テレビでチャンバラの殺陣で有名な高瀬道場の女性部門のかたせ女史率いる女殺陣師達の紹介を見た。なかなか様になっていて斬られ役も楽しそうだ。
昔、高名な殺陣師が柳生新陰流に入門したが、あまり殺陣に利用できないと思ったのかすぐ辞められたそうだ。
しかし私は殺陣にもっと活かせる様な気がする。
新陰流に「試合勢法」という練習体系がある。本当の試合はしないものの、「斬る側」と「斬られる側」に分かれて特定の条件での斬り合いを実体験する練習法だ。
見ていると、斬る側はきちんと相手のすきとなる部位に打ち込む。ただ打ち込むのではない。双方熟達してくると本気で打ち込むのだ。すきに打ち込むのだから受ける側が一番の弱点をつかれるわけだ。受け損ねると袋竹刀と言えど、指がしばらく曲がらなくなるほど打たれると言う。真剣ならば指が飛んでいる。しかし熟達すると真剣でも見事に躱すことが出来るという。
これを迫真といわずにはいられない。
新陰流は本当に「斬る」ことをまず教える。
試し切りこそやらないが、本気で修行しさえすれば誰でも真剣を握れば「斬る」ことが出来るようになる。
その秘密は「太刀筋」と「手の内」だ。
私の五輪書の解説を読んで頂ければ納得いくはずだが、いくら早く刀を振っても刃が垂直に対象物に入らねば、「斬る」ことは出来ない。その時、拳を力一杯握り込んでいると少し刀を捌かれればすぐに斬り込む方向が変わってしまう。
斬り合いをする際は、手の内を含んだ身体の自由度が生死を分ける。握り込む、つま先立つ、腰を曲げるなどは、次の攻撃に対処できない。新陰流ではこういう癖を「病気」といってそれを取り去ることを修行の前提としている。
私が殺陣を演出することが出来るなら、まず役者にはじっくりと太刀筋と手の内を学ばせるかな。実戦の描写はある程度撮影技術(CGを含む)を駆使することになるだろうが、迫真の斬り合いをスローモーションで描いて見せたいものだ。
余談だが、映画「300」ではスパルタ兵となる全員が長期間ハードトレーニングを積んだそうだ。そういう映画への情熱も必要だ。
「せんせ!リアリズムでっせ!・・・」(殺陣師段平が島田正吾に言う言葉)
「試合勢法」については下の映像の1分4秒から見ることが出来ます。
「
柳生新陰流の本」

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