架空請求詐欺に悪用された銀行口座を開設し、預金通帳などをだまし取ったとして、4人の男が今月10日までに香川県警に詐欺容疑で逮捕された。意外にも、その中の1人はライブドアの前身、「オン・ザ・エッヂ」の元社員で、堀江貴文社長(32)を尊敬し、自らも起業家として成功するのを夢見ていた。「第2のホリエモン」になれなかった男の転落人生とは−。
男は、東京都千代田区の有価証券取引会社「シェア・ビジョン」社長(31)。
調べだと、容疑者は有料画像配信サービス会社「松本企画」社長(48)、携帯電話販売会社「ボス・ジャパン」社長(31)ら3容疑者と共謀。昨年9月、川崎市麻生区の都市銀行支店で、「松本企画」社長が使用する目的なのに「ボス・ジャパン」社長名義の口座を作り、銀行側から通帳などをだまし取った疑い。全員が容疑を認めている。
口座には、アダルトサイトの会員登録手数料の架空請求を携帯電話のメールで受けた東かがわ市の土木作業員の男性(31)が約3万円を入金。松本企画からは約100通の通帳などが押収されており、容疑者らが組織的に通帳などを詐取し、架空請求を繰り返していたとみられる。
「シェア・ビジョン」社長は平成15年5月にシェア・ビジョンを設立。自宅も兼ねたお茶の水界隈(かいわい)にあるマンションで、有価証券関連業のほか、コンピュータープログラムの開発など幅広い仕事をしていた。
だが、「アルバイトが数人程度の小さな会社で、経営はうまくいってなかったらしい。生活費欲しさの犯行だったようだ」(捜査関係者)。
「シェア・ビジョン」社長の経歴をたどると、意外にも、堀江社長との「関係」が浮かび上がる。
関係者によると、容疑者は横浜国立大大学院経営学研究科(当時)で経営学修士を取得後、平成11年4月、ネットバブルでその名を轟(とどろ)かせた携帯電話販売会社「光通信」に入社したが、同年12月に自己都合で退社。転職先に選んだのが、オン・ザ・エッヂだった。
容疑者は同社で約3年間、堀江社長側近として特許出願や大手企業からのウエブの受注などの業務に従事。現在は1400人以上もいる社員も当時はわずか20人あまりだったが、職場は新興企業らしく活気があふれていたようだ。
容疑者は昨年初めに異業種交流会に参加した際、主催者との対談でこう振り返っている。
「みんなが朝から夜中まで楽しんで仕事をしていました。(中略)それぞれが、相当な使命感をもって仕事をしていましたね」(主催者HPから)
堀江社長については「見た目よりもフレンドリーな方で麻雀やカラオケや食事などによく連れていってくれました」(同)と話し、社長室に自分の席があったことを自慢していた。
容疑者は学生時代にも起業経験があり、対談では、東京・銀座で携帯電話の露天販売をしていた経歴も明かしていた。関係者の1人は「堀江さんを『営業でも何でもできる人』と絶賛していた。起業家の手本として尊敬していたのは間違いない」と指摘する。
「そういえば、自分もバツイチだって言っていました。それは堀江さんのまねってわけじゃないでしょうけど…」(同関係者)
オン・ザ・エッヂといえば、先月、大阪市のコンピューター関連会社「メディア・リンクス」の架空取引に絡む巨額横領事件で、元執行役員が起訴されたばかり。かつての仲間の相次ぐ不祥事に、堀江社長は何を思っているのだろうか。

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