どん研究所メインサイト
どん研究所、どんちゃん、EMC2などにかかるホームページ、掲示板などのメインサイトです。
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プロフィール
どん研究所、どんちゃん、EMC2 (1941年生まれ、社会制度研究家)
2019/1/29 12:41
「<PRESIDENTOnline>「衰退か再興か」日本を襲う2024年問題」
経済・金融・ビジネス
2019/01/29 PRESIDENT Online「衰退か再興か」日本を襲う2024年問題 北俊一
2024年に日本は2つの深刻な問題に直面する。ひとつは50歳以上の人口が全人口の5割を超えること、もうひとつは通信分野で旧来の交換網が一斉にIP網に切り替わることだ。野村総研の北俊一氏は「2024年問題に対処するには、5Gによるデジタル変革が解決の鍵となる」という。どういうことなのか――。
※本稿は、野村総合研究所『ITナビゲーター2019年版』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
■2024年には歴史上初めて50歳以上の人口が5割超に
2018年5月、自由民主党政務調査会は「『2024年問題』:人生100年時代を生きる将来世代の未来を見据えて──『選択する社会保障』」と題する政策提言を発表した。その冒頭には次のように書かれている。「わが国は、人生100年時代が到来し、6年後の2024年には歴史上初めて50歳以上の人口が5割を超える国となる。まさに、どの国も経験したことのない事態であり、『2024年問題』とも言える」。(図表1)通信業界においては、2024年は、2025年ごろに維持限界を迎えるNTT東日本・西日本のPSTN中継・信号交換機をIP網に一斉に切り替える年になる。言い換えると、固定電話網がIP網へ移行するわけで、これに伴い、ISDNの「ディジタル通信モード」が終了する。どの国も経験したことがない、大規模かつミッションクリティカルなオペレーションであり、通信業界の「2024年問題」と言われている。その背景には、レガシーな交換機を保守する要員の維持限界が来るということがある。この2つの「2024年問題」は、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ」の中で、「ヒト」の重要性が益々高まることを示している。2018年6月に経済財政諮問会議を経て閣議決定された、いわゆる「骨太方針2018」では、持続的な経済成長の実現に向けて潜在成長率を引き上げるため、「人づくり革命」「生産性革命」に最優先で取り組みながら、働き方改革、新たな外国人材の受け入れなど、あらゆる政策を総動員することが示された。とりわけ生産性革命の実現においては、「AI(人間で言えば脳に相当)、センサー(人間の目に相当)、IoT(人間の神経系に相当)、ロボット(人間の筋肉に相当)」といった革新的技術の活用が強く打ち出された。わが国の企業はいま、デジタル変革が求められているのだ。
■あの加賀屋はロボットで配膳を自動化
働き方改革においては、大手広告代理店の新入社員の自殺を契機として、(サービス)残業の削減や有給休暇の取得、障がい者雇用など、“ブラック企業”のレッテルを貼られないための取り組み、「働き方改革1.0」が一気に進んだ。そして現在、働きがいのある会社、社員が成長する会社、すなわち、“ホワイト企業”を目指す取り組みとしての「働き方改革2.0」に移行しつつある。子育てをしながら、親の介護をしながらなど、時間や場所に制約されない働き方や、副業を含めた多様な働き方を許容する。そこでは、テレワークやジョブシェアリング、クラウドソーシングといったデジタル技術が大いに貢献できるだろう。また、日本人労働者の減少を補うためには、AI・ロボット、外国人労働者、シニア、障がい者などの活用が欠かせない。しかし、そこで重要なのは、真のダイバーシティを実現することである。たとえば、日本一のおもてなしの宿として有名な加賀屋(石川県)では、客室ごと、お客様ごとにカスタマイズされた料理の配膳は、配膳システム及びロボットによる徹底した自動化が行われている。そのおかげで、客室係はお客様へのおもてなしに集中・注力することができる。愛知と岐阜にauショップを24店舗運営する光通信システム(愛知県一宮市)では、全従業員の約2割を占める外国人50数名がショップスタッフとして大活躍している。国籍は中国、韓国、ブラジル、フィリピン、ネパール、モンゴルなど。母国の家族と離れて日本という大好きな国で働くことを選択したスタッフたちは、働くということに対してとてもハングリーであり、日本人スタッフ以上に、一生懸命、おもてなしの心を持って接客し、お客様から支持されている。実際auショップで働く外国人スタッフたちに話を聞いたが、日本で働けることへの喜び、お客様にありがとうと言ってもらえる仕事ができることへの喜びで、目がきらきらと輝いていた。そんな外国人スタッフに刺激を受けた日本人スタッフたちも、負けじと、生き生きと働いている。日本理化学工業(神奈川県川崎市)は、学校などで使われるチョークでは日本でトップシェアを誇る企業だが、全社員の7割以上が知的障がい者、しかもその半数はIQ50以下の重度の障がい者である。同社の工場のラインは、作業工程にヒトを合わせるのではなく、一人ひとりの障がい者の能力に作業工程を合わせている。健常者からすればとても単調な作業を、一日中、真剣に取り組んでいる。彼ら・彼女らは、働くことを通じて、人に必要とされること、「ありがとう」と言ってもらえることが生きがいとなっているのだ。この光景を目の当たりにして、筆者は涙を抑えることができなかった。これらの事例では、ロボット、外国人、障がい者は、働く上での重要なパートナーであるだけでなく、働くことの楽しさ、大切さを教えてくれる、かけがえなのない存在、相互尊敬の対象である。そのような真のダイバーシティを通じて、「人材」は「人財」となるのだ。
■創造的破壊が企業に自らの「再定義」を迫る
デジタルディスラプター(創造的破壊者、以下DD)と呼ばれるスタートアップ企業が、国境を越え、想像を超えるスピード感を持って既存市場に参入し、既存企業を脅かす存在となっている。その背景には、ビジネスを迅速に立ち上げるためのインキュベーター(孵化器)として、グーグル、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトなどの巨大プラットフォーマーの存在がある。彼らは、クラウドはもちろん、業務系アプリ、アプリマーケット、認証・課金・回収代行機能、時にはファンド(資金)まで提供してくれる。しかも、エンドユーザーの手のひらのなかにはすでにスマートフォンやタブレット端末があり、SNSでつながっている。スタートアップ企業に必要なものは、クールなアイデアと、誰にも負けない情熱だけ、ということになる。一方で、これらのDDたちに脅かされた業界や企業は、強烈な危機感を持って、自らのデジタル変革(デジタルトランスフォーメーション、以下DX)に着手しなければならなくなる。その典型例が自動車業界である。カーシェアやライドシェア、自動運転が、自動車業界に変革を迫っている。ライバルは他の自動車メーカーではなく、Uber TechnologiesなどのDD、アップルやグーグルなどのネットジャイアントである。自動車の所有から利用へとシフトする時代において、自動車メーカーはどのような価値を提供する企業になるのか。トヨタ自動車の豊田章男社長は、「モビリティをサービスとして提供するMaaS(Mobility as a Service)事業者へと変革しなければ生き残れない」と語っている。企業(事業)のこのような再定義が、あらゆる局面で進展しつつある。その集合体である、既存の「業界」や「産業」といった枠組みさえメルトダウンし、再定義されることになる。企業の再定義とは、すなわち、自社の強みを先鋭化させることにほかならない。他社にはない自社の強みを再発見し、磨き上げる。自社が提供しているサービスやプロセスを機能に分解し、競争力のある機能だけを残す。そして、外部から調達した、より競争力のある機能と再結合させ、新たなサービスやプロセスを構築する。その結果、他社には提供できない、新たな価値を提供する企業に生まれ変わる。それも一度ではない。必要であれば何度でも生まれ変われる企業になる、ということである。
■デジタル変革には拠って立つ経営理念・哲学が不可欠
つまり、企業のデジタル変革とは、デジタル技術を駆使して、「何度でも自己変革可能」な企業に生まれ変わることである。肉体は変われど、魂は永遠であることとほぼ同義だ。変革には当然、痛みを伴うことになる。痛みを乗り越えるためには、拠って立つ経営理念・経営哲学が欠かせない。自分たちは誰に対してどのような価値を提供するために存在するのか。我々は何をいちばん大切にする会社なのか。そのミッションを実現するため、経営理念や哲学に則り、何を守り、何をすてるのかを判断する。磨くべき事業に経営資源を集中させ、それ以外の事業は縮減させる。社員を再教育し、企業内で再配置する。(図表2)そこで求められる人材は、企業理念・哲学に深く共感するとともに、デジタル技術を正しく理解し、正しく駆使できるデジタル人材である。物心ついたときから身の回りにデジタル機器が存在していた、いわゆる「デジタルネイティブ」たちが、すでに企業の中核を担い始めている。企業のDXの鍵を握るのは、このデジタルネイティブたちである。
■5Gの特徴は「超高速」「高密度大容量」「低遅延高信頼」
このようなタイミングに5G(第5世代移動通信システム)のサービス開始が視野に入ってきた。2019年3月に5G用の周波数が割り当てられ、2019年ラグビー・ワールドカップでのプレ商用サービスを経て、2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックまでに商用化される予定である。5Gの通信能力の特徴として「超高速」「高密度大容量」「低遅延高信頼」があげられる。携帯電話の通信システムは、1Gから4Gへと、ほぼ10年ごとに世代が1つ上がり、そのたびに高速・大容量化が進展してきた。5Gもこの流れの上にあり、下り最大20Gbps(実効速度は数Gbps)という超高速・大容量通信が実現される。この特徴は「eMBB(enhanced Mobile Broadband)」と呼ばれる。これによって、4Kや8Kなどの映像を移動中でも快適に送受信することが可能となる。しかし、5Gの真骨頂は、「URLLC(Ultra‐Reliable and Low Latency Communications)」と「mMTC(massive Machine Type Communications)」にある。URLLCは無線区間の遅延が1ms(ミリ秒)以下という超低遅延性のことであり、自動運転やドローン、ロボットの遠隔操縦などの用途での利用が期待される。mMTCは1km2当たり100万個の無線デバイスを接続し制御できる能力のことであり、多数のセンサーが埋め込まれるスマートファクトリーやスマートシティの実現が期待される。すでに大手携帯電話事業者3社は、企業や地方自治体と、5Gのユースケース創出のためのトライアルを開始している。たとえば、NTTドコモとコマツは建設機械の遠隔操縦を、KDDIとソフトバンクはそれぞれ、トラックの遠隔運転やタンデム走行のトライアルを行っている。例えば、自動車の遠隔操作の場合、危険を回避するために急ブレーキ操作に遅延は許されない。5Gであれば、遅延は無視できるほどに小さい。つまり、5GのeMBB×URLLCによって距離や時間の超越が可能となる。企業の働き方改革やデジタル変革のさらなる加速が期待される。少子高齢化で世界のフロントランナーである日本が、この難局をどのように切り抜けていくのかを、世界が注目している。東京オリンピック・パラリンピック目前での「5G時代」の始まりを契機として、わが国の企業・産業が5Gをはじめとするデジタル技術を駆使して、「何度でも自己変革可能」な企業・産業に生まれ変わることを期待したい。
北俊一
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野村総合研究所コンサルティング事業本部パートナー
