「スタートへ」
オフィシャルからコースインの指示が出た。RSから順にダミーグリッドに向けてコースインが始まった。いつもの如く、右に左に蛇行を繰り返すRS。コース状況を見極めつつ、各部のチェックを怠らずダミーグリッドに向う。5列目のダミーグリッドは、いつもに比べシグナルの位置が遠い。極端な表現をすると「遥か向こうにシグナルが見える。」という感じだ。ただ、良い点もある。5列目アウト側は、下りこう配が緩やかなので、いつものスタート時とは違い、ヒールアンドツゥ スタートをしなくて済んだ。これは、かなりアドバンテージがある。ブレーキを踏んでいなくても後ろに下がらないので、クラッチとアクセルワークに集中出来る。これで、上手くスタート決められる割合がグーンと上がった。

「西コーススタートは上り坂。遥か前方にシグナルが・・・」

「RAG OB池田君が、応援に来てくれた」
「 ダミーグリッド上のネオヒトリックカー」
1分前ボードが提示され全車エンジンスタート。グリーンフラッグが振られフォーメーションラップがスタートした。更に輪をかけてRSの蛇行運転はひどく、おまけにストップ&ゴーを繰り返す始末。接近すると危険なので車間を充分開けておく。私の後方は、#18がペースダウンしている事で7台が縦列状態で走行。かなり後方との差が広がっていたので、私もペースダウンをして後方を待つ。スプーンからRSがスタート練習の如き加速をしてグリッドに向って行く。
私の後方がやっと追いついて来た。ゆっくりと神経を集中させながらクルマをグリッドに着けた。
全車グリッドにロックオン! 後方でグリーンフラッグが振られた。タワーから「5秒前」のボードが提示された。前方のRSから地響きのようなエキゾーストノートが炸裂する。バックストレート上は17台のエンジンサウンドが高鳴った。
「危機一髪」
サーキットが緊張に包まれた瞬間、シグナルレッド点灯!! ブラックアウト。
いつもにまして、上手くクラッチミートが決まり、クルマはスルスルと前に出た。シミュレーション通り、前方RSはエンジンストール、横のRSはスタート失敗。そのコースセンターをフル加速して行く、スタート失敗のアズキ色のRSの前方に入りかけた瞬間、私のボディサイドに、スタートを失敗したRSのノーズが突っ込んで来た! それに怯む事無くマイラインを行く。行く手を阻まれたRSはクルマを右側に振った。その瞬間、私のミラーに#18がダートにクルマを落とし、右に左に蛇行している姿が映しし出された。直ぐ横はピットレーンの側壁だ。
「緊張が走る」
私は2速→3速にシフトアップ。今度は前方にまたストールしているRSを避け都合4台のRSを抜き去り130Rへフル加速して行く。その時、前方130R入口でRSのフロントロゥー2台が接触、一台がアウトガードレールへ激突した!! クルマは衝撃で地面から浮き上がりリアカウルが吹っ飛んだ。そのカウルは風に乗ってコース中央に戻って来たのだ。私は、まもなく130R入口に差し掛かる。路面は土や草で汚れコース中央に巨大なリアカウルが落下していた。仕方なくペースを落としかけた瞬間に後方からスタートを失敗したRSに抜かれた。すぐさまRSの後方に付き、前方を走行している3台のRSに食らいついて行く。スプーンを抜ける時点で、まだ前方のRSが見える。バックストレートに戻って来てダートを走行した#18を探すもクルマは無かった。壁にヒットせずクラッシュは免れたのだろう。

「オープニングラップ 後方、2位に上がった#50」
130R手前のポストから、極めて危険な状況である事を知らせるイエローにレッドラインが入った通称オイル旗とダブルイエローフラッグの振動が提示されていた。この状況で、130R進入をペスを上げて入りスピンでもしようものなら更に危険な事になってしまう。少しペースを落として130Rに進入。130Rアウト側に救急車が入っていた。おそらくドライバーの救助に入ったのだろう。
「コースレコード更新へのアプローチ」
前方のRSは、まだ見える位置に居る。オイオイ、遅くないか? 私にとっては、ペースランナーのようなものなので重宝するが。2周目には、130R付近も状況が改善され1.27秒台のペースに入って来た。さすがに3周目に入ると前方のRSも視界から消え去り、ここから単独の走りになる。私の後方には既にクルマは無く。後ろを気にせず思いっきり走れる状況になった。ここからは、予選で出したレコードタイムを塗り替える走りをする番だ。ともかく集中力を切らさない事、そして攻めの走りを続ける事がレコードタイム更新へのアプローチだ。タイヤ内圧をスタート時に若干下げた事もあり、タイムの上がりが遅い。原因が内圧にある事もわかっているので、気にせずプッシュを続ける。
3周目1.27.63
4周目1.27.63
5周目1.27.66
6周目1.27.73
27秒中盤のタイムを刻んでの走行が続く。
後方から来るクルマも無く、更に一人旅は続く。
少しでも、弱気になればドライビングは守りに入る。そうなれば、レコード更新の目標は諦めなければならない。攻めすぎるとコースアウト等のアクシデントに遭遇するリスクは高い。まさに、綱渡り状態。しかし、前のラップより今のラップが1000分の1秒でも上がるように走る。最近の練習時から、この事を心に保ち練習を続けて来た。それが、集中力を切らさない走りに結びついた。
「ソウル ドライビング」五感をフルに動員し全身全霊を込めて走り続けた。
7周目1.27.02
ここで、ついにレコードを更新した!
レースアナウンサー柳田さんに、レース前公言した事が達成された。しかし、安心するのは早い。これ以上のタイムを残りの周回で出せるかもしれない。
集中力を切らさずチャレンジする。
後方から、スタート時のあおりを食ったRS が、この周回から後方に現れた。デグ2でパスさせ、接触等のアクシデントも無くタイムロスも無かった。
8周目1.27.64
9周目1.27.19
タワーを確認すると、フラッグマンがチェッカーを用意している。しかし、RSのトップは、まだ後方にやって来ない。これはもしかしたら規程周回10周を走りきれるかもしれない。
(この時点で、他のネオは全車、トップにパスされ、9周でチェッカーを受けていた)
「チェッカーフラッグ」
ポストからブルーフラッグが提示される。それを確認後ミラーを見ると直ぐ後ろにRSが張り付いている。お互い無理の無い場所でパスさせた。だが、このRSはトップ車両では無かった。パスされたRSの後方に付いてスプーン2つ目を立上がる。前方のタワーからチェッカーが見える。長くもあり短くもあった周回がこれで終わる。ピットレーンでは、チームの皆が拳を突き上げて迎えてくれている。それに応えるように私も拳を上げてトップチェッカーを受けた。
熾烈を極めた2位争いは#18が制した。
3位にチームメイト#33Iwataさんが入った。私にとって、iwataさんの表彰台は特に感慨深い。

「#18、#33による2位争い」

1 予選PP(コースレコード)
2 優勝(2位との差50秒)
3 ファステストラップ(決勝中レコードタイム更新1.27.033)
ハットトリック達成。

リザルト
http://www.mobilityland.co.jp/result_s/2008/clubman/1207_neo_f.html
#18が2位に入った事で、シリーズポイントは1ポイント差で逆転シリーズチャンピオンを獲得出来た。
これで、2008年シリーズをベストレースで締めくくる事が出来た。これも、チーム関係者並びに応援し下さっている皆様のおかげです。

2009年も、一層、精進して行く所存です。
今後も、応援をよろしくお願い致します。
皆さん! ありがとうございました!
画像提供
飯田氏&わいるど氏
Tank you!