幾つもの大河ドラマを手がけているNHKも出来不出来はあったが、この「義経」はなかなかポイントが高い。
原作の力かどうかは、生憎原作を読んでいないので分からないが、制作と演技陣の息が合っていることが見て取れる。油が乗ってきたと言うべきか、登場人物が生き生きと動いているのだ。これは我が小説でも感じている鑑賞者だけが感じる「力学」かもしれない。創出する側はただ「夢中」。そんな感じがする。
先週の常磐御前と義経の双方の顔のアップは演出者と撮影者・演技者の「ノリ」を感じる瞬間だった。
今日の「一ノ谷」もまず義経の理に適った戦術にまず引き込まれた。ここで納得しなければならない。勿論、正史にあるのかは不明だが、両軍の数、布陣の位置も重要な納得材料だ。
宮尾登美子氏の原作の力であろうが、源氏・平家の葛藤のあれこれや、いわずばなるまい、後白河法皇の圧巻!この演技、などは特筆に値す。平幹二郎と夏木マリは怪優ぶりを十二分に発揮している。
歴史とは解いてゆけばこれほどの情と建前と本音が絡み合って流れていくものであることを、我々に再認識させてくれた。
思えば、捕らえられた頼朝を殺さなかったこと、木曽義仲が平家・西国と手を結ばなかったこと、平家が西国の強力な水軍を使いこなさなかったことなど、ほんの些細な判断で歴史は変わっていたことを宮尾氏はちゃんと知っていたということだろう。
けなすのもなんだが、合戦では武将が馬上で足軽相手に戦うなどあり得ない。狭い一ノ谷の浜で騎馬で駆け回り踏み殺すかはじき飛ばすだけで彼らは戦意を消失しただろう。
戦闘場面としては、戦うタッキーに凡人のような歯を食いしばって唸る顔をさせるべきではない。少し夢が崩れる。

0