあるストーリー、ここにないドラマ。そのようなサスペンス。僕は毎日すこし泣く。
この前僕のむかしの友人が言っていた、無敵感、について。あたらしい靴を履いて出掛けたり、指輪を嵌める指をいつもと変えてみたり、電気バリカンで髪を刈って晴れ晴れしたり、眼鏡やコンタクト・レンズを使うのを一日やめてみたり、ピアスの数を増やしたり、空や木々が不思議なくらい優しく見えたり、そしてバック・グラウンドに流れる音楽が、いつでも君を鼓舞して、そんな音楽にあわせてステップ踏んで歩いて、『しあわせな奴は/無敵だ/無敵な奴は/やさしい』高野文子の「マヨネーズ」にはそんな現実世界が在ってそこにはやっぱり音楽。
方法論のサーフィン。もう僕には捨てるものなんか無い、幸福な笑顔でいっぱいだ、部屋のなかは愛でいっぱいだ。思念のなかで君の肩を抱き、次なんか無いよ、これで終わりだよ、そんなこと考えられないよ、余裕も無く過去と未来に取り憑く運命論から逃れようと必死になって、もう言葉を選んだりは出来なかった。焦燥では無くて、言わなければならないことをただ言うだけ。オートマチックな僕、そんな僕の音楽は止み、代わりに鳴っているのは携帯電話の着信音で、慌てて画面を開くとλからイーメール。
『南京大虐殺めぐり抗議 集英社に地方議員グループ/集英社発行の「週刊ヤングジャンプ」で連載されている本宮ひろ志氏作の漫画「国が燃える」で描かれた南京大虐殺について、地方議員グループが「あたかも真実として漫画化している。歴史を歪曲している」として集英社や本宮氏らに抗議したことが8日、分かった。集英社は13日、28日発売号から当分、この漫画を休載することを明らかにした。
「国が燃える」は昭和初期の若手官僚の半生を描いたフィクション。9月16日発売の42号と22日発売の43号で、旧日本軍が南京で市民らを殺害する様子を描写。43号に参考文献を列挙した。』
喜びや悲しみ、怒りの隙間にもいつも音楽。コンプでベキベキになった素敵な音像が、また僕を包んで、そのなかでくるくる踊って、部屋のなかに愛が満ちる。ハッピー。