1990年早稲田大学大学院理工学研究科修了、同年野村総合研究所入社。以来、一貫してICT関連領域における調査・コンサルティング業務に従事。専門は競争戦略、事業戦略、マーケティング戦略及びICT政策立案支援。現在、総務省情報通信審議会専門委員、「包括的検証に関する特別委員会」「モバイル市場の競争環境に関する研究会」「消費者保護ルールに関するWG」「放送の諸課題に関する検討会」等委員
投稿者: emc2
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2019/1/29 12:09
「<日経>戦後最長、景気刺激策バブル 下降局面の余力乏しく」
株などの資産運用
2019/1/29 11:33 日経 戦後最長、景気刺激策バブル 下降局面の余力乏しく 編集委員藤井彰夫
2012年末からの景気拡大局面が1月で戦後最長を更新したもようだ。高度成長期に比べ成長率も低く実感もわきにくい最長景気だが、最大のリスクはいずれは来る景気下降局面で政策余力が乏しいことだ。
今回の景気回復局面は6年超となるが実質国内総生産(GDP)の平均成長率は1.2%で、1960年代後半の高度成長期のいざなぎ景気の11.5%、80年代後半バブル景気の5.3%にも及ばない。人口減少など制約要因を抱えながら、海外経済の成長に支えられ、過熱感なき低成長が続いているのが特徴だ。これは平均1.6%成長にとどまった前回の02〜08年の景気拡大局面とも共通するが、今回際立つのは金融・財政政策の余力の乏しさだ。景気拡大局面の終盤には財政・金融政策ともに引き締め気味になっているのが、通常の姿だ。いざなぎ景気末期の1970年の政策金利(当時は公定歩合)、バブル景気末期の90年も、いずれも6%台だった。同じく低成長だった前回の景気拡大局面末期の08年2月でも政策金利(無担保コール翌日物)は0.5%あった。ところが今はマイナス0.1%だ。財政も同様だ。国債残高の名目GDP比をみると、70年度はわずか4%弱、90年度は36%、08年度は107%、そして18年度は156%と状況は悪化している。12年末の安倍晋三第2次政権発足とともに始まった「アベノミクス景気」の特徴は、景気拡大のもとでも継続する財政金融面の刺激策だ。異次元の金融緩和に伴う円安と、健全化よりは景気刺激を優先する財政政政策、そして米中など海外経済の好調に支えながらの最長景気といえる。この特徴はそのまま今後のリスクとなる。大量の国債、上場投資信託(ETF)購入、マイナス金利と長期金利のゼロ誘導などあらゆる手段を講じた金融政策は限界にきている。また、19年度予算でも消費増税対策として歳出を拡大した財政には、いざ景気下降局面になった時にどれくらい余力があるだろうか。景気刺激策がすでにバブルのように膨れあがり、次の景気後退局面では打つ手が限られるリスクは大きい。問題はこれは日本に限った話ではないことだ。米経済も今年7月には景気拡大は丸10年となり戦後最長に並ぶ。ところがトランプ政権は大型減税を続け、米財政赤字は急拡大している。米議会予算局(CBO)は28日、財政赤字が今後10年で1.5倍に膨らむという長期財政見通しを発表した。中国も景気減速に対応してインフラ投資や減税など景気対策に動いている。だが過剰債務問題などを抱え、08年のリーマン危機後にとった4兆元にのぼるような大規模な対策をとれる余力があるかどうかは疑問もある。次の世界景気後退期に各国が「刀折れ矢尽きる」となっていないことを祈るばかりだ。
投稿者: emc2
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2019/1/26 14:25
「<日経>延びゆく定年後 高まる資金不安 平成の30年 」
経済・金融・ビジネス
2019/1/26 日経 延びゆく定年後 高まる資金不安 平成の30年
長くなる定年後の人生とじわり減り始めた公的年金。そして超低金利が続く中での運用難。高齢者の間に老後資金の不安が強まったのが平成の30年だった。多くの高齢者は「長く働く」ことに解を求め始めている。年金や葬儀費用など老後のお金をテーマにした小説「老後の資金がありません」。2015年に刊行された同書は現在、約24万部のロングセラーだ。作者の垣谷美雨さんは「いつまで生きるのか、お金はいくらあれば足りるのか。今や誰もが不安を抱えている」と話す。日本ファイナンシャル・プランナーズ協会専務理事で千葉商科大学教授の伊藤宏一さんも「平成の最初のころの中高年からの相談では資金への危機感は薄く、生きがいや健康などへの関心が高かった。今では様変わりだ」と振り返る。70歳以上の高齢者の1世帯当たり金融資産の平均額は過去20年で2千万円前後のまま横ばいだ。しかし、長寿によって老後資金が底をつく「長生きリスク」は急速に高まった。90歳まで生きる人の割合は1990年当時、男性12%、女性26%だったが、2017年にはそれぞれ26%、50%まで上昇。女性の7%は100歳まで生きる。老後が長くなることを考えれば1年当たりの取り崩せる金融資産は減っている。
年金財政の健全化のため、01年度から年金の支給開始年齢の60歳から65歳への段階的な引き上げが始まった。それだけでなく、すでにもらい始めている人の年金収入も、年金額に影響を与える賃金や物価が長く低迷したことなどから、じわり細ってきた。厚生年金の平均月額(基礎年金など1階部分を含む)はピークの01年から17年にかけて14%減っている。「手取りの減少はもっと大きい」と指摘するのは会員約50万人をかかえる全国年金受給者団体連合会会長の若杉史夫さん。00年代に入り老年者控除など様々な税控除が縮小される一方、年金から天引きされる介護保険料、健康保険料は増え続ける。【関連記事】19年度年金額 0.1%増に抑制
夫65歳以上、妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯の00年と17年の毎月の家計を比べると、年金など収入が減る中で税や社会保険料の負担が増し、毎月の赤字額は約1万円から約5万4500円に大きくふくらんだ。90年当時、預貯金や債券の利回りは年6〜7%前後あり10年強預ければ元本が倍になったが、99年には日銀のゼロ金利導入で預貯金金利もほぼゼロに。十分な老後資金を蓄えるには、株式や投資信託での長期投資も重要な選択肢となっている。「自助努力で老後に備えなくてはならない時代が来る。その支えになりたい」。独立系投信運用会社コモンズ投信の伊井哲朗社長は07年の創業当時の思いを振り返る。バブル崩壊からついに金融危機に至った97年、山一証券が経営破綻。同社に勤めていた伊井さんは2千万円相当の山一株が紙くずになる経験をした。会社に抱えられる生き方の危なさを知った。
日本の高齢世帯が老後不安を抱えて消費を抑えていた間、株や投信の保有比率の高い米国の高齢世帯は、金融資産を3倍に増やした。コモンズ投信の顧客の98%は18年3月末時点で投資利益を出している。これは顧客の損益を開示した金融機関で断トツ。伊井さんは「投資家には山一出身の高齢者もいる。老後を少しでも支えられているのでは」と話す。「資格より明るさが大事です」。1月半ば、博多駅近くにある「70歳現役応援センター」では高齢者の就職セミナーが開かれていた。同センターは高齢者中心の就職支援施設として福岡県が12年に設立。17年度の相談件数は約1万9千件と12年度の4倍近くに増えた。年間1500人近くが就職する成功ぶりに他の自治体からの見学も相次ぐ。センターを訪れた67歳の男性は「年金では足りない。働いて少しでも足しにしたい」と話す。平成の初めにまだ6割だった60歳定年は98年に義務化され、06年には65歳までの継続雇用を原則的に義務づける法律が施行された。ここ数年は嘱託などでの再雇用ではなく、定年を65歳に延ばす大企業も増え始めた。国家公務員も65歳定年に移行する。08年、戦後初めてできた独立系生命保険会社ライフネット生命保険には定年がない。当時60歳で起業した出口治明さん(現立命館アジア太平洋大学学長)は「僕が『定年なし』の就業規則を書いた。年齢で能力を判断するなどバカげた話。働き続ければ病気になりにくいし老後資金不安もなくなる」と力説する。千葉商科大の伊藤さんは「中・高齢期に学び直すなどして、自分の希望や適性を反映できる仕事に就けるよう準備することが大切になっている」と指摘している。
■視点
企業年金も運用次第 老後資金づくり促せ
公的年金に上乗せされる企業年金も大きく変化した。かつては将来の年金額が決まっている確定給付型(DB)が主力だった。年金資産が不足すれば会社が穴埋めしなければならないため、2000年ごろから給付利率の引き下げや、終身年金から有期年金への転換が進んだ。給付額が細ったとはいえ有期年金が出ている間は家計収入は比較的潤沢。使いすぎも起きる。ファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵さんは「例えば75歳で有期年金が終わったときあまり貯金が残っていない人もいる」と警告する。最大の変化は01年に導入された確定拠出年金(DC)だ。会社が出す掛け金を、個人が預貯金や投資信託などで運用し、結果次第で年金額が増減する。会社は運用リスクを負わない。厚生労働省によると企業年金のある企業の半数以上がDCを導入している。DCは従業員にも利点がある。運用時は非課税で、転職しても年金のまま持ち運びやすい。DCの掛け金は個人の資産として管理されるため、10年の日本航空の経営破綻時にDBが大幅削減されたようなことは起きない。パナソニックは13年にDBの全額をDCに切り替えた。ソニーも今年9月に国内社員約3万人がDCに移行予定。財務リスク軽減だけでなく、「同じ企業に一生いるとは限らない時代。DCは個人の選択肢を増やし自立意識を高める」(ソニー)との狙いもある。問題は個人がDCを有効活用できていないことだ。DC資産の過半は預貯金などに眠り、通算利回りが「年1%未満」の人が最多。「初期設定商品(デフォルト)」を投資信託とし、DC経由で半ば自動的に投信が買われる米国とは対照的だ。米国高齢者の金融資産の急増の多くはDCでもたらされた。投資教育だけで自主的な投資を促すのは限界がある。日本でも米国のような誘導策が広がらないと、DCによる老後資金づくりがいつまでも進まない恐れがある。(田村正之)【関連記事】ソニー、確定拠出年金に完全移行 エレキ事業3万人
■キーワード
●マクロ経済スライド
年金の給付額は物価と賃金の変化に合わせて毎年改定する。さらに財政健全化のため、現役世代の減少などを反映した調整率で毎年自動的に給付を抑える仕組みが04年に導入された。これがマクロ経済スライドだ。これまで実施されたのは前回の消費税率引き上げで物価が大きく上昇した15年度の1回だけ。しかし最近の物価・賃金の上昇を反映し、19年度は2度目の発動が決まった。本来なら0.6%上がるはずだった給付が、0.1%増に抑えられる。今後も物価上昇基調が続くなら、年金額は物価上昇より抑えられ続けることになる。現役世代の平均的な手取りに占める年金額の比率(所得代替率)は今は6割強だが、将来は5割程度に低下する見通し。一生もらい続けられる公的年金が長寿化の最大の支えであり続けることは今後も変わらない。ただし老後資金づくりの自助努力は一層重要になる。
●年金の繰り下げ受給
公的年金の受給開始年齢は原則65歳だが、60歳からに繰り上げたり、70歳からに繰り下げることもできる。繰り上げると年金は1カ月当たり0.5%減、繰り下げると同0.7%増。70歳まで繰り下げれば42%増だ。長寿時代に安心なのは増額された年金が一生続く繰り下げ。70歳まで繰り下げる場合、81歳まで生きればもらわなかった5年分を増額で挽回できメリットが出る計算だ。税や社会保険料を引いた手取りベースでは挽回が数年遅れることが多いが、老後が長い女性には特に重要性が高い。せっかくの有利な仕組みだが、十分知られていない。繰り下げを選ぶのは新たに基礎年金の受給資格を得た人の1%程度という状況が続いていた。しかし16年度には3%弱まで上昇。まだ水準は低いが、繰り下げなどで公的年金をフル活用しようとする人が増えている。政府は70歳超への繰り下げも可能にする方向で、数年以内に実現しそうだ。
●高年齢者雇用安定法
