クルマの性能では、圧倒的な差をつけられての予選を終え、決勝までのインターバルを過ごす。決勝を考えてのセット変更は無し、精神的に凹んだインターバルはなんとも時間が長い。午前10時頃から天気は快晴、気温も上昇して来た。
決勝スタート順はスーパーツーリングクラス、ネオヒスの順となり、13時過ぎ決勝スタートとなる。
逆転PPを決めたHEADチームはすこぶる上機嫌だった。今回のレースから#21のチームメイトとなった#16。WEST勢も2台となりテントの雰囲気も明るい。かたや我々グリッドの面々は、個々に思うような予選タイムが出せなかった事で若干沈滞ムードが漂っていた。
気分がどうであろうと時間は経過する。スタート前チェックを終え、クルマに乗り込みウェイティング場所に向かう。スーパーツーリング決勝は、WTCCドライバー伊藤選手が早々に集団を抜け出しトップを快走中。チームグリッド O野選手は、一時3位まで上がったものの5位にポジションダウンしていた。ほどなく伊藤選手がトップチェッカーを受けスーパーツーリング決勝が終了した。
いよいよネオクラス決勝。コースインラップでダミーグリッドに向かう。気温は既に20度、路面温度40度弱。エンジン、タイヤに負担がかかる条件となって来た。意気揚々とトップでコースインする#18。路面状況を確かめながらコースを流しダミーグリッドに着いた。
ダミーグリッドに全車整列したところで、恒例の選手紹介が始まった。柳田アナが、PPの#18にマイクを向け決勝の抱負を尋ねた。#18のコメントは「憧れの独走でトップチェッカーを受けます」なかなかどうして・・・余程自身があるという事だ。悔しい気持ちをグッと腹に押さえた。
続いて2ndポジションの私に柳田アナがマイクを向けた「僕も、憧れの独走でトップチェッカーを受けたいと思います」柳田アナ「両者、独走でトップチェッカーを受けるという、#18対#27の因縁の対決。どちらが先にチェッカーを受けるのか?」レースが始まる前からレースは始まっている。走っている時だけがレースじゃない。朝、パドックに到着した時から帰宅するまで相手選手と顔を合わしている間中がレースなのだ。
ブルーフラッグが降られフォーメーションラップがスタートした。
全車一斉にスタートし隊列を整える。毎回、果敢に加減速を繰返しウォームアップする#18だが、今日のフォーメーションラップは随分とおとなしい。考えられる事は、ウォームアップでタイヤの内圧を上げ過ぎない配慮ではないか? 気温と路面温度を考えるとスタート前に内圧を上げすぎるのは得策ではない。それも百戦錬磨のH氏からのスタート前のアドバイスであろう。裏を返せばスタートから一瞬で引き離せるという自身の現れとも読める。

デグ2から100Rへ

スプーン1進入
ほぼ全車がまとまった状態でスターティンググリッドに近づいて来た。私は、130Rに対してイン側2ndグリッドにロックオン。全車グリッドにロックオン! 後方でグリーンフラッグが降られた。タワーから「5秒前」のボードが提示された。前方のシグナルにレッド点灯! ブラックアウト!!
全車一斉にスタートを切った。右前PP#18は、ややクラッチミートに失敗した。私はリアタイヤのグリップ感を探りつつアクセルオン。1→2速にシフトアップしたところでPP#18の横に並びかけた。#18はすかさず牽制してくる。2→3速にシフトアップ。#18とほぼ一線だ。4→5速にシフトアップした。2台は横並び全く同じ加速体制のまま目前の130Rに。私はイン、#18はアウト。勝負有り。130R進入で一気に#18を交わした。続くショートカット進入をトップでクリア。デクナー1つ目進入時後方#18に0.3秒差。

しかし、デクナー2をクリアし100R付近から後方#18が、どんどん迫って来た。ヘアピン立上がりで引き離しながら立上がった。しかし、マッチャンコーナーで#18は、エンジンパワーをいかんなく発揮しスプーン1進入時にはテールツゥノーズに。スプーン2立上がりで引き離しながらバックストレートに入った。

