この日はこれまでで最もよい予報でした。運がよいのか悪いのか、Dubhs ridge (900m, Moderate)にアタックする絶好の機会に恵まれました。Dubhs ridgeは、あまたあるクラシックルートの中でも超が二つくらいつく素晴らしいルートです。
スカイ島のすばらしい朝陽。
Dubhs ridgeを登るには、まずエルゴールの港から船でコルイスク湖(Loch Coruisk)へ渡らねばなりません。もちろん帰りも船なので、最終便に間に合わなければ、湿地帯を延々と5時間近く歩かねばなりません。トポには所要6時間とあったので、余裕をみて9時間近くは見ておかないといけないと考え、前日に船の事務所へ出向いて朝7時〜夕6時の便を設定してもらいました(もちろん追加料金を支払ってです・・)。
朝食もそこそこに船着き場へ向かいましたが、事務所の扉に「1時間遅れで出発します。」との張り紙が冷たく貼ってありました。この時点ではまだ心の余裕がありましたが、なんと帰りの最終便が夕4時半との通達を受けどうしたものかと迷ってしまいました。追加料金まで支払っているのでクレームをつけたいところなのですが、語学力がそこまでないので受け入れるしかありませんでした。
ここまで来た以上、頑張って抜け上がろうと嫁を鼓舞して登り始めました。8時半に船着き場を出発、湿地帯に足をとられながら取り付きへ。
景色は言うことないのだが、足元はベチャベチャの湿地帯。
Dubhs ridgeの全景。見た通りかなり緩い・・。
9時半に登攀開始。傾斜がかなり緩いのでフリーソロで登り始めるも、嫁が怖いと言い出したのでやむなくロープを出しました。ロープをつけていれば安心したのか、そのまま同時登攀でガンガン登って行きました。
フリーソロで怖がるのも無理ないこと?
2時間で標高733mのDubh Beagのピークへ。懸垂でコルに降り立ち、さらに1時間ほどでSgurr Dubhs Mor(944m)のピークへ。視界が悪くてロストしかかりましたが、運よくガスがあがってくれたのでCuillinの主稜線へ出ることができました。
快晴の予報なのにこれかい・・。
下山口にあたるAn Garbh Choire谷の源頭に降り立ったのが1時半過ぎで、この時点で船に間に合うことを確信しました。下りはガレ場を降りるだけかと思っていましたが、最後の最後に試練が待っていました。最後で谷筋から離れなければならないのに、気がせいていたのかそのまま谷を降りていってしまい、最後に大きな滝を下る羽目になってしまいました。水量がすくなかったおかげもあって何とかクライムダウンできましたが、後から考えると冷や汗ものでした。30分ほどの余裕を持って船着き場へ到着できました。
An Garbh Choire谷を下る。
海岸線に降り立ちホッとする。
よくぞ歩きとおしてくれました。
体力もですが、それ以上に精神的にかなり参ってしまいました。時間に追われるクライミングは二度とすまいと固く心に誓ったのでした。
闘いすんで陽が暮れて。

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