2006年施行の改正法では企業に対し、定年の引き上げか廃止、または定年を迎えた社員を再雇用する継続雇用制度で原則65歳まで働けるようにすることを義務づけた。ただ労使協定で対象の社員を限定することが可能だった。13年施行の改正法では対象を限定できる規定を廃止し、希望者全員が対象になった。厚生年金の男性の支給開始年齢は25年度に全員65歳になる。企業が雇用を延長しなければならない年齢も段階的に引き上げられ、25年度には65歳までの雇用確保が完全に義務付けられる。18年の厚生労働省の調査によると、企業の対応策で最も多いのは人件費を抑制できる再雇用などの「継続雇用制度の導入」で全体の79%。一方、正社員の立場を継続する「定年の引き上げ」は18%、「定年制の廃止」は3%にとどまる。
●金融ジェロントロジー
ジェロントロジーは老年学という意味。長寿が社会や経済に与える影響を、医学や経済学、心理学などから研究する学問だ。米国で1990年前後に盛んになった金融ジェロントロジーは、例えば加齢による衰えが資産運用にどんな影響を与えるのか、などが研究テーマとなる。日本では2017年に、金融庁が公表した金融行政方針に盛り込まれ、注目が集まり始めた。日本では25年に認知症患者が約700万人まで増える見通しで、36年には人口の3人に1人が65歳以上になる。身体能力や認知能力が衰えると、資産運用や資産承継に支障をきたしかねない。健康寿命とともに、資産寿命も延ばすことが、大きな課題になる。野村ホールディングスは慶応義塾大学と組み、高齢者の資産管理について共同研究を始めた。17年には高齢者向けの専門組織を新設している。
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2019/1/25 17:57
「<ブルームバーグ>アジアのヘッジファンド、受難の2018年を締めくくった最悪の月」
株などの資産運用
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2019/1/22 23:01
「<日経>マンション契約率27年ぶり低水準 減速鮮明に 」
経済・金融・ビジネス
2019/1/22 日経 マンション契約率27年ぶり低水準 減速鮮明に
新築マンションの市場が曲がり角にさしかかっている。不動産経済研究所(東京・新宿)が22日にまとめた首都圏の2018年の統計では、販売を始めた月の戸数のうちどれだけ契約に至ったかを示す「初月契約率」が平均で62.1%で27年ぶりの低水準となった。人件費上昇などで価格は下落しそうもなく、共働き世帯の需要が底堅い駅前を除けば市場の減速が鮮明になっている。三菱地所レジデンスの神奈川県厚木市の物件は駅から徒歩1分で、問い合わせが1000件を超えた。(画像)
■バブル崩壊後に次ぐ低水準
同研究所によると、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県の18年の初月契約率はリーマン危機があった08年(62.7%)を下回り、バブル経済が崩壊した1991年(58.3%)に次ぐ低水準となった。好不調の境目を示すとされる70%を3年連続で下回るのも約10年ぶりだ。発売戸数は17年より3.4%多い3万7132戸と2年連続で前年を上回った。だが、年8万〜9万戸台で推移した00年代前半に比べると半分以下。割安感で人気が高まった中古マンションの成約戸数を下回る状態が16年から続いている。マンション市場は好不調の波を繰り返してきた。バブル期の1990年に価格が過去最高の6123万円を記録したが、それでも3万9千戸強の発売物件の初月契約率は7割を超えた。バブル崩壊で戸数は2万戸台、契約率も5割台に沈んだが、郊外や都心湾岸部への供給増などで盛り返した。しかし今回は回復シナリオが描けるかは不透明だ。同研究所は19年の販売は18年を下回ると見込む。マンション市場に構造変化が起きているためだ。1つは価格の高止まりだ。平均価格は14年に5千万円を突破し、住宅ローン金利は低水準が続くものの一般の給与所得者には手が届きにくい。日本不動産研究所は25年ごろも価格は微減にとどまるとみる。原因である資材や労務費も高騰傾向は続き、建設現場の週休2日制の広がりで工期も延びる方向だ。訪日客を取り込むホテルなどとの競争で用地の取得コストもかさむ。2つ目は消費者の変化だ。共働きや車を持たない世帯が増え、交通や買い物の利便性が高い駅前に人気が集中している。三井不動産の菰田正信社長は「選別眼が厳しくなり、少しでも希望の条件を外れると買わなくなった」と消費者の慎重さを指摘する。
■新宿まで1時間でも「億ション」
足元で活発なのが東京近郊の駅前だ。都心に比べて再開発の余地があり、割安で顧客のニーズにも合う駅前一等地を奪い合う「局地戦」が進む。三菱地所レジデンスは神奈川県厚木市に地上22階建ての「ザ・パークハウス本厚木タワー」(163戸)を開発し、21年に引き渡す。本厚木駅まで徒歩1分の再開発案件で、商業施設も入る。新宿駅まで1時間前後だが、平均価格は5500万円で上層階は1億円以上。1月のモデルルームオープン前から問い合わせは1千件を超える。40代の男性会社員は「利便性の高さが魅力」と関心を寄せる。セカンドハウスや投資用、相続税対策として求める地元富裕層も目立つ。住友不動産は埼玉県所沢市の所沢駅前で29階建てを開発。東京建物などはさいたま市のさいたま新都心駅から5分の場所に1400戸を分譲する。長谷工総合研究所によると、駅から徒歩5分以内の物件は18年(上期)に全体の45%を占めた。供給ピークの00年には3割しかなかったが、じわりと増えている。不動産助言会社トータルブレイン(東京・港)の久光龍彦社長は「5分を超えると苦戦する物件が増える」と語る。マンション各社は売れる立地に絞り、完成前の完売に固執せずに販売時期を細かく分け、時間をかけて着実に売る戦略に転換している。トータルブレインによると、完売までの平均日数は06年ごろまでは半年程度だったが、足元では1年半前後という。資金回収を急ぐ新興・中堅デベロッパーの多くがリーマン危機で消え、今は体力に余裕のある大手の物件の比率が高い。「販売を焦ってむやみに値下げせず、じっくり売る傾向が強まった」(不動産経済研究所の松田忠司主任研究員)。
■五輪後の大量供給が不透明要因に
市場の先行きには不透明さが残る。19年秋に予定される消費増税では消費マインドを冷やす恐れがあり、駆け込み購入と反動減を防ぐために政府が住宅ローン減税の拡充などの支援策を用意する。いつ買うのが得かを見定めている消費者が多い。もう1つは東京五輪・パラリンピック後の大量供給だ。選手村を大会後に改修する巨大プロジェクトでは、三井不動産レジデンシャルなど大手が分譲マンションだけで約4千戸を供給する。駅からやや遠いが、都の再開発事業で大量供給するため、相場より割安になる見込みだ。「これだけの巨大物件の発売を待って様子見が増えれば首都圏の市場が変調をきたす」(トータルブレインの杉原禎之氏)との見方がある。値崩れを起こす懸念もあるため、数年かけて少しずつ販売する方針だ。間口を広げて日当たりをよくしたり、保育園を併設したりなど付加価値を高める動きも広がっているが、市場が縮小するなかで消費者の心をつかみ続けるのは容易ではない。
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2019/1/21 20:52
「<日経>持続可能な都市ベスト40 環境配慮や街づくりで先進性 」
経済・金融・ビジネス
2019/1/21 日経 持続可能な都市ベスト40 環境配慮や街づくりで先進性
国連で2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は気候変動対策やジェンダー平等の実現など17の国際目標からなる。日本政府は推進本部を設け、地域づくりなどで各自治体にも取り組みを促す。全国815市区への調査から都市のSDGs先進度を評価したところ、京都市が1位、北九州市が2位という結果になった。(「日経グローカル」355号に詳報)(画像)
■京都市は中心部の四条通で歩道を広げて車道を2車線に半減。車の交通量が4割減った
京都市は地球温暖化対策やゴミの減量に早くから取り組んできた。インバウンド(訪日外国人)など観光客の増加による交通渋滞を受け「歩くまち・京都」を標榜。人と公共交通優先の社会にカジを切ったことも、温暖化対策につながった。省エネ意識の浸透や発光ダイオード(LED)照明への切り替え補助などで市の総エネルギー消費量を1990年から2016年にかけて22%削減。温暖化ガス排出量は新エネルギーの導入などで4%減らした。電気自動車(EV)の充電設備は17年度末時点で市内に約300カ所ある。(画像)中心部の四条通は歩道の幅を3.5メートルから6.5メートルに広げ、車道を2車線に半減した。自動車交通量は10年前に比べて4割減ったという。周辺の道路も速度規制を厳しくするなどしたため交通量が軒並み減った。中心部への車の流入を減らすため、郊外の駅近くに駐車場を整備し「パークアンドライド」も進める。門川大作市長は「(通勤・通学の交通手段で)自動車分担率が2割、観光客のマイカー利用率に至っては8割近く減少した」と強調する。
■2位の北九州市は「地域エネルギー拠点化の推進」や「環境国際協力・ビジネスの推進」をうたい、環境技術の輸出に力を入れる。官民で設立した北九州市海外水ビジネス推進協議会が中心となり18年8月にはベトナム・ハイフォンの浄水場整備工事を20億円強で受注した。中国・大連では17年、市内企業が土壌汚染浄化プロジェクトを約2億円で獲得している。18年11月に産学官民が地域の課題解決で協力するため市の主導で「北九州SDGsクラブ」を立ち上げた。すでに120の団体・個人が加入し、19年2月に第1回の交流会を開く。
■3位は宇都宮市。22年3月の開業に向けLRT(次世代型路面電車)を着工し、「ネットワーク型コンパクトシティ」を目指す。市民の車保有率が多く、「CO2(二酸化炭素)排出量を減らすには公共交通の分担率を高める必要がある」(総合政策部政策審議室)というのが出発点だ。同市はアジア最高峰のロードレース、ジャパンカップが開かれる「自転車のまち」でもある。自転車レーンの整備を進め、自転車道と合わせると40.7キロにのぼる。自治体が人口減少に対応し持続可能性(サステナビリティー)を高めるには、「環境」「社会」「経済」のバランスを取りながら発展につなげる必要がある。(画像)
■調査で環境では環境基本計画の策定・改定状況、土壌・水質・大気の測定状況、再生可能エネルギーなどを導入する際の助成制度の有無などを聞いた。社会では障害者雇用率、貧困対策を含む子育て支援の実施事業、公共交通の利便性向上策などを尋ねた。経済は所得や財政に関する公表データで評価した。再生エネ普及へ住民が機器などを購入する際に助成する自治体は多い。19年度までに計画しているところを含め、太陽光発電では57%の市区が助成制度を持つ。千葉県佐倉市や兵庫県西宮市など45市では、家庭用燃料電池(エネファーム)の導入に助成している。18年6月時点の障害者雇用率は大分県津久見市など5市が4%を超えていた。半面、18年4月に引き上げられた法定雇用率(2.5%)の達成は53%にとどまった。28%はそれ以前の基準である2.3%も下回った。「多様性と包摂性のある社会」というSDGsの理念に沿い、都市格を高めるうえで課題は山積している。
■地域行政と高い親和性
SDGsは持続可能な発展のために国際社会全体が2030年までに達成すべき目標として定められた。地球全体で開発目標を考えるものであり、先進国も途上国も当事者として活動が求められる。SDGsが掲げる17の目標は「水」「資源」などの環境分野、「教育」「健康」「まちづくり」などの社会分野、「経済成長」「不平等の是正」などの経済分野という3分野に大きく分かれる。対象は幅広いが、個々の目標は自治体が直面する課題と重なり、地域行政と親和性が高い。経済協力開発機構(OECD)も国レベルに加えて、都市や地域レベルでの取り組みが必要と指摘しており、SDGsの推進役として自治体への注目度が高まっている。政府の自治体SDGs推進評価・調査検討会の村上周三座長(建築環境・省エネルギー機構理事長)は「SDGsは自治体にとって課題発掘のツール」と指摘する。17ある目標から重点目標を定め、実現には何が必要で、どんな壁があるか把握につながるためだ。グローバルな動きや自治体外の視点を踏まえれば、より客観的に施策を点検できると村上氏は付け加える。自治体のSDGs関連施策で最も多いのは「まちづくり」。兵庫県豊岡市は慶応大学の研究者と組んで人口減が続く地区をどうすべきか研究している。茨城県鹿嶋市は高齢者らの外出を後押しするため、18年7月から自宅と指定先との間で利用できるデマンド型乗り合いタクシーの運営を始めた。各自治体は人口や高齢化にどう向き合うか模索を続ける。(磯道真、可部繁三郎)
