先週の金曜日。お尻に火がついて、ぜんぜん駄目な状態なのにも関わらず、です。
ごめんなさい……。
でもこれだけは許してください。
中島みゆきコンサートに行きました。
中之島に、教祖さまが光臨と書いたのは、このことです。
今更ですが、白状します。高校二年生から、幾星霜、はや20年以上。みゆきさんのコンサート、行ける限り行っています。
御年、50を越えられたみゆきさん。
私が初めて、1982年、9月21日(コンサートツアー【浮汰姫】)広島の郵便貯金ホールの立ち見でかいま見た(本当にかいま見状態だった)みゆきさんは、今の私の年よりも若かった。浪人が決まった春。徳山までコンサート(1984年3月31日徳山市民会館ホール【明日を撃て】)に出かけていって、コンサートがはねた後、徳山駅新幹線ホームで、30代前半のみゆきさんにサインしてもらったなぁ……。広島どまりだったんだよね、みゆきさん。同じこだまで、広島駅。タクシー乗り場まで、見送りました。あれから20年ですわ。しみじみ……。
ところで、絶好調だと思う。最盛期だと思った。中島みゆきの充実ぶりに、ちょっと震えた。相変わらず自分の作詞の歌詞を間違えるところも含めて、歌の充実ぶり……(?)MCの切れ、観客との対話。90年代にあった過多な演出もなく、セットも素朴。バックの演奏陣は相変わらず一流で、破綻がない。次々破綻する中島をキチンとバックアップ。クオリティの高い演奏です。
幕開きを待ちながら、いつも考えるのは、一曲目は何だろう……一曲目トトカルチョなんだけど。だいたい、シングルA面曲はこない。アルバムのシンボリックな曲も来ない。マイナーな、でも味のある、玄人好みの選曲がくる。ここのところ、アルバムB面シリーズが続いていたが……(でも一つ前のコンサートツアーでは、『あした』で始まってびっくりしたんだけど)。今回は、ニュース23のエンディングテーマであった、『最後の女神』での出発でした。なるほど。いいところをついてくる。三年半ぶりのツアーということで、この間に発表された曲がわんさかあって、最新のものがセルフカバーだったりして、いったいなにが歌われるのかちっとも分からない。前奏を聴いて、必死で頭のレファレンスを高速検索するけれど、間に合わない。それが楽しい。
間に、【ほのぼのしちゃうわコーナー】があって、至高のDJとしての才能を遺憾なく発揮。会場入り口で観客に【ネタ】を募集して、構成作家が必死でそれを取りまとめて、みゆきさんに渡す……