『ここが芝公園・・・浜離宮・・・東京ガス』と、つげの「やなぎ屋主人」の一節を想い起こしながら、港区芝はメルパルクホールへ。平沢進インタラクティブ・ライブ"LIMBO-54"を観る。
生平沢なんて何年ぶりだろう、と思って調べてみたら、95年の日比谷野音P-MODELが最後だった。8年ぶり!?
スクリーンにストーリーの概要が流れて、拍手と歓声の中、御大登場。背もたれ付きのハイテク自転車に乗って現れ、ステージを上手から下手に横切って居なくなってしまう。おいおい、行っちゃったよ、とのっけから笑いそうになったが、周りに誰も笑ってる人が居ないので自粛。これは演出の一部らしい。と、下手から自転車を降りて登場。オープニングは”狙撃手”。いきなりギター・ソロ。良い、すごく良い。インタラクティブだろうが何だろうが、平沢が膝でギターを蹴り飛ばして暴れるだけで無条件にカッコ良い。座席の位置が良かったのかも知れないが、音質も昔より格段にレベル・アップしているように思える。しかも音がでかい。爆音であの変態テクノを聴けるというだけで有難い気分になれる。
ステージ上にある機材は、新発明の手回し人力発電シンセと、JP-8000、あとはギターだけと至って簡素。P-MODEL時代はサンプラーやモジュールを山のように積んでた事を思うと隔世の感がある。恐らくオケはわざわざシーケンサーを回すのでは無くて、レコーダーにあらかじめ仕込んであるものを流してるんだろう。デジタル技術の進歩恐るべし。というより、その方がシステムとして安定してるんだろうな。
肝心のインタラクティブ部分だが、選択すべき事柄が右へ行くか、左へ行くか?という事しか無いので、はっきり言って良くわからなかった。右と左でどう違うのかが解らないのである。だが恐らく連日通っているのであろう熱心な観客が、確信をもってどちらかの方向に叫んでいたので、選択は彼等に任せてしまった。もっと、右に行くとギターを死ぬ気で弾きます、左に行くとプログレ時代の曲をやります、とかなら積極的に参加出来るのになぁ、と思う。
ストーリーは、ニューヨークのテロ〜アフガン空爆〜イラク戦争と繰り返される正義の名を騙った殺戮と、マス・メディアによる情報操作への抗議ともとれた最新アルバムの内容を踏まえてはいるが、アルバムの歌詞ほど性急で感情的な様子は無い。破壊と殺戮を繰り返して正気を失った人類が、ステージ上の平沢と観客の努力により遂に再生する、と概ねそんな物語。だが道具立ては相変わらずのSF趣味全開で、結構面白かった。
しかしこの日記に最も記しておかねばならない事は、そのストーリーの内で、月の裏側に居る”本物のヒラサワ”というのが出て来るのだが、(平沢が3人存在している設定になっている)それが3DのリアリズムCGで表現されていて、そのCG平沢のクローズ・アップが今日のライブで一番のインパクト&爆笑ポイントであった事だろう。