▼SDGs(SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS) 2015年9月の国連サミットで採択された。先進国・途上国を問わず30年を年限に達成すべき国際目標として、貧困や教育、エネルギー、都市、気候変動など17項目を掲げ、169のターゲットでそれを具体化する。日本政府は16年5月に首相を本部長としてSDGs推進本部を設置。産学官や市民団体との連携により、日本のSDGsモデルの国際発信を目指す。アクションプランでは技術革新による未来社会の実現、地方創生・循環型社会の推進、次世代人材の育成や女性活躍の強化を柱としている。
▼調査の概要 全国815市区を対象に関連指標に関して日経リサーチを通じてインターネット上で実施。2018年10〜11月に658市区から回答を得た(回答率は80.7%)。その結果と国の公表データを合わせた約70の指標を社会・環境・経済の3側面から得点化し、ランキングとした。
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2019/1/19 18:46
「<日経>REIT、新たな逃避先に 海外勢が価格安定を評価」
株などの資産運用
2019/1/18 21:34 日経
REIT、新たな逃避先に 海外勢が価格安定を評価
国内の不動産投資信託(REIT)がにわかに脚光を浴びている。REIT相場全体の値動きを示す東証REIT指数は18日時点で2017年末より9%高い。同期間に9%下落した日経平均株価とは対照的だ。背景にあるのが海外マネーの流入。世界の金融市場が不安定になる中、値動きの安定した日本のREITが新たな資金逃避先として存在感を高めている。(画像)
「日本ビルファンド投資法人は割高だけど絶対に外せない」。ある国内運用会社でREITファンドを運用する担当者はいう。REIT最大手のビルファンドの価格は17年末から28%上昇。分配金利回りは2.9%。REIT市場の平均(4.1%)を下回り、高利回りに注目して買う投資家が多い中では投資妙味が薄いようにもみえる。それでも保有し続けるのは「海外マネーが真っ先に流入する銘柄」(同担当者)とみているからだ。
足元の国内REIT相場の底堅さは際立つ。日経平均が月間で10%下落した18年12月も東証REIT指数は2%安にとどまった。背景にあるのが海外投資家の買いだ。東証が16日に発表したREITの投資部門別売買状況によると、昨年12月に海外勢は150億円を買い越していた。昨年1年間の買越額は3057億円に達し、07年以来11年ぶりの大きさだった。みずほ証券の大畠陽介シニアアナリストは「2種類の海外マネーが流入してきた」と指摘する。1つめは世界のREITで運用する投資家、もう1つは株式の投資家だ。世界のREIT市場を見渡すと、最大の米国には金利上昇懸念がつきまとう。欧州は英国の欧州連合(EU)離脱問題など政治リスクが大きい。一方、日本の不動産市況は堅調だ。三鬼商事によると東京都心5区のオフィス空室率は昨年12月に1.88%と月次データがある02年1月以来で最低となった。平均賃料も60カ月連続で上昇している。REITの保有物件も賃料が伸び、分配金の増加につながるとの期待が持ちやすい。日本は金利は低位で安定し、政治的な混乱もない。こうした状況を映し、17年末に比べ東証REIT指数の上昇率は米国や欧州、オーストラリアを上回る。
各国のREIT市場の状況をみて有望な国に投資資金を振り向ける動きはこれまでもあった。だが過去との大きな違いは、年金基金やヘッジファンドなど「本来は株式に投資する投資家がREITを株式の代替投資先に選び始めた」(SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリスト)点だ。株式投資家の目にはREITの値動きは株式より安定しているうえ「為替市場の影響も受けづらい」(スイス運用大手ピクテ・アセット・マネジメントのエリック・ロセ氏)と映る。さらに国内REITの時価総額は約13兆円と東証1部の不動産業に匹敵する規模に拡大。「株式運用のグローバル投資家がまとまった資金を投じられる対象と認識されるようになった」(鳥井氏)という。
指数経由の資金も流入している。象徴的なのが値動きの小さい銘柄で構成する「最小分散指数」だ。たとえば北米を除く世界の株式相場の値動きを示す株価指標「MSCI・EAFE」の最小分散指数をみると、国内REITの構成比率は昨年末時点で約5.7%と1年前から3ポイント上昇した。足元はひとまず落ち着きを取り戻した世界の金融市場。だが世界景気の減速懸念や米中貿易摩擦などのリスクが消えたわけではない。不透明感が払拭できない間は数少ない買える資産として国内REITへの投資家の注目が続く可能性が高い。(松本裕子)
2019/1/18 日経マネー マネー研究所 REIT投資の勘所
2019年のREIT市場、上値が重い展開に?
株式市場の乱高下が続く中でも、2018年11月のJ-REITは上昇基調だった。東証REIT指数は18年8月から1750ポイントを挟む展開が続いていたが、11月には上昇に転じ、下旬には17年3月以来となる1800ポイントを上回った。J-REIT価格は17年1月以降、投資信託の大幅な売り越しを主要因として下落していたが、価格面ではその影響が出る前の状態に戻った格好だ。半面、19年のJ-REIT価格は上値が重い展開になるとみている。具体的には東証REIT指数で1750ポイントから1650ポイントを中心としたレンジでの動きとなりそうだ。
18年のJ-REIT価格の上昇は、海外投資家の大幅な買い越しが牽引してきた。これに変化があると、最大の下落要因となりそうだ。18年10月時点までの海外投資家の月間平均買い越し額は、リーマン・ショック前の06年(227億円)と07年(327億円)に次ぐ203億円になっている。その他の投資部門を見ると、13年から15年の価格上昇を牽引してきた金融機関や投信は、18年には逆に過去最大の売り越し規模となっている。金融機関のJ-REIT投資は、これまでの個別銘柄からJ-REITのETF(上場投資信託)へ移行しているといわれている。しかし、大幅な買い越しが続く証券会社の自己取引勘定に含まれていると考えられるため、その動向は判然としない。
投信は18年9月に17年3月以来の買い越しとなったが、10月にはまた売り越しに転じるなど買い越し基調に転じるという明確な動きにはまだなっていない。このような点から考えると、海外投資家の動向が変化した場合は下落しやすい環境にあると考えられる。18年11月の価格動向を見ると、時価総額の大きい銘柄の価格上昇傾向が強くなっている。時価総額が市場で最大の日本ビルファンド投資法人(以下、NBF)の価格推移を見るとそれがよく分かる。
NBFの価格は18年10月まで65万円程度で推移していたが、11月下旬には16年4月以来となる70万円台に達した。利回り面で見れば17年4月頃と同等の2.9%程度となり、16年4月時点の24%程度と比較すれば過熱感はない。ただこれは冒頭に記載した通り投信の売り越しによる影響が及ぶ前の水準であり、割安感にも乏しい。時価総額の大きい銘柄の利回りが低いため、時価総額をベースに算出される東証REIT指数が19年も18年と同様に大幅な上昇となることは考えられない。為替動向に左右されない投資商品として、J-REIT市場は、投資資金の「退避場所」としての役割を果たしている。ただ、投資家のリスクオフの動きが鮮明になった場合には、下落する可能性を視野に入れておく必要がありそうだ。
関大介 不動産証券化コンサルティング及び情報提供を行うアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(
http://www.japan-reit.com/
)を運営する。
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2019/1/19 18:43
「<日経>男性、500万年後に消滅? 」
科学・からだ・紀行
2019/1/19 6:30 日経 男性、500万年後に消滅? 将来占うトゲネズミ コラム(テクノロジー) 科学&新技術
ヒトなど哺乳類には性を決める染色体がある。このうちオスを決めるY染色体は退化を続け、500万年後に消滅する説も唱えられている。そうなると子孫を残せなくなるのだろうか。奄美大島などにすむトゲネズミは、先行きを展望するモデルになるという。Y染色体を失ったが、オスが生まれているからだ。研究者はその謎を解き明かそうとしている。(画像)
トゲネズミは日本固有の種だ。オキナワ、アマミ、トクノシマの3種類が生息している。いずれも土地開発や天敵によって数が激減し、絶滅の恐れが高い。北海道大学の黒岩麻里教授は「単に希少なだけでなく、人類の将来を占う貴重なネズミでもある」と解説する。
哺乳類のオスとメスはXとYという2本の性染色体の組み合わせで決まる。Xが2本のXX型はメスに、XとYが1本ずつのXY型はオスになるのが一般的だ。特にY染色体には精巣を作る引き金を引く「sry遺伝子」があり、オスを決める代表的な遺伝子と考えられている。ところがアマミとトクノシマのトゲネズミは、オスもメスもX染色体を1本しかもたない。sry遺伝子がなくなっているにもかかわらず、オスが生まれる。離島で独自の進化を遂げた、不思議なネズミだ。黒岩教授は、その謎を解こうと挑んでいる。アマミトゲネズミの尻尾から採取した細胞を使い、オスとメスのゲノム(全遺伝情報)を解読した。オスだけにしかない遺伝子配列を見つけだし、その中にオスを決める遺伝子がないか、確かめる計画だ。トゲネズミは天然記念物に指定されこの実験に使えないため、代わりにハツカネズミを使う予定だ。
まずアマミトゲネズミのオスだけにしかない配列をハツカネズミの受精卵に入れて子どもをうませる。生まれたネズミの中からアマミトゲネズミの遺伝子をもつオスを抜き出し、メスのハツカネズミと交配させる。その子どもの中に、性染色体はXX型だがオスになっている個体がいれば、見つけた配列の中に、オスを決める遺伝子が含まれている可能性が高い。黒岩教授は「常染色体の一部が、sry遺伝子と同じ役割を果たす性決定の遺伝子に置き換わった」とみている。今後、有力な遺伝子が見つかったとしても、最終的にはアマミトゲネズミでこの遺伝子を働かないように操作してメスしか生まれないことを確かめる必要がある。そのためには、絶滅の恐れがなくなるほどアマミトゲネズミが十分に繁殖する状況を待たなければいけない。
アマミトゲネズミの人工繁殖は、環境省の事業で宮崎市フェニックス自然動物園が2018年秋に初めて成功した。見込みはありそうだ。一方、同じ仲間のオキナワトゲネズミはXとYの性染色体がある。ただし常染色体とくっついて巨大化している。なぜ違う進化を遂げたのかは、大きな謎になっている。性染色体の危機に直面したときの参考例は、ほかの生物にもある。哺乳類ではなく両生類のカエルだ。広島大学の三浦郁夫准教授らはスイスや米国などの研究者と共同で、28種のアカガエルの性染色体のゲノムを解析し、進化に伴って変化する様子を調べた。性染色体は常染色体が変化してできる。アカガエルは26本(13対)の常染色体をもち、ある染色体から別の染色体へと性染色体を頻繁に取り換えていることが分かった。その回数は5500万年の間に13回に及んだ。こうした取り換えは哺乳類では1億7000万年、鳥類では1億年の間、起きていない。
三浦准教授は「メスが増え過ぎるなど種の存続にとって危機的な状況に陥ると、こうした取り換えでオスとメスの割合を一定に保とうとするのではないか」と推測する。人間ではこれまで性染色体の取り換えは起きていないが、仮に将来、Y染色体を失うような危機を迎えた場合「常染色体が性染色体へと進化する可能性は十分にある」と予想する。Y染色体の消滅説は、オーストラリア国立大学の教授だったジェニファー・グレーブズ博士が2002年に提唱した。英科学誌ネイチャーに「Y染色体は500万年後にはなくなる」とする論文を掲載し世界を驚かせた。ただ反対論もあり、学界でいまも論争は続いている。仮に、Y染色体がなくなるとしても、これまでの研究から同時にオスがいなくなるとまでは断言できない。人類についても、性染色体になんらかの変化が起きて生き延びるすべを獲得する可能性は残されている。(科学技術部 西山彰彦)
