投資家として、まず気になるのは、やはり「2002〜2007年 株取引で15億円を稼ぐ」のところ。このころの株式市場は、2000年ごろのITバブルが崩壊し、景気低迷や信用不安などを背景にデフレ環境が続き、2003年4月28日には、当時のバブル後安値7607円を付ける。しかしその直後、大手銀行への公的資金注入で信用不安が後退したことなどを機に株価が底入れ2007年6月には1万8000円台を回復...と言った状況だった。だから、ここで思い切ってリスクを取って投資していれば、十分なリターンが得られた時期である。この後には、サブプライムショックやリーマンショクが待ち構えていた。
さて彼が、今後どうして激変する時代を乗り切っていくのか楽しみである。地域振興は、今後長期にわたって、新たな知恵や資金を出し続けていかなければならない問題である。少子高齢化が解消される見込みはないし、地方都市同士の競争は激しい。10〜30年先に勝ち残れる見込みは、極小だと私は思う。相手は、株で勝ち逃げして終わりという「しろもの」ではない。会社の経営と同じように地域の経営の「経済的合理性」の追求が課題になり、なかでも人的要素が大きい。苦難に立ち向かえる民主性、永続性を持った「地域住民(経営)組織」が作れるかどうかだろう。

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愛媛を拠点に10以上の事業を次々生み出している注目の若手経営者 エイトワン大籔崇さんが登場。今も地方にこだわって新しいビジネスを次々と生んでいます。35歳の大籔さん。とにかく穏やかでひょうひょうとしています。草食系男子という言葉がぴったり。地方の職人もスタッフもお客もいつの間にか大籔さんの魅力にはまり、皆を笑顔にしてしまうという不思議な人です。さらに、村上龍さんが注目したのが「これまでで一番不思議なゲスト」と言わしめた大籔さんの経歴。大学時代にはパチンコに熱中…。その後自称“ニート”生活を送る日々を経て、株で35万円を15億円に!「自分の事だけしか考えていなかった」という“青年”大籔が、なぜ地方を救う“経営者”大籔に姿を変えたのか。地方の“いいもの”、地方の“いい人”、そして地方の“若者”がたくさん登場する今回の番組。地方が元気になればニッポンも元気になる!是非ご覧下さい。
6/11日(木)放送「カンブリア宮殿」の「田舎に日本の未来SP第2弾」
〜元ニートが挑む地方革命〜 エイトワン社長大籔崇(おおやぶ たかし)
社長の金言「たくさんの小さなビジネスが地方を元気にする」
政治家や行政が声高に叫ぶ「地方活性化」。だが結局はかけ声だけに終わる例がほとんどだ。そうした中、地方に埋もれた「良いモノ」を発掘し、斬新な発想で「強み」を引き出して次々とビジネスにしていく若き経営者が愛媛にいる。エイトワン社長・大籔崇35歳。大学時代はパチンコ、卒業後は株投資にはまり、稼いだ15億円でビジネスを始めたという異色の経営者だ。今では旅館・ホテルの経営に始まり、「今治タオル」専門店、さらに「愛媛ミカン」や陶磁器「砥部焼」のブランドを立ち上げるなど、愛媛にこだわった10以上の事業を生み出し成功させている。「小さなビジネスを数多く生む方が地方は元気になる」。元ニートが一人で始めた“地方革命”。そこから日本の未来を探る!
■温泉、タオル、ミカン…。“愛媛”を盛り上げる異色の経営者 日本最古の温泉といわれる「道後温泉」。その一角に、女性に大人気の宿「道後やや」がある。この宿、温泉宿なのに温泉がないという「弱点」を持つが、「おしゃれな浴衣」「8種類の高級今治タオル」など、近隣の外湯をとことん楽しめる仕掛けで見事に克服。さらに朝どれ野菜30種など、愛媛産にこだわった“豪華すぎる”朝食バイキングが評判となり、道後温泉で有数の人気宿となった。仕掛けたのは30代の経営者・大籔崇。「愛媛」をキーワードに様々なビジネスを手がける。例えば今治タオルは、生活でも使える商品を数多く取り扱う専門店を全国22カ所に展開。ミカンでは、味はいいが市場に出ない「傷物ミカン」を、手作業で加工し「高級品」として店舗やネットで販売。それぞれの産地に恩恵をもたらし始めているのだ。大籔は言う、「小さくてもいいから雇用を生み、お金が回る仕組みをつくることが大事。地方では小さなビジネスが数多くある方がいい」と。地方を元気にする大籔流ビジネスに迫る。
■「株で15億円」→「旅館再建」!? 窮地で得た“成功の方程式” 広島県生まれの大籔、愛媛生活は大学からスタートした。だが在学中はパチンコ、卒業後は株取引にのめり込む実質ニート生活。周囲から白い目で見られながらも15億円という巨額の財産を築き上げた。しかし心は満たされなかったという。転機が訪れたのは28歳の時。道後温泉で、客足が伸び悩んでいた高級旅館の経営を引き継がないかと、知り合いから持ちかけられる。「何か人のため、愛媛のためになることがしたい」と考え始めていた大籔は2つ返事で引き受けるが、いきなり窮地に陥ってしまう。支配人をスカウトして運営を任せたのだが、従業員のほとんどが辞めていったのだ。大籔は一から「客も従業員も満足させるにはどうしたらいいか」というテーマと向き合う。そうして導き出した答えは、意外なことに“愛媛”を見つめ直すことだった。それから見事、3年で人気の宿に生まれ変わらせた大籔。この成功の方程式は、今も仕掛ける数々のビジネスの元になっているのだ。
■愛媛の方程式を全国へ!動き出した「地方革命」 これまで「愛媛のために」奔走してきた大籔。しかし今、そのフィールドは県境を越え始めている。愛媛の隣、香川県の東かがわ市。ここは知る人ぞ知る手袋の町だ。市内の企業で国内シェア9割を占めているという。しかし生産現場を訪ねてみると、コスト削減のため次々と海外に工場を移転。今や国内に残った生産技術はごくわずかだ。消えゆく地場産業を救おうと大籔が立ちあがった。「愛媛の悩みは全国の悩み。いいモノは、少し工夫を加えるだけで必ず売れる」と語る大籔。愛媛で成功した「地方革命」、いよいよその真価が試されるときが来た。
■ゲストプロフィール
1979年 広島県福山市生まれ
1998年 愛媛大学法文学部総合政策学科入学 4年間パチンコ生活に明け暮れ半年留年。
2002〜07年 株取引で15億円を稼ぐ
2006年 「エイトワン」を不動産管理の目的で設立
2008年 旅館の経営を引き継ぎ、経営者人生が実質スタート
■企業プロフィール 2006年、創業 売上高:11億円(非上場) 事業内容:@旅館AホテルB今治タオル専門店Cミカン加工品専門店D宇和島鯛めし専門店E砥部焼の新ブランドF農業生産など10以上の事業を展開。
■村上龍の編集後記 エイトワンのビジネスは、地域の資源を再発見し、活かすという正統的なものだ。だが大籔さんは、「元パチプロ」など、ユニークな経歴が話題になる。だが、大籔さんの個人史は、普遍的だと思う。意欲的な若者は「自分は無力だ」と認め、「だが無能ではないはずだ」と、あるとき何らかの賭けを試みる。崖からジャンプする感じだ。そして、賭けについて客観的に分析し、着地とともに、目標と出会う。見つけるのではなく、出会うのだ。間近で話した大籔さんは、「普通の」優れた若き経営者だった。そして、今、「普通」ほどむずかしいことはない。(跳躍の果て、目標と共に着地 村上龍)