原作は読んでないが、映画を見てしまった。下馬評で情報量が飛んでもなく多い作品ということだが、それは「ヒストリーチャンネル」や「ナショナル・ジオグラフィックス」の番組も見たことが無い人にとってだろう。
嫌みで言うつもりはないが、歴史に興味を持っていない人にはあまり感動も興奮も呼び起こさないのではないだろうか?
現代キリスト教が、キリストが教えた教義とは異なり、権力に妥協した教義に聖パウロによって変えられたという仮説は有名だし、ローマ帝国によって権力と結びついて国教となった経緯もこのことで納得は行く。聖書を身近な心理や人間関係で読み解くなら、「マグダラのマリア」の記述があまりに生々しいことは明白なのだ。
この小説の面白さは、そんな宗教創始者の「人間的な事実」をローマ法王庁が権力温存のために抹殺したという仮説で展開し、尤もらしい考証で物語りを展開させるところにある。
皆さんが知らねばならないことは、ローマ法王庁ははっきり言って、ヒトラーやスターリンと同レベルのことをしているのは歴史的に明らかだということだ。こういう意味では、私は無信教の中で人間の心に神性を見つけられるという自分が好きだ。
「X−FILE」と同時期にやっていた「ミレニアム」という米ドラマもそんな主題だったが、ストーリーとして、シオン修道会やオプト・デイという法王庁の属人組織を対立させ、ダ・ビンチの絵画の謎と絡めたのは面白い。また、ローズラインという旧子午線の存在も興味深い。ただ、「ブラッドライン」というイギリスを通る子午線はいくら検索しても分からなかった。ロスリン(ローズラインと掛けている)寺院はその上にあるのだろうか?
ハリウッドはローマ法王庁も怖れていないということがこの映画で分かったのは収穫だった。
私がもしこの小説を書いたなら、マリアが眠る場所はルーブルのミラミッドではなく、本当のエジプトのピラミッドにする。何故かというと聖棺はエジプトあるいはアフリカに運ばれたという言い伝えがあるからだ。
どうして作者がマリアの眠る場所をパリにしたのかという理由は、トロイの末裔と言われる Merovingian王朝(フランク王国すなわちフランスの建国者)の祖先がキリスト(マグダラのマリア)の末裔だという、(ここだけの)話を基にしているからだ。興味ある人は映画「トロイ」を見ると良い。
確かに古来から人間は「血筋(ブラッドライン)」に畏敬の念を持っていた。なぜならそれが本来の人間集団の成立の根元なのだ。人間は移動する動物なので場所的に離散しあい、現代の民族同士の唾棄すべき殺し合いが生まれたのだ。
キリストの系譜が守られて来たということは、本当かも知れないしそうあって欲しいという願望もある。

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