昨日9/27の朝日新聞ネットで..「初冠雪した立山連峰」との便り
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北アルプス・立山連峰の初冠雪を観測したと富山地方気象台が27日発表した。平年より12日早いという。 立山黒部アルペンルートを運行する立山黒部観光によると、室堂(2450m)で、雪が降り始めたのは25日午後11時半。27日朝には積雪が2〜3cmになり、弥陀ケ原(1930m)付近でも雪が積もっていたという。
この便りで、私も同じようなときに、立山連峰に登ったことを思い出した。40年ぐらい前の26才の頃で、10月7日だった。夜行列車で富山に着き、雷鳥沢から登って、夕方、剣山荘に到着。天気予報では翌日はまず晴れると思って急いで仕事を片付け、休暇をとって出発した単独行だった。
翌10月8日、起きたら天気予報は外れていて、一面、真っ白、初冠雪だった。しかも、雪はまだ降っている。ここで、剣岳に登るかどうか迷った。たまたま、山小屋で同室だった2人連れが登ると言うので、よせばいいのに付いていくことにし、強行してしまった。山頂では、ガスの中で、近くの人以外なにも見えなかった。
そしてこの剣岳登山は、私の登山歴の中でも最もひどい目に会うことになる。スキー登山での雪山には慣れていたが、雪山登山の経験がないし、雪山に対応した装備もしていなかったからだ。剣岳の本峰の直前には、有名な蟹の横這い、蟹の縦這いという鎖場がある。夏山なら、どうってことはないところだ。軍手は持ってきていた。しかし、それが雪でぬれてしまい、鎖場のくさりを持ったら、瞬時に凍り付いてしまうのだ。それをバリバリと力づく外して、次にいくという繰り返し。小屋に帰りついたら、両手の後ろ3本の指が凍傷になってしまっていた。小屋の人にぬるま湯を沸かしてもらってつけるが簡単に直らない。完治まで1カ月近くかかってしまった。
もうひとつ、恐ろしい思いをしたのは、「蟹の横這い」から前剣岳に戻る入口のところに、剣本峰と前剣の大きなキレット(裂け目)があり、前剣が痩せ尾根になっている。これも雪がなければどうってことはないが、ここがナイフエッジになっているので、ほんのわずかでもバランスを崩すと、キレットの深い谷に転落する。下の写真は、すべて夏季のものだが、中央の写真の手前に写っている赤い服を着た人の前の青いザックと黒い服を着た人が通っている付近だ。蟹の横這いを出た帰路方向は、階段を降りるような下りで、しかも足場が谷側に傾斜しているので、スリップに対する恐怖感が増幅する。いまだに、このときに滑落する夢を見る..(汗)。
翌10月9日は、雲ひとつない秋晴れだった。凍傷の手は痛んだが、この景色を見に来たのだから、すぐに帰るわけには行かない。立山連峰を縦走し黒部ダムまで下って、大町に出て、大糸線経由で帰ることにする。立山からの眺めは、すばらしかった。写真下は、立山から眺めた山崎カールだが、以前にここから、山スキーで雷鳥沢まで下ったことがある。かなりの距離の滑降条件の悪い山スキー・コースだ。
若い頃に撮った多くの写真も、こういう機会がないと見ることもない。遠方からの「初冠雪した立山連峰」の便りは、私にとって、うれしい便りだった。酷い思いでも、今となれば楽しい思い出になっているのは、不思議だ..(笑)。