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2019/1/18 18:05
「<日経>ソフトバンクG、揺らぐ個人との「蜜月」」
株などの資産運用
2019/1/18 15:03 日経 ソフトバンクG、揺らぐ個人との「蜜月」 証券部井川遼
ソフトバンクグループ(SBG)の国内通信子会社ソフトバンク(SB)が株式を上場して19日で1カ月。世間の注目を集めた過去最大の上場案件だが、上場後の株価はさえない。約2兆円の株式を購入した延べ約90万人の個人投資家は含み損を抱える。SBGは成長資金を個人マネーに頼ってきたが、SB上場のつまずきで個人との「蜜月」が揺らぎ始めた。
SBは昨年12月19日に東京証券取引所に上場した。親会社のSBGは、保有するSB株の4割弱を約2兆6千億円で投資家に売り出した。その大半を引き受けたのが個人だった。1987年のNTT、2015年の日本郵政グループ――。証券史に残る大型上場は、初値が公開価格を上回る経験則があった。だがSB株は初値が公開価格(1500円)に比べ2%安。上場当日の終値は1282円と15%下回った。その後はやや持ち直したが、それでも1月18日の終値は1429円。公開価格を一度も上回っていない。この期間にライバルのNTTドコモやKDDIが1〜2%上昇しているのに比べ見劣りする。SB株を購入した越谷洋次さん(38)は「短期の利益確定を狙っていたが、もくろみが外れた」と話す。主幹事証券の幹部は「株価は中長期で見てほしいとは言っているが、個人の投資心理を冷え込ませた点には責任を感じている」と打ち明ける。
SBGに配慮しすぎるがあまり、「公開価格を高くしすぎた」(国内運用会社)。株式市場ではこんな見方が定着している。予想PER(株価収益率)はSB株が約16倍。KDDI(10倍)やドコモ(13倍)より今なお高い。SB株の予想配当利回りは5.24%まで上がったが、含み損を抱える個人の悩みは深い。
SB上場の誤算は今後の成長戦略に影を落とす。SBGの歴史をひもとくと、個人が資金調達の要になってきたからだ。同社が初めて個人向け社債を発行したのは、マイクロソフトとの提携などがあった95年。その後も携帯事業の参入や大型M&A(合併・買収)など「攻めの経営」を個人が支えてきた。米通信大手スプリントを買収した13年にも個人から7000億円を調達した。高利回りのSBG債は、低金利に悩む個人にとって魅力的な投資先であり続けてきた。アイ・エヌ情報センターによるとSBGの個人向け社債の残高は18年末時点で3兆2300億円。1社で、日本企業全体の半分近くを占める。通信を軸とした成長とともに、SBGの株価は過去10年で約6倍になった。この期間の上昇率が3倍弱の日経平均をしのぐ。個人には成功体験が積み上がり、巨額の資金を調達したいSBGと「ウィンウィン」の関係が構築されてきた。だがSB上場で両者の蜜月にひびが入りかねない。埼玉県在住の竹田清さん(66)は「SBG債を購入してきた経緯からSB株にも投資をした」。SB株の低迷は「自己責任なのはわかっているが、裏切られたという思いはある。今後の投資には慎重にならざるを得ない」と話す。
人工知能(AI)を軸とした投資事業への傾倒を強めるSBGの孫正義会長兼社長。その壮大なビジョンの実現には、サウジアラビア政府と設立した10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」でも十分ではない。SB株の追加売り出しなど、いくつもの選択肢の中から機動的に資金を得てSBGの成長につなげる。SB上場で個人に苦い記憶が残れば、こんな将来のシナリオにも制約が加わる。SBを率いる宮内謙社長は「株価を真摯に受け止め、新たな創業だという気持ちでやっていく」と語る。個人の信頼を取り戻すには、今後の株価で報いていくしかない。
2019年1月18日 日経ビジネス
低空飛行のソフトバンク株 「成長への疑い」晴れぬまま
ソフトバンク社員が打ち明ける。「財務担当をはじめ経営幹部が相当ピリピリしている。とても社内で株価の話ができる雰囲気じゃない」
ソフトバンクグループの通信子会社ソフトバンクが東京証券取引所1部に新規上場(IPO)して、19日で1カ月が経つ。18日の終値は1429円で、公開価格(1500円)はおろか、上場当日を除いて初値(1463円)さえこの1カ月で1度も超えることができなかった。経営幹部のピリピリの理由は「世界情勢を含め、相場全体が弱含んだままだった」という外部要因だけではないだろう。「成長への疑わしさ」が上場初日から意識されていただけに、これに対する処方箋が見当たらなかった。こうみるべきだ。
今後の展開として「やれやれ売り」を予測する向きもある。損失が多少回復してきたところで売るという投資家の動きだ。今月末に控える東証株価指数(TOPIX)への組み入れという好材料をしのぐ動きになる可能性が高い。肝心の本業はどうだろう。例えば「成長への疑わしさ」の源泉であり、株安の一因となってきた携帯電話料金の値下げ。これについては17日に動きがあった。総務省の有識者会議が、回線の契約を前提に端末代金を安くする「セット販売」を法律で禁止するよう求める提言を発表したのだ。ソフトバンクも料金プランの見直しを迫られることは必至。投資家の視点が「成長への確信」に変わる日はまだ遠そうだ。
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2019/1/18 10:11
「<東洋経済>人手不足は「労働条件が酷い」会社の泣き言だ 移民受け入れの前に「賃上げ」を断行せよ」
経済・金融・ビジネス
2019/01/18 07:20 東洋経済 人手不足は「労働条件が酷い」会社の泣き言だ 移民受け入れの前に「賃上げ」を断行せよ
人手不足」を嘆く経営者は「甘えている」というアトキンソン氏。どういうことなのでしょうか。オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。退職後も日本経済の研究を続け、『新・観光立国論』『新・生産性立国論』など、日本を救う数々の提言を行ってきた彼が、ついにたどり着いた日本の生存戦略をまとめた『日本人の勝算』が刊行された。人口減少と高齢化という未曾有の危機を前に、日本人はどう戦えばいいのか。本連載では、アトキンソン氏の分析を紹介していく。
■賃上げ圧力は高まりつつある
前回の「『永遠の賃上げ』が最強の経済政策である理由」では、日本経済復活のために賃上げがいかに重要かを説明しました。前回のコメント欄を見ていると、生産性についてはこの数年、かなり理解が進んでいるものの、生産性向上の目的は「賃上げ」だということに気づいていない方が多い印象を受けます。これまで日本が約30年にわたって苦しんできたデフレの主因は、規制緩和が悪用され、労働分配率が低下したことであり、逆に賃上げに方向転換させれば、日本も再び経済を成長させられるというのが、私の分析の結論でした。賃上げは人口減少に伴って生じるさまざまな問題とも深く関わっています。日本ではすでに人口減少が始まっており、労働市場の需給バランスが崩れ、供給側、すなわち労働者側に有利になってきています。その結果、賃上げの圧力がだんだんと強くなりつつあります。この傾向は大いに歓迎するべきものです。人があふれていた時代は終わり、労働者は貴重な資源に変わりつつあります。今、日本は新しい技術を広く普及させ、生産性を高めて、高生産性・高所得の経済モデルにシフトする大きなチャンスを迎えているのです。人口が減少するため、表面的な経済成長率はそれほど高くはなりません。しかし、このチャンスをうまくつかむことができれば、国民1人当たりの所得を高め、皆が豊かになり、社会保障制度や国の財政を健全化することも可能です。
■「人手不足」は「悪い労働条件」の結果でしかない
しかし、近視眼的な日本の経営者たちは、今の状況がチャンスであることに気づいていないのか、国に対して極めて危険な訴えをしています。それが、「人手不足」を理由にした安易な外国人労働者の受け入れ枠の拡大です。そもそも日本は世間で騒がれているほど、本当にひどい人手不足の状況にあるのでしょうか。私はこのこと自体に、非常に強い疑問を抱いています。人手不足が深刻になっているのは、いわゆる3K(危険、汚い、キツイ)業種だと言われています。そのこと自体の真偽はともかくとして、飲食業や宿泊業、営業、医療でも人手不足が叫ばれているのは事実です。人手不足がひどいと言われている多くの業種には、ある共通の特徴が存在します。それは労働条件が過酷であることです。特に、非正規労働者が多く、賃金水準が非常に低い業種ほど人手不足が目立ちます。今後はさらに人口が減るので、日本ではこのような過酷な条件でも働きたいと考える人はどんどん減っていきます。労働市場がタイトになれば、よりよい条件で仕事が見つかりやすくなるので、今のような過酷な条件で働かなくてはいけない人が減るからです。その裏付けは、直近の求人倍率を見ると確認できます。たしかにここ数年、日本では求人倍率は上昇傾向が続いています。それをいいことと評価する人がいますが、求人倍率は決して健全な形で上がっているわけではありません。求人倍率のデータを精査すると、企業の規模が小さいほど求人倍率が高くなっている一方で、規模の大きい企業の求人倍率はあまり改善していないのがわかります。たとえば社員数300人未満の企業の大卒求人倍率は、2013年の3.27から2019年には9.91まで上がっています。一方、社員数5000人以上の大企業では、同じ期間に0.60倍から0.37倍へと、むしろ下がっているのです(リクルート調べ)。企業の規模が小さくなればなるほど給与水準が低くなるのは、日本だけではなく世界中で共通してみられる傾向です。つまり、求人倍率が上昇しているのは、日本人労働者が給料水準の低い企業から、次第にいなくなっているという現象の表れなのです。
■不足しているのは「人手」ではなく「経営者の能力」
「それこそ人手不足ではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一概にそうとは言い切れません。たしかに、規模の小さい企業の経営者は今の状況を人手不足だと感じるかもしれません。たとえば、今までは10人で仕事をこなしていたある会社で、人口が減ってしまったため、8人しか集められなくなると、その会社の経営者にしてみれば2人分の人手不足が起こっているように見えることでしょう。しかし、それは今までの仕事のやり方を変えず、そのまま継続しようするから、そう見えるだけです。その企業のビジネスモデルを変えることによって、10人でやっていた仕事を8人でやれるようにすればいいだけです。安い賃金でたくさんの人を雇えた状況が変わった今こそ、これまで導入する必要がなかった技術を導入するべきです。今まで10人でやっていた仕事のうち、技術を導入すれば8人でやれるケースは多いはずです。行政や銀行などの無駄な書類、ネットで対応できるのにいまだにアナログでやっている仕事も含めてです。現在、日本の生産性は世界28位という極めて低い水準にあります。現在の水準が低いということは、伸びしろが大きいという見方もできます。現段階では生産性が低い企業でも、生産性を高めるために設備投資をしたり、仕事の付加価値を高めるなどの経営努力によって、無駄をなくし、より高い給料で人を雇うことが可能になるので、人手不足の問題も緩和することができるはずです。たとえば観光戦略を見ても、団体客対応のためにできた施設をそのままにして、安くても泊まりたい客が減る一方の宿泊施設も多いです。こういった宿泊施設は時代遅れなので、どんなに頑張っても、いつまでたっても需要は戻りません。だから、従業員の給与を安く押えないと存続できないけれども、そこで働きたい人はいない。これを「人手不足」と定義していいでしょうか。私にはそうは思えません。高齢化に伴って需要の中身が変わったのであれば、それに対応する努力をすべきです。もちろん、こういう努力を怠り、ただ単に今まで通りのやり方を継続したい、生産性向上なんかしたくないというのであれば、人口減少によって大変な人手不足の問題に悩まされることでしょう。言い方を変えれば、人手不足を問題視し、政府に対策を求める姿勢こそが、多かれ少なかれ日本の経営者の無責任さを物語っているのです。