スプーン1の攻防戦
その途端、信じられない光景を目の当たりにした。私のミラーに映った#18は、まるでクラス違いのクルマの如くスリップも関係なしといわんばかりに接近してきた。西コースピット付近を通過する時には既に横に並びかけて来る勢いだ。同じパワーのクルマならこれほど短い距離で接近出来るはずがない。#18の進路を牽制する余裕など全くなく、私はなすすべもない状態だった。#18は130R進入でアウトから意図も簡単に私を抜きさって行ったのだった。
「まさか・・・」あれほどまでスピード差があるなんて。抜かれた瞬間、頭の中が真っ白になった。この時の心境は「今日のレースはこれで終わりだな」と思った。130Rを立上がり、ショートカット進入へのブレーキングが始まった。190km近いスピードから一気に60kmまで減速するコーナーだ。ハートブレイクな状態たったが、#18のブレーキングが甘く一気に接近、ここぞという感じでレイトブレーキで横に並んで行った。ショートカットを立上がった私は、ふっと気づいた。「あれ?」立上がりで追いついて行ける。レース前に施したセッティングが功を奏したうだ。デグ1からデグ2を通過しヘアピン入口まで大きく離される事は無かった。

ヘアピン・・・
ヘアピン進入でピタリと後方まで追いつき、立上がりからマッチャンコーナーで0.2秒近く離される。これは仕方の無いと諦め、スプーン1進入相手がブレーキを始めた所でピタリと追いつく。スプーン2まで離されず立上がりパックストーレートで0.2秒離された。#18の速い箇所はストレート区間のみ。コーナーに関しては立上がり区間は離されるもののついていければ問題なし。
オープニングラップのタイム(スタートから)は、#18 1′36.163、#27 1′35.989。タイム差0.174差
2ラップ目バックストレートで交わされ#18に先行された。#18 1′28.166、#27 1′29.053。タイム差0.885秒。
私が前だと0.1秒差、#18が先行した途端0.8秒差。計測ポイントがバックストレート上ピット前を考えるとスプーン2からバックストレートの加速がいかに強烈かがわかる。
バックストレートを駆け抜け130R入口で前の#18がブレーキングと同時に私が進入を始める。立上り区間からブレーキング区間で追いついていく。立上りでショートカツトイン側にクルマを振ると、すかさず#18もインに寄せてくる。インに寄ったと同時に私はアウト側にクルマを振りレイトブレーキング開始した。今度は前ラップの時より更に奥までレイトブレーキをし真横に並んだ。接触ギリギリのところで進路を譲りショートカットへ進入。進路を塞がれたカタチになり#18の速度が鈍った。
デグ1、デグ2、100R、ヘアピンとテールツゥノーズで追撃開始。一旦、地に落ちた気分はすっすり元に戻り#18攻略に向けてひた走る。マッチャンで離されスプーンで接近。バックストレートで離される。
これで#18の独走体制は夢のまた夢となった。さぁ、ついては行けるもののどこで勝負をかけるか? もはや安全なポイントでのパッシングは無理。ハイリスクハイリターン覚悟でパッシングするほか無い。この2ラップでの流れで130R立上りからショートカット進入までのブレーキングポイントが、お互いが最も接近するポイントだった。
3ラップ目前のラップで130R進入ポイントを少し行き過ぎた#18.このラップ今度は進入速度を落とした為、一気に距離が縮んだ。うまいタイミングだったこともあり130R立上りはテールツゥノーズに持ち込めた。後は相手がブレーキングを開始するのを待つだけだ。
#18はインをこれでもか。というくらい閉めたラインだ。このラインだと絶対にインを外す事がない鉄壁のラインだ。前を行く#18のブレーキランプが点いた! その瞬間ステアを左アウト側に切り、#18のボディ側面に沿ってブレーキング開始。5→4→3→2とシフトダウンを繰り返しながらお互いサイドバイサイドのまま一歩も譲らず。あと数メートルでショートカット進入ポインだ。それでもなおブレーキング競争は続いている。イン側ラインの#18はサイドバイサイドに持ち込まれている事でアウト側にステアできない。このままだと私の横っ腹に激突するか、最後にブレーキを強め減速するほか選択肢はない。かたや私は、#18が頑張って来た場合進路さえ譲ればなんとか接触は免れる。
いよいよターンインポイントに来た! サイドバイサイド状態からスーっと赤いノーズが後方に下がった。その瞬間、一気にステアを右に切りターンイン開始。ヤッタ! 接触も無く#18をオーバーテイクした!
かなりの小回りとブレーキングを余儀なくされた#18は一気にスピードが鈍った。その間、間髪を入れずダッシュし引き離しにかかった。0.3秒差を保ったまま計測ポイントを通過、私のタイムは1′27.402(レースベストラップ記録)、#18 1′28.130.その差0.728秒差のマージンを築いた。
何時もなら、ここで勝負あった。という事だが・・・今日の#18は違った。
やはりエンジンパワーのおかげでアクセルさえ踏めばその加速で0.7差くらい一気に詰める事が可能だった。
5ラップ目スプーン2から立上りストレートスピードを生かし#18は130R進入前で追いついて来た。アウト側に進路を取るもこれは牽制だとわかった。私も若干アウト側に進路を変えそのまま130Rへ進入。ショートカットブレーキングは、私の方が短かったので追いつかれる事がなかった。

