プロ野球日本ハムの新庄剛志選手は引退会見で、「ユニホームを脱いでも新庄は新庄」と話していた。
その言葉の調子に、ふと思い出したのは、新庄選手のお父さんのこんな言葉である。「根性より新庄」
オヤジギャグでありながら、人生訓になっているところがミソだ。
ぼくは「新庄ファイル」を作っているが、そのファイルを開き、改めて新庄とは?と考えてみた。やはり基本は「カッコイイおれ」であろう。
「誰もわからん。俺(おれ)もわからん。新庄剛志」という帯のついた「ドリーミングベイビー」は、彼を理解するうえでは外せない本だが、この中には「カッコイイ」が何度も出てくる。
<一番好きな数字は「1」だ。シンプルだし、カッコイイと思う>
<「新庄が着てる服、なんかカッコイイな」と思われるようでありたい>
彼が言うカッコイイは、子供がストレートに「カッコイーイ」と言う感じと似ている。万事、小難しく考えないのが新庄流だ。
「お前、ピッチャーやってみるか」「えーっ! いいんですか!?」
阪神時代、野村克也監督に言われるまま、投手の練習をした。野村監督はマウンドに立たせる気などなかったが、彼はあっさりノセられ、ウキウキ練習に励んでいたのだった。
テレビの「サンデーモーニング」で、新庄選手はプロ野球解説者の張本勲氏からよく「カーツ!」を出されていた。はた目にも理不尽な「カーツ!」もあった。「カーツ! キャンプ地は暖かいんだから、スキー帽はかぶらなくていいでしょ」。これなど「ほっといてくれ」の「カーツ!」だろうが、新庄選手のリアクションは明るい。「張本さんにカーツ。最近、カツ少ないよ。カーツだ!」
笑顔を絶やさず、ファンに愛され、夢を達成して男泣きし、カッコイイ自分に酔いしれる。いいよなあ、新庄は−−。昨今、居酒屋でのお父さんらの話題は、もっぱら新庄流生き方だ。話は決まって今後の新庄を予想する展開となるのだが、先夜は隣席からこんな声が聞こえてきた。
「新庄は新庄だと言っても、カッコよさで押し通せなくなった時、どうするかだよな」
「そう、そこだ」
ぼくはつぶやいていました。(その時は、新庄より根性なんでしょうね)

0