日米通算3000本安打を達成したイチローの試合後のインタビューでは、それまで日本球界で唯一3000本安打を達成した張本勲氏(元東映:現日本ハムほか)や、「日米通算」の持つ意味についても話題が及んだ。
――誰かの顔や、誰かの言葉が思い浮かんだか?
「張本さんですね。1995年の春に『3000本を打つのは、おまえだ。首位打者(7回)を抜くのも、おまえだ。最終的にヒットの記録をおまえに抜いてもらいたい』って言われたんですよ。なので、そのことを一番思い出しましたね。張本さんは、覚えてないかもしれないですけど」
――その張本氏は、もう、「あっぱれ」というコメントを出している。
「まあ、そこは、あえて『喝!』と言ってほしかった。『あっぱれ』と言ってしまいましたか。どこまでも『喝!』と言い続けてもらいたいですよね」
――張本氏から3000本と言われた当時、実際にイメージできたか?
「できないですよ。200本を打った翌年、オープン戦の東京ドームだったと思いますけど、張本さんが本当に今日のこの日を想像して言われていたら、すごいことですよね。かといって、誰にでも言うわけではないと思うんですよ。だから、何かの確信か、確信までいかないまでも、何かを感じていってくれたと思うんですよね」
――張本氏は、日米通算4256安打とメジャー3000本を目指してほしいと言っている。
「そこのギャップが面白いところですよね。3000を打った人は、結局は、細かい小さなことの積み重ねを知っているわけじゃないですか。その人が、いきなり4000とか言うのが、おかしいですよね。そこが面白い。憎めないなと思ってしまいますけど。僕の目標として、来年のシーズンが終わるときに、(メジャー)2000本を達成したいとは思ってます」
――日米3000本について、多くが通過点と認識しているが。
「いいんじゃないですか。実質15年のシーズンでしたけども、ここまで、まあ、いいですよね。ペースが。悪い気はしないですよね」
――通過点と他人から言われることは?
「そこで反発する僕はいないですから。いいんじゃないですか。だって、そこへ辿り着くまでに感じていることは、別に人が知る必要がないこともたくさんありますし。知ろうとしてくれたら、それはそれでいいし」
――「日米通算」の記録だが、移籍の制約がなければ20代前半にメジャーで積み重ねたかったか?
「そこはもう、言ってもしょうがない。日本で積み上げてきたものは、安打だけではなく、凡打の中にも僕の技術を磨いてくれたものだし、日本時代に養われた技術をこちら(アメリカ)で使って、僕はヒットを打ってるわけですよね。ですから、そんな発想はしないですよ。例えば、18か19のときに来てたら、とは考えない。そもそも、技術がまだないんだから。だから、そのときに(メジャーへ)来てたら、今の僕はない可能性の方が高いんじゃないですか。そういう発想は、考え方も含めて、日本時代に養われた。で、アメリカの人の中には、『日本でのヒットなんか(たいしたことがない)』みたいな考えが絶対あると思う。でも、申し訳ないけど、アメリカでのヒットのペースの方が速いんですよ。だから『日本の方がレベル高いんじゃないの』みたいなことは言えますよね。(アメリカの方が)試合数だけ多いからっていうのだと、ちょっと弱いけどね。そこはちょっと、誇りにしているところ」
――その議論は、イチローがきっかけになったが。
「まあ、最初はやっぱり気持ちいいよね。何にしても。世の中の議論を巻き起こすのも、自分がそこにいるっていうのは悪い気はしないよね。ただ、議論に対して、それでいいと思うよ。日本とアメリカを合わせて、3000。それでいいと思うね」

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