5ラップ目計測ポイントのタイム。#27 1′27.715、#18 1′27.611.その差0.104秒。一周で0.624秒縮められたのだ。恐ろしいパワー。

6ラップ目意気消沈したかに見えた#18が、ストレートスピードを生かしピット前あたりからグングン加速して来た。今度は130R進入に対しイン側から反撃して来た。130Rイン攻めは#18の常套手段でもある。何度も経験している事なので決めたポイントまでに勝負はつく。#18は進入でギリギリ、サイドバイサイドに持ち込めず私の後塵を拝した。
6ラップ目計測ポイント#27 1′28.188、#18 1′28.178。その差0.01秒差。130R攻防戦でお互いタイムが落ちた。

7ラップ目#27 1′27.448、#18 1′27.789.その差0.341秒差。私はすぐさまレーシングスピードに復帰。#18は再び意気消沈モードへ。
8ラップ目#27 1′27.571、#18 1′27.493.その差0.078差。#18のペースが再び上がりだした。それは、6ラップ目の攻防戦で0.3秒強の車間距離が開いた事でペースアップして来た。
9ラップ目#27 1′27.607、#18 1′27.480と#18は、それまでの2ラップで車間を開けていたが一気にラストスパートをかけてきた。ヘアピン立上がりからマッチャンコーナーでグッと差を縮めてきた#18。スプーン1でテールツゥノーズになるも、なんとか耐え。スプーン2立上がり、若干距離は縮められたが勝負所のバックストレートで並ばれる事はなかった。
ファイナルラップ。勢いを保ったままショートカットからデグ1、デグ2へ。まだまだ諦めない#18は後方に続いてくる。ヘアピン進入、一気に勝負をかけようとした#18だが、ここで痛恨のブレーキミスを犯してしまった。

クルマはユルユルとアウト側に流れて行ってしまい。#18 は、ここで完全に戦意消失。私は、そのままスピードを落とさずスプーンを目指す。ミラーには、戦意消失した#18の姿が小さく映し出された。それでも尚、気を緩める事なくスプーン2を立上がり、チェッカーフラッグが用意されたコントロールラインをトップで通過し今季1勝目を挙げる事ができた。
今迄、#18に負けていた西コースで久々の勝利だった。

各ポストのオフィシャルさんに手を降り、明らかにパワーで勝る#18を撃墜した事。久々、H氏に勝利した事が何よりも嬉しいレースだった。

いつも応援して頂いてる皆様ありがとうございます!!
次回も応援よろしくお願い致します。
THANKS!
画像提供
飯田氏
わいるど氏