■「低すぎる賃金」が日本企業の「無駄」を助長した
今までの日本では、企業経営者たちは優秀な人材を数多く、しかも世界的に見ると異常なまでに安い賃金で調達することが可能でした。その水準はまさに異常です。例として、日本とイギリスを比較してみましょう。日本人の生産性はイギリス人の98%です。一方、日本の最低賃金はイギリスの3分の2です。そして、この異常に安い最低賃金で働いている日本人が、今も増えているという悲しい現実が存在します。逆の見方をすると、日本企業は数多くの優秀な人材を安く調達することができたからこそ、生産性が低くなってしまったとも言えるでしょう。この発想を持って、今までの日本的な問題と言われてきた特徴を再検証する価値は高いです。たとえば、何人も何人もの人間が雁首そろえて長々と話しても、何も決まらない会議。経営者にしてみれば、労働者の時間単価が安いから、どんなに会議が長くて無駄が生じても、気にもならないのでしょう。いっそのこと、賃金を倍にしてみたらどうでしょうか。女性の活躍が日本でなかなか進まないのも、原因は同じところにあります。世界的に見ても、最低賃金で最も多く雇われているのは女性です。日本の最低賃金で女性を雇って、年間2000時間働いてもらっても、年間の賃金は200万円にもなりません。大した給料を払っていないから、客観的に見てあまり必要がない仕事でも頼みます。給料が安いので、技術を導入する必要もないし、会社のあり方を変える必要もありません。逆に給料が安いから、仮にその人が優秀であっても、能力なりの仕事を頼みづらい。つまりは、安い給料で人材の調達が可能だから、無駄が蔓延してしまっているのです。仮に女性社員の賃金が今の3倍だったら、社長も女性社員にもっと活躍してほしくなるはずです。安い賃金で人を雇い、その人の能力以下の仕事しかさせないのは、無駄以外の何物でもありません。ただ、経営者としては、無駄かどうかはあくまでも給料とのバランスで決まります。年間150万円しか払っていない人にお茶を入れてもらったり、銀行に行ってもらったりすることは無駄に感じませんが、その人に300万円を払わないといけないなら、やってもらう仕事の内容をもっと考えます。このように「無駄に使ってきた日本人労働者が減るから人手不足だ」と考えるのは、あまりにも短絡的だと言わざるをえません。なぜなら、仕事を効率化して、より生産性の高い仕事に変えるという選択肢もあるからです。生産性向上による緩和策を打てば、その分だけ人手不足は解消されます。当然、完全には解消されませんが、それでも今言われているほどには、人手不足が深刻にならないのは確実です。
■「外国人労働者受け入れ」の裏にある経営者の甘え
このように人手不足を解消するためにやるべきことは山積しているのですが、一方で、最も安易で危険な外国人労働者の受け入れ枠の拡大が実現しようとしています。政策を実行に移すにあたって、政府は自分たちの意図だけではなく、企業の経営者がどのようにこの新しい制度を使うか、キチンと想定しておかなくてはいけません。今回の場合、なぜ企業は人手不足を理由に、外国人労働者の受け入れ枠の拡大をいきなり訴えてきたのか、政府はしっかりと認識しておかなくてはいけません。先述したように、日本企業の多く、特に規模の小さい零細企業は優秀な人材を安い賃金で雇うことを企業存続の原動力にしてきました。生産性の水準を考えると、もったいないくらい優秀な人材を、安く雇うことができたから、普通であれば存続することが困難な企業でも生き残ることが可能だったのです。日本の社長たちは、この恩恵を長い間受け続けてきました。このような背景があるためか、会社を支えてきた安く使える優秀な人材が減ってしまうにもかかわらず、生産性向上の努力をする気のない経営者が少なくありません。こういう経営者なら、少なくなる日本人に代わって、低賃金でも過酷な労働条件で働いてくれる外国人の受け入れを求めてきても、不思議ではありません。より高い生産性を達成するのが難しい、小さい規模の会社の社長たちは特にそう考えるはずです。こうした企業経営者の声に呼応するように、先日、外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改正案が国会を通過しました。ですので、政府の意図はともかく、経営者の意図は、多かれ少なかれ、人口減少によって労働者の立場が強くなり、賃上げの圧力が強くなっているのを緩和したい。その賃上げ圧力を緩和することによって、改革を先送りすることができると意図しているのでしょう 。
■途上国からの受け入れは明らかに「低賃金」狙い
政府は受け入れの対象者を技能者などに限ると言っていますが、受け入れの対象としている国はミャンマー、フィリピン、ベトナムなどの、いわゆる途上国にしていることにポイントがあります。もちろん、これらの国々の出身者を見下すつもりは毛頭ありませんが、途上国なので、これらの国々に高い技能を持つ労働者が多くいるはずもありません。これらの途上国からやってくる外国人労働者を、日本人以上に安く雇うことができるから、今までのやり方を変える必要もなく、経営者たちは既得権を温存できます。一方で、今でさえ世界一厳しい状況にある企業間の過当競争が激化して、デフレをさらに深刻にするでしょう。安い賃金で働く人が増えれば増えるほど、経済全体にとっては、生産性を抑制することにもつながり、高生産性・高所得経済への移行は夢に終わってしまいます。たしかに外国人の受け入れを増やせば、需要者が増えるという意味で、人口が減ることによる経済への悪影響は多少緩和されます。しかし、一方で、日本で働く労働者全体の所得レベルの低下を招くことも十分に考えられます。ある一定期間の滞在の後に、外国人労働者が皆帰国してくれればいいのですが、その後も日本に住み続けることになれば、所得の水準の低い人が増える分だけ、今まで以上に社会保障の健全性が棄損する結果につながります。極めて短期的に考えれば、外国人労働者の受け入れ拡大は、日本経済にとっての特効薬に見えるかもしれません。しかし、実際にふたを開けた途端、歴史に残る大間違いに終わる可能性は極めて大きいと懸念せざるをえません。やはり、外国人を簡単に受け入れる前に、もっと真剣に生産性向上に取り組むべきです。ほかにもやるべきことはいくらでもあるはずです。同時に、労働者は安く雇って無駄に使うのが当たり前だという、世界的に見て非常識な日本企業の経営者のマインドを変えることも必須だと感じます。
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2019/1/17 16:44
「<日経>無人市場(2) (3)」
株などの資産運用
2019/1/16 5:30
投資に生きる独自データ ホテル予約・特許…異変読む 無人市場(2)
米アップルは2日、「予測を超える中華圏の経済減速」を理由に2018年10〜12月期の売上高を下方修正した。通信社がアップルの下方修正を報じ始めると、東京海上アセットマネジメントの米ニューヨーク拠点では、同社のテキストマイニングモデルがフル稼働を始めた。記事中から「weak(弱い)」、「warning(警告)」といった単語の数を点数化し、市場心理が弱気に傾くと瞬時に判断した。(画像)米アップルの下方修正にテキストマイニングモデルが反応した=AP
東京海上アセットマネジメントは18年12月に、テキスト解析に強みを持つスペインのラバンパック社と提携し、米国でAIファンドの運用を始めたばかり。東京海上アセットマネジメントUSAの三橋威夫・最高経営責任者兼最高情報責任者は「有益な情報を人よりも早く入手するために、(非伝統的な)オルタナティブ・データの重要性が高まっている」と話す。
伝統的な財務データと異なるニュースやホテルの予約件数などの「オルタナティブ・データ」を投資に活用する動きが広がっている。企業の財務や株価といった伝統データは誰でも入手でき、いくらアルゴリズムの精度を高めても独自性に限界がある。他社と違うデータの活用でより高いパフォーマンスを狙う運用会社のニーズが背景にある。
世界最大の資産運用会社、ブラックロックは2018年、米国でホテルの予約状況を投資に活用し始めた。ホテルの予約データを収集し、ホテル運営会社の業績を決算発表前に高精度で推計する。(画像)
ブラックロック・ジャパンの入山千恵子株式戦略部長は「ホテル運営会社の売上高だけでなく、近隣に立地する企業の状況までわかる」という。例えば、テーマパークなどレジャー施設に隣接するホテルの予約件数から、その施設の予想入場者数などを推計可能だ。
こうしたデータ分析にはAI(人工知能)が不可欠。AI技術を高めるため、ブラックロックは18年にシリコンバレーの中心地、米カリフォルニア州パロアルトにAIラボを設立した。今年から米スタンフォード大学の教授陣らと連携し、AI技術を利用したリスク管理の計算モデルなどの研究開発を加速する。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントもオルタナティブ・データの活用に力を入れる。一例が特許情報だ。「特許情報を使えば、業種が違っても同じような技術や取り組みをしている企業が分かる」(内山雅浩・計量運用部長)。特許とサプライヤー(仕入れ先)などのデータを組み合わせ、企業間のつながりを分析。例えば、不祥事が起きたときの他社への影響度をいち早く把握できるという。
米運用会社ニューバーガー・バーマンは最近、シンガポール政府系ファンドなどで「データサイエンティスト」として活躍したマイケル・レッチ氏をビッグデータチームの総責任者に迎えた。レッチ氏は「アナリストに新たな視点を与える」と話す。例えば、米スターバックスが提供するプリペイドカードの「スターバックスカード」。クレジットカードの決済データからこのカードの売上高を割り出し、同社の熱心なファンの増減を推定することが可能という。米コンサルティング会社オピマスのデータをもとに野村総合研究所が集計したところ、世界のオルタナティブ・データへの投資額は2020年に90億ドル(約9700億円)と17年比2.1倍に拡大する見通しだ。非伝統データは入手が困難なデータほど高額だ。衛星画像などは数億円、クレジットカードの決済データなどは10億円に達することもあるという。
データは常に万能ではない。それでも証券会社は企業を調査するアナリストを減らし、運用会社は伝統的なアナリスト・リポートよりもデータとAIモデルの構築に資金をつぎ込む。「宝の山」を目指して、米国ではデータベンチャーの創業が相次ぐ。データ至上主義が市場の無人化を加速する。
2019/1/17 5:30
ナノ秒を削り出せ エンジニアが金融エリートに 無人市場(3)
仏運用会社アクサ・インベストメント・マネージャーズで数量分析に基づく株式運用を担うローゼンバーグ・エクイティー。日本拠点の窪田淳行氏は毎朝、東京都港区のオフィスの自席に着席するとまずコンピューターの指示を確認する。コンピューター画面に表示されるのは、売買すべき銘柄名と株数だ。
年末年始の波乱相場で、同社の数理分析モデルは機械や電子部品など景気敏感株を買うよう指示してきた。1週間に1度ほど、証券会社への注文ボタンを押せば投資は完了だ。
窪田氏は業務時間の大半を、どういったデータが投資に生かせるか検証したり、チェックしたりする作業に費やす。ESG(環境・社会・企業統治)や企業のサプライチェーン(供給網)のデータなどが代表例だ。株式運用部長という肩書のイメージとは違い、企業を訪問して経営者に取材することはない。「投資というよりデータ・サイエンスの世界」(窪田氏)だ。同部門は、米国のデータセンターに、売上高や利益、株価など世界2万社のデータを蓄積する。数理分析モデルは、このデータを分析し、株価の割安・割高を判断する。昼夜稼働して、日本担当の窪田氏を含め、世界各地の担当者に売買を指示する。ローゼンバーグのギデオン・スミス欧州最高投資責任者は「ロボットは感情に流されず、市場のミスプライスを見極められる」と自信を示す。
