最近、あるPOの公開掲示板で「前売り」という言葉が使われだした。これが「空売り」の一種ならば、基本的にそれは自由である。しかし、それを制限するだけの公の利益が存在する場合、その限度において、法で規制は出来る。「公募増資に関連する空売り規制」もそのひとつであるが、その限界がわかりにくい。
投資判断は、自己責任だが、この適用については、有権的な解釈論もほとんどなく、まだ、参考となる判例もないので、証券会社の説明などを頼りに自己責任で進むしかないようだ。この際、その規制の根拠を見直しておこう。
■■ 平成23年12月1日 金融庁 公募増資に関連する空売り規制の施行等について
○公募増資に関連した不公正な取引への対応として、金融商品取引法施行令の一部を改正する政令が、内閣府令と併せて平成23年8月30日に公布され、本日(平成23年12月1日)より施行されます。今回の改正により、何人も、増資公表後、新株等の発行価格決定までの間に空売りを行った場合には、当該増資に応じて取得した新株等により空売りに係る借入れポジションの解消を行ってはならず、これに違反した場合には処罰されることとなりました。具体的な内容については、別紙を御参照ください。
○なお、上記の取組みは、「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」(平成22年12月24日公表)に盛り込まれた次の方針のうち、(2)に基づくものです。
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II−1−(5)公募増資に関連した不公正な取引への対応
(1)自主規制機関に対し、増資公表前における上場会社や引受証券会社等の情報管理の徹底について検討を要請する。また、(2)増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行った上で新株を取得する取引を禁止することとし、平成23年度上半期を目途に金融商品取引法の関連政府令の改正を行う。
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上記(1)については、金融庁からの要請に基づき、日本証券業協会・東京証券取引所(自主規制法人)・大阪証券取引所から、会員・上場会社に向けて情報管理に関する注意喚起が行われています。また、日本証券業協会においては、公募増資等に関する価格形成の安定、円滑・公正な配分等の観点から、有価証券の引受けを行う際の親引け(注)に関する制限及び公正な配分に関するルールについて、そのあり方の見直しに関する検討が行われています。この中で、証券会社が発行会社に対して配分先を開示すること等についても併せて検討が行われています。(注)親引けとは、発行会社が指定する販売先への売付けをいい、販売先を示唆する等実質的に類似する行為を含む。 (問合先 金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)総務企画局市場課市場機能強化室(内線3628、2638))
●金融商品取引法施行令
(空売りに係る有価証券の借入れの決済)第26条の6
http://hourei.hounavi.jp/hourei/S40/S40SE321.php#1000000000006000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
●有価証券の取引等の規制に関する内閣府令
(価格未決定期間)第十五条の五〜
http://hourei.hounavi.jp/hourei/H19/H19F10001000059.php#1000000000004000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
■■ 平成23年8月26日 金融庁 「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について
金融庁では、「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令(案)」等につきまして、平成23年6月24日(金)から平成23年7月25日(月)にかけて公表し、広く意見の募集を行いました。その結果、7の個人及び団体より延べ46件のコメントをいただきました。本件について御検討いただいた皆様には、御協力いただきありがとうございました。本件に関してお寄せいただいたコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方は別紙1(PDF:202K)を御覧ください。
http://www.fsa.go.jp/news/23/syouken/20110826-1/01.pdf
■■ 公募増資に関連する空売り規制の要点の整理
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空売りに係る有価証券の借入れの決済(金融商品取引法施行令第26条の6)
1.何人も、
2.有価証券の募集又は売出しが行われる旨の公表がされてから *2
発行価格又は売出価格が決定されるまでの期間として内閣府令で定める期間において *1
3.同一の銘柄につき取引所金融商品市場における空売りを行つた場合には、
4.当該募集又は売出しに応じて取得した有価証券により
当該空売りに係る有価証券の借入れの決済を行つてはならない。*3
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*1 内閣府令で定める期間(有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第15条の5)
1.有価証券の募集又は売出しについて
(発行価格又は売出価格の決定前にこれらをする場合に限る)
2.届出書又は臨時報告書が公衆の縦覧に供された日のうち最も早い日の翌日から
発行価格又は売出価格を決定したことに係る訂正届出書又は訂正報告書が
公衆の縦覧に供された時のうち最も早い時までの間とする。*1-1
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*2 有価証券届出書等が提出されるものと提出されないものが混在する募集又は売出し
(コメントの概要及び金融庁の考え方)
有価証券届出書等により公衆の縦覧に供された一連の募集又は売出しについては、今般の規制の対象となり得るものと考えられます。
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*3 規制の潜脱に対する見解(内閣府令15条の6、コメントの概要及び金融庁の考え方)
1.売戻条件付売買又はこれに類似する取引による買付けの決済を行う場合についても規制の対象となります。
2.一連の行為により、又は複数の者が一体となって、実質的に募集又は売出しに応じて取得した有価証券により空売りに係る有価証券の借入れの決済を行っている場合には、規制の対象となり得るものと考えられます。
3.空売りと募集又は売出しに係る有価証券の取得が別々の投資判断・勘定により行われる場合には、空売りに係る借入れのポジション(勘定)を新株取得によって解消するものでなければ、金商法施行令第26条の6の禁止規定は適用されないものと考えられます。
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