GRANITE

予定では（こればっかり・・）クルー針峰のOttozルートでしたが、アプローチと取り付き周辺に残雪あり。高をくくってピッケルなどもって上がっておらず、やむなく南西稜へ転進することに。

　先行するガイドパーティーの後を追うようにして出発。ややこしい（本当にややこしい）アプローチを経て南西稜へ。リッジ自体はすばらしいものでした。とくに難場もなくクルー針峰の肩に抜け出ました。頂上稜線には雪がたくさん残っていましたが、端をつたって頂上へ立つことができました。

目の前に広がるモンブラン南面が圧倒的でした。かのレビュファが「若いクライマーが、モンブランのこの様相を知るということは、私は当を得たことの思われる。」と書いていますが、あと十年も若かったら、と思わずにいられませんでした。

　下山中、最後の懸垂で落石が右の脛に当たってしまいました。痛みはそうひどくなかったのですが、出血がなかなか止まりません。触ってみると少しえぐれていました。15分ほど圧迫するとなんとか出血がおさまってくれました。テーピングでグルグル巻きにして急いで下山しましたが、これから先の日程を考えると貧血を起こしそうでした。

　　　　　　　　　　　　リッジは快適そのものでした。
　　　　　　　　　　　　　　　　　頂上目前
　　　　　ケガ人を置いて、ボルダーに興じるパートナー

　この日はクールマイユールへ、やっと（普通でいうところの）アルプスへ入ります。300キロ超のドライブですが、グランパラディーゾ、モンテローザなどを見ながらですから飽きません。

　クールマイユールからベニの谷へ入り、クール針峰へ登るためにモンジーノ小屋へハイクアップ（といってもヴィアフェラータ）です。軽く見ていたのですが、3時間かかってしまいました。

　夕方小屋前のテラスでボーとしているとヘリが飛んできて、目の前のノアール針峰でレスキューを開始しました。あんなところから助けを呼ぶ方も呼ぶ方ですが、助けに行く方もすごいです。あまりの手際のよさに感動してしまいました。
　　　　　　モンブランのイタリア側はすごい迫力でした。
　　　　　　　　　　要救を吊り上げたかとおもったら、
　　　　　　すぐに運び降ろしてあっという間に救助完了。

　早起きしてRocca Provenzaleという岩峰へ向かいした。山小屋から少しあがった道路脇に駐車し、踏み跡を取り付きへハイクアップ。下調べの甲斐あってDanza Provenzaleルート（7ピッチ、5+、D+）の取り付きはすぐにわかりました。

　岩質は珪岩（quartzite）だそうです。岩は固くかかりもよいのですが、スベスベしておりスタンスが信用できません。ルートは傾斜が強いもののガバ、カチばかりで、気持ちよく登っていけます。7ピッチ登ったところでルートは終了しますが、我々は頂上を目指してさらに登っていきます。思った以上に長い登りをこなして待望の頂上へ。下降は一般ルートの南稜を下りましたが、いやらしいところも多々あってすっかり疲れてしまいました。

午前中に軽く登って、昼からクールマイユールまで移動しようと話し合っていましたが、この日もCampo Base泊まりになりました。


　　　　　ボルトは少し遠目ですが、快適なフェースクライミング。
　　　　　　　6ピッチ目はハングを右から越えます。
　　　　　　　　　頂上のクロスとTorre Castello

　雨を避けてわざわざマイラ谷まできたのに、起きてみたら雨・・。朝食後フテ寝していたら、いつのまにか空が明るくなっていました。起き出してみると、すっかり晴れわたっていました。急ぎ準備をして出かけることにしました。

　この日の目標は、Torre Castelloという岩峰のSpigolo Castiglioniルート。このルートは、当時アルプスで最も困難と言われたルートだそうです（翻訳間違っていたらごめんなさい）。

　山道を最奥まで走らせて、そこからColle Greguriへハイクアップ。見あげれば雲一つなく、あたり一面お花畑がひろがり、アルプスにいることを感じさせてくれました。明瞭な道をたどること50分ほどで岩峰の基部にあたるColle Greguriへ到着。しかしながら、登攀準備をしているとみるみるうちに黒雲が覆ってきて、ロープを結び終えたころにはとうとう降り出してきました。困り果てた時に（たぶん大戦時の）塹壕を発見できしばし雨宿り、うかつにも雨具を持ってきてなかったので助かりました。しばらくすると雨もあがってくれて濡れずにすみました。


　　　　　　　　　　左のコルにトーチカ跡があります。

　無事ミラノへ到着、レンタカーを借りて一路南へ。北部が雨の予報だったので、少しでも天気のよさそうなマイラ谷（Valle Maira）へ入ることにしました。

　300キロほどありましたが見知らぬ地のドライブはたのしいもので、夕方前には無事に到着。こんな辺鄙な地にはだれもいないだろうと思っていたのですが、バカンスを楽しむ大勢の人で賑わっていました。マイラ谷の最奥にキアッペラ（Chiappera）という村があり、そこのCampo Baseという山小屋へ泊ることにしました。快適なところで料理も凝っており、だらだらと三連泊してしまいました。　

ドロネロにあるPonte Vecchioという橋。各地にあるDevil's Bridgeの一つですが、いまいちでした。
　　　　　Campo Base。ハイカーが多数泊まっていました。

　福岡から上海経由でミラノへ。

　初めてチャイナ・エアーを利用しましたが、最悪。荷物を上海でピックアップしなくてはならないし（トランジットのシステムができていないのか・・）、日本語の映画が一本もない（明らかに嫌日行為と思われます）等々、最悪。

　18年ぶりの中国でしたが、いまだ古典的な割り込みをする人々がいて改めて驚きました（こりゃ、領土問題は絶対に解決しませんわ・・）。

　当初はシオラへクライミングに行く予定でしたが、紆余曲折ありイタリア・フランス・スイスを周遊するツアーになりました。

　前半のメインをグラン・カピュサンに、中盤にザルビットを挟んで、最後はビアンコグラートで締めくくろうと思っていたのですが、結果的にはどれも登れず・・。落石で足を怪我するという不運もあったのですが、五十過ぎてまでガシガシ登ることもなかろうと易きに流れたのが一番の敗因かもしれません。

Day01:福岡→
Day02:ミラノ到着→Chiappera（Val Maira）へ。
Day03:Torre Castello（降雨敗退）
Day04:Rocca Provenzale・Danza Provenzaleルート
Day05:クールマイユールへ移動後、Monzino小屋へ
Day06:クール針峰・南西稜
Day07:レスト
Day08:Pyramide du Tacul・Ottozルート
Day09:フルカパスへ移動
Day10:Chli Bielenhorn ・Schildkrötengrat
Day11:Bergseeschijen・南稜
Day12:レスト
Day13:レッコへ移動
Day14:Grigna Meridionale・Cresta segantini
Day15:帰国