金融庁に登録する国内唯一の高速取引業者(HFT)、ダルマ・キャピタル(東京・千代田)。同社オフィスの主役はエンジニアだ。物理学やコンピューター・サイエンスを使い、株価を解析。市場分析やプログラムの作成に取り組む。英ケンブリッジ大で物理学修士号を取得した塩谷明達代表をはじめ、10人弱の社員のほとんどが物理や数学の専門家だ。社名のダルマは仏教用語の「真理」に由来する。収益源のひとつは「マーケットメーク」と呼ばれる機械を使った株式売買のサヤ抜き。買値と売値のわずかな差を稼ぐ。注力しているのはスピードだ。ネットワーク機器にはHFT専用のデータ加速モードが付いた特注製品を採用し、ナノ秒(10億分の1秒)を削る。株式売買は同じ値段ならば注文が早い方が約定する「時間優先」のルールがある。スピードが速ければ、約定率が高まるほか、市場の急な変動にも対応できる。「科学的な分析だからこそ、競合各社と戦略が似通ってしまい、スピード勝負になる」(塩谷氏)。伝統的な証券会社や運用会社でもエンジニアの地位が急上昇している。米ゴールドマン・サックスは世界約4万人の従業員のうち、約4分の1がエンジニアとなった。証券会社は顧客の注文をいかに低コストで約定させるかが競争力の源泉となる。ITを使ってこのプログラムを構築するのが「ストラテジスト」と呼ばれる部隊だ。将来の株価見通しを予想する従来の株式ストラテジストとは概念も仕事内容も異なる。取引時間中はテクノロジー部隊が注文を監視。取引終了後は、ストラテジストが顧客を訪れ、顧客からの要望を持ち帰ってプログラムに反映させる。
メッセンジャーボーイから米シティグループのトップとなったサンディ・ワイル氏=AP
ゴールドマン・サックス証券の白井俊道テクノロジー部長は「最近は売買を約定させるプログラムに株価予測の人工知能(AI)を組み込んでおり、これが戦略の核になっている」という。白井氏も学生時代の専攻は天文学だ。エンジニアが市場で活躍するようになった変化の潮目は、マイロン・ショールズ氏とフィッシャー・ブラック氏が株式オプションの理論価格を算出する「ブラック・ショールズ方程式」を構築してからだ。市場の混乱から金融資産を守るリスク管理手法が、それまでの経験から数学に変化した。証券会社のメッセンジャーボーイを振り出しに米シティグループのトップとなったサンディ・ワイル氏、ゼネラル・モーターズ(GM)の夜間工から米メリルリンチの最高経営責任者となったスタンレー・オニール氏。経験ではなく、数学が支配する無人市場ではこうしたアメリカン・ドリームは過去のものとなる。
投稿者: emc2
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2019/1/15 23:09
「<朝日> (社説)公益通報制度 良心の告発守るために」
法律・政治・行政
2019年1月15日 朝日(社説)公益通報制度 良心の告発守るために
組織の不正を内部から告発しやすくして、是正に結びつけるには、いまの制度をどう手直しすればいいのか――。
そんな問題意識のもと、公益通報者保護法の改正作業を進めてきた内閣府・消費者委員会の専門調査会が、昨年末に最終報告書をまとめた。06年施行の同法をめぐっては、適用の要件が厳しく、通報者の保護が十分ではないため、期待される役割を果たしていないとの指摘が根強い。こうした声を受け、報告書には「従業員300人超の企業に制度の整備を義務づける」「保護の対象を、現役の労働者だけでなく役員や退職者にも広げる」などが明記された。その方向に異論はない。だが安心して通報できる仕組みにはなお遠いと言わざるをえない。経済界の反発で骨抜きになった点がいくつもあるからだ。たとえば、通報を受けつける担当者の守秘義務だ。勇気を奮って告発した人の名前などが、不正の当事者や周辺に漏れる例はいくつも報告されている。担当者に罰則つきで義務を課すべきだとの意見もあった。だが報告書は、組織内での保秘態勢づくりを求めるという、あいまいな提案にとどまった。人事などで通報者に不利益な扱いをした場合、企業側に科す「制裁」も及び腰の感が否めない。行政機関による助言、指導、勧告、企業名の公表の各措置を設ける考えが示された。前進ではあるが、これで歯止めになるだろうか。より直接的な効果のある「是正命令」の導入も検討するべきだろう。通報者の特定と報復は、告発をためらわせる大きな要因だ。メディアなど外部機関に通報した場合も保護が広く及ぶようにすれば、緊張感が増し、企業も不適切な対応をしにくくなるはずだ。かねて言われてきたことだが、この論点についても評価できる改善はなかった。気がかりなのは経済界の過度に後ろ向きな姿勢だ。今後、政府内で改正法案づくりが始まるが、この報告書でも踏み込みすぎだとして、さらなる押し戻しを図って働きかけるのではないか、との見方がある。
制度の意義を改めて思い起こしたい。組織内部の良心の告発を促し、消費者や世の中全体の利益を守るのが公益通報だ。それは結果として、その企業自身の健全な発展につながる。不正会計や品質のごまかしなど、不祥事はいまも相次いでいる。視野を広げ、大局的見地から制度の充実を図ることこそ、社会の要請である。
投稿者: emc2
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2019/1/15 19:18
「<日経> 老化の解明最前線、米ワシントン大の今井教授に聞く」
科学・からだ・紀行
2019/1/14 6:30 日経 老化の解明最前線、米ワシントン大の今井教授に聞く 科学記者の目 編集委員滝順一
年をとって体の機能が落ちていく老化のプロセスは、脳や骨格筋、脂肪組織といった複数の臓器・組織の相互連関によって調節されていることがわかってきた。プロセスがわかれば、進行を遅らせる老化制御の道も見えてくる。この分野で世界をリードしてきた米ワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)の今井真一郎教授に老化・寿命制御研究の最先端を聞いた。(画像)
――老化研究が世界で急テンポで進んでいるそうですね。
「日本は典型だが、欧米先進国や中国でも、長寿と少子化によって人口ピラミッドが逆三角形になり若い人が減り、総人口に占める生産年齢人口の割合の低下が懸念されている。少子高齢化は日本だけの課題ではない。最先端の科学を応用して今から方策を練らねばならないと各国では考え、老化制御の研究に熱が入っている」
「科学研究で大きな進展があったのは2013年だ。全身の老化プロセスを制御するコントロールセンターが脳の視床下部という場所にあることがわかった。ワシントン大学の私の研究グループと、もうひとつ別の米国の研究グループが異なる研究から同じ結論に達した」「私が米マサチューセッツ工科大学にいたころ、同大のレオナルド・グアレンテ教授とともに、サーチュイン(Sirtuin)と呼ばれる遺伝子が老化と寿命の制御で特別な働きをしていることを突き止め、00年に発表した。この遺伝子は今では俗に『長寿遺伝子』とも呼ばれることがある」「サーチュインは、哺乳類では7種類あることがわかっており、そのうちSIRT1は様々な臓器で代謝の制御に関わるほか、膵臓(すいぞう)のベータ細胞ではインスリンの分泌、肝臓ではコレステロールの分泌、骨格筋では脂肪酸の燃焼、脳では記憶の形成などに関与すると考えられている。サーチュインは常に働いているが、加齢とともに働きが落ち、それが各臓器の老化につながる」「私の研究室では、脳でのSIRT1の働きが重要だとみて、遺伝子組み換えによって、視床下部でSIRT1の働きを高めたマウスをつくった。すると17〜18カ月齢の高齢のマウス(ヒトなら50〜60歳代)の活動量が3〜4カ月齢の若いマウス(同20歳代)と同程度まで増えた。代謝が活発になり体温が高くなった。詳しく調べたところ、視床下部から交感神経を通じて骨格筋に信号が届き、活動を高めていることがわかった」
――視床下部が司令塔ということですか。
「そうだ。私たちの体には全身の老化を制御するネットワークがある。私のその仕組みを説明する考え方として、09年に『NADワールド』という概念を提唱した。当初は私が出したひとつの仮説だったが、現在では老化研究の世界でひとつのコンセンサスになっている」(画像)
「NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)とは、バクテリアからヒトまですべての生物の細胞内でエネルギー産生に関わる重要な物質で、細胞内の物質の代謝には不可欠だ。サーチュインの活動にもNADが必要であり、サーチュインとNADが老化・寿命制御の車の両輪となっている」「視床下部からの信号で骨格筋の代謝活動が高まり、筋肉の細胞も(老化に伴う悪影響を受けにくくなり)健全な構造が保たれる。同時に骨格筋からは何かホルモンのような物質が分泌され、全身の臓器・組織の働きに影響を及ぼしていると考えられている。視床下部が老化・寿命制御のコントロールセンターなのに対し、骨格筋はメディエーター(仲介役)の役割を担っている。骨格筋が出す物質はまだわかっておらず研究の重要なターゲットだ」「このNADワールドのネットワークにはもうひとつ重要な組織がある。脂肪組織だ。脂肪細胞は血中に特別な酵素(NAMPT=ニコチンアミド・フォスフォリボシルトランスフェラーゼ)を出す。これが視床下部でNADをつくり出し、SIRT1の働き具合を決める。つまり脂肪組織は、老化・寿命制御のコントロールセンターである視床下部の働きを左右するモジュレーター(調整役)の機能をもつ。3種類の臓器の相互のコミュニケーションによって老化のプロセスが制御されていると考えている」
――骨格筋や脂肪細胞が老化プロセスに深く関わるというのは意外です。
「骨格筋は運動器官というだけでなく内分泌器官でもあるらしい。また脂肪は視床下部でNADが不足しないように保つ重要な働きをしている。年をとっても脂肪をあまり減らしすぎないようにすることが老化を遅らせるのに大事だ」
――過去にテレビ番組や新聞記事などで抗老化作用があるととりあげられたNMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)という物質は、NADワールドの中でどんな働きをしているのですか。
「NADがつくられる途中の中間体で、これを服用すると視床下部のSIRT1の働きを高めて、全身の老化を遅らせる効果があることが、マウスの実験では確かめられている」
――ヒトでの効果は確かめられていないのですか。
「現在、ワシントン大学で、50〜70歳代の30人(うち半数は比較のため服用しない被験者)を対象にした臨床試験を進めている。またNMNを販売している企業もあり、かなりの数の人が服用中と聞く」
――医薬品ではなく、サプリメントとして売られているのですか。
「NMNを若返り薬としてセンセーショナルに取り上げる向きもあるが、臓器や組織の機能を保ち老化を遅らせる効果が期待できるというのであって若返るわけではない。従って老化が本格的に始まる前から服用を始めることで元気に老いられると考えられる」
「英語にはプロダクティブ・エイジング(生産的な老化)という言葉がある。日本語で言えば、亡くなる直前まで活動的に過ごす『ぴんぴん、ころり』に相当する。健康長寿には予防が大事だ。医薬品だと、症状が出て医師の診断を受け処方してもらわなければ服用できないので、医薬品でない方が望ましい」「一方、NMNをサプリと呼ぶことには抵抗感がある。NMNは相当な量の科学的研究に裏付けられており、通常のサプリとは一線を画すると考えるからだ。あえて言えば、栄養と医薬品の中間の『ニュートラシューティカルズ』だ」
――大きな市場がありそうですね。
「老化プロセスの制御については世界で激烈な競争が展開中だ。日本は米国に比べこの分野の研究に出遅れていたが、日本医療研究開発機構(AMED)が17年から老化制御研究のプロジェクトを立ち上げ、研究が加速している。私もプロジェクトの拠点のひとつ、神戸医療産業都市推進機構の先端医療研究センターに客員として参加している」
「日本は超高齢社会といわれるが、高齢者の意識調査をみると、『不自由なく暮らせる』と答えるお年寄りが約9割いて健康感が高い。また『働くのが体にいいから』と、就労を希望するお年寄りが4分の1を占め、勤労意欲が高い。長寿大国の日本が老化研究で世界に先行して打開の道を示し、お年寄りが元気に老い経験知を生かした活動ができる社会環境を整えていけば、日本の将来は暗くない」
――最後に、科学誌「ネイチャー・メタボリズム」に最新の成果が発表されました。小腸にNMNを体内に取り込むトランスポーター(運搬役)のたんぱく質があることを見つけたそうですが、この発見の意味するところは?
「NMNを経口摂取すると数分で血中濃度が上昇する。このことから、私たちはNMNを直接的に血中内に取り込む仕組みがあるのではないかと考えた。マウスで調べたところ、小腸、とくに空腸、回腸で『Slc12a8』と呼ばれるたんぱく質が運搬役として働いていることがわかった」「枝豆やブロッコリーなどの食品はNMNを含む。食品などからNMNを吸収する力が弱まっていることも老化に関係すると考えられる。NMNの摂取と同時に、NMNの吸収力を高める。両者の組み合わせが老化制御を考える上で大切だ」
■取材を終えて
「NMNは若返りの薬ではない」と今井さんは繰り返し強調した。臓器や組織の活力を維持するだけで若いときの状態に戻すわけではない。ただマウスの実験だが、NADの産生を高めるとアルツハイマー病や糖尿病などの症状を改善することを示す論文も出ているそうで、期待を集めるのも無理はない。ヒトを対象にした長期の臨床研究で確かめていく必要がある。 今井先生の研究室では、小腸でのNMNトランスポーターの活動を高める物質をすでに見つけており、帝人にライセンスが供与されている。同社は高齢者のフレイル(心身の活力が低下した状態)の予防などにこの物質が効果があるかを確かめていくものとみられる。
投稿者: emc2
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2019/1/15 16:55
「<日経産業>タブレットでプログラミング学ぶ 「スクラッチ」が進化」
パソコン製作・活用
2019/1/15 6:30 日経産業 タブレットでプログラミング学ぶ 「スクラッチ」が進化
2020年度に小学校で必修化されるプログラミング教育で、現在最も使われている学習ツール「スクラッチ」の最新版が公開された。作成したプログラムをスマートフォン(スマホ)で動かせるようになり、外部の機器などとの連携をしやすくした。小学校での必修化を控え、民間のプログラミング教育サービスも増えており、教育ビジネスの拡大にもつながりそうだ。(画像)
◆スクラッチでは左に並んだブロックを中央のエリアで組み合わせてプログラムを作成する
2日に公開されたのは「3.0版」。動作基盤を変更し、タブレット端末でプログラミング作業ができるようにした。さらに作成したプログラムを「プロジェクト」と呼ぶが、これをスマホで動かせるようにした。これまでの2.0版は米アドビシステムズの動画再生技術「フラッシュ」を利用するため、パソコンが必要だった。
スクラッチの日本語化などに初期から関わっている青山学院大学社会情報学部の阿部和広客員教授は「作成したものをスマホで動かせると、多くの人に見てもらいやすい。他人に見てもらえる、遊んでもらえるというのは制作のモチベーションにつながる」とタブレットやスマホ対応の狙いを解説する。
幼い頃からスマホに触れている小学生にとってパソコンよりもタブレットの方が抵抗感なく使える。総務省が進める「次世代学校ICT(情報通信技術)環境」の整備で、NTTコミュニケーションズや凸版印刷などが東京都小金井市の全小中学校にタブレットを導入するための実証実験を始めるなど、今後、教育現場ではタブレットの導入が広がる見通しだ。
また3.0版では、中核部分と拡張機能を明確に分けるようになった。これに伴い、機能拡張が容易になった。デンマークのレゴが提供する組み立てロボットキット「マインドストーム」や、英公共放送のBBCが開発した学習用マイコンボード「マイクロビット」などの機器との連携が可能になる。米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービス、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の「音声合成」、米グーグルの「翻訳」といったサービスを利用する拡張機能を提供しており、これらとの連携もできる。スクラッチは米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのミッチェル・レズニック教授が主導して開発が進められている。プログラミングに必要な要素を「ブロック」と呼ぶ部品とし、そのブロックの組み合わせで直感的にプログラムを作成できるのが特長だ。プログラムと、画像や音など必要な要素をまとめてゲームなどとして動作するソフトやアプリのようなものを「プロジェクト」と呼んでいる。(画像)
◆スクラッチは3.0版になり、機能拡張が容易になった
作成したプロジェクトはMITが提供するクラウドサービスに保存されるので、個々のパソコンなどにソフトをインストールせずに使える点も特長だ。クラウドサービスを通じて、ほかのユーザーとプロジェクトを共有することも可能だ。16年にNHKが放映を始めたプログラミング教育番組「Why!?プログラミング」でも題材として使われている。20年度のプログラミング教育必修化をはじめとして、STEM(科学、技術、工学、数学)教育に対する関心が高まっている。誰でも手軽にプログラミングに触れられる、スクラッチのようなツールの重要性はますます高まる。現在プログラミング教育の現場で最も利用されているスクラッチだが、今回のアップデートではスマホでのプログラミング作業には対応しなかった。現状ではスマホの小さい画面で編集する手法が確立されていないためだ。ただ、阿部氏は「スマホでプロジェクトを作成したりプログラミングしたりできるほうが望ましい」と話す。パソコンやタブレットに比べ普及率が高く、手軽に利用できるためだ。パソコンなどを別途用意しなければならないとなると取り組める子どもの数も減ってしまう。スマホ対応の拡大は今後の課題になりそうだ。(企業報道部 北郷達郎)[日経産業新聞 2019年1月15日付]
投稿者: emc2
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2019/1/15 12:20
「<日経>株式市場の主役、ヒトから機械に 運用資金1800兆円 無人市場」
株などの資産運用
2019/1/15 5:30 日経 株式市場の主役、ヒトから機械に 運用資金1800兆円 無人市場(1)
米未来学者レイ・カーツワイル氏は2045年にAI(人工知能)がヒトの知能を超えるシンギュラリティー(技術的特異点)が到来すると予測した。その波がいち早く押し寄せたのが金融・証券市場だ。機械やAIが株価の方向性を決め、値動きを増幅し、売買する。デジタル技術の発達でヒトの存在感が急速に薄れる「無人市場」の実像を探る。(画像)
世界中で株式市場が乱高下した年末年始。シンガポールの高層ビルで山田岳樹氏は投資家から殺到する上場投資信託(ETF)のオーダーをコンピューター上で淡々とさばいていた。山田氏はオランダに本社がある高速取引業者(HFT)、フロー・トレーダーズのトレーダーを務める。同社は金融庁にも登録する世界の主要HFTの1社だ。400人弱の社員の4割ほどがテクノロジー関連。数学やコンピューターを専攻した20代の若者が多い。「金融機関というよりIT(情報技術)企業に近いかもしれない」(山田氏)という。世界の6500銘柄超の上場投資信託(ETF)を中心に、投資家を相手にした「マーケットメーク」と呼ばれる売買で収益を上げる。いくらで売り買いするかの計算から、その価格の投資家への提示、取引の実行まですべてをシステムで完結。「機械でなければとてもできない」(山田氏)ビジネスだ。フロー社は18年、1〜9月だけで6300億ユーロ(約78兆円)の売買を手掛けた。世界のETF市場に占める売買代金シェアは4%近くに達する。投資家とのETFの売買で得られるわずかな値ざやを積み重ね、18年1〜9月期に1億6600万ユーロ(約210億円)のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を稼いだ。年間では最高益を更新する勢いだ。(画像)
同社が手掛けるマーケットメーク業務はかつて証券会社の役割だった。同社のようなシステムを駆使した高速取引業者が、人手に頼った取引から急速に主役の座を奪い取った。マーケットに流動性をもたらしているのが、HFTのような機械なら、新たに株価の方向性を決める存在に浮上しているのもAIファンドなど機械だ。米国では求人者数やホテルの予約件数などこれまで投資情報にならなかった「オルタナティブ・データ」をAI(人工知能)が分析し、投資に活用する動きが広がる。米データ調査会社、シンクナムは18年11月、米ゼネラル・モーターズ(GM)が工場閉鎖などの構造改革案を公表する前に同社の求人者数が8割減っていたとの調査を公表した。GM株は構造改革案を発表後に急騰した。AIファンドは求人者数など新しいデータを事前に入手、分析し、株価の方向性変化を狙う。こうした株価の変化を増幅させているのが、モメンタム型ファンドや商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロワーと呼ばれる「順張り」勢だ。(画像)
米国で急成長している上場投資信託(ETF)がある。「iシェアーズ エッジMSCI米国モメンタム・ファンド」。2018年末時点の純資産は約79億ドル(約8500億円)と5年前と比べて40倍に膨らんだ。モメンタム(勢い)の名前の通り、株価の勢いに自動で追随し、銘柄を入れ替えるETFだ。10日時点の組み入れ銘柄トップは時価総額世界トップとなったアマゾン・ドット・コム。QUICK・ファクトセットによると、同ETFには18年に約32億ドルの資金が流入した。こうした投資手法は「モメンタム運用」と呼ばれ、かつては数理分析を駆使するヘッジファンドなどの得意分野だった。ETFとなったことで、誰でも投資可能になり規模が拡大。急落と急上昇を繰り返した年末年始の株式相場のように株価の振幅を大きくする要因と指摘される。ボストン・コンサルティングやヘッジファンド・リサーチによると、ヒトが指図せずに機械的に運用されている資金は、17年に約17兆ドル(約1800兆円)となった。世界の運用総額に占めるシェアは約21%となる。現在は2000兆円規模に達した可能性がある。テクノロジーの発展で市場の無人化は急速に進む。一方、AIはヒトによる分析や検証が不可能なブラックボックス化の問題をはらむ。18年12月26日の米株式相場は千ドルを超える史上最大の上昇幅を記録し、年明け3日には再び急落した。無人市場ではこうした乱高下が「ニューノーマル」なのかもしれない。
投稿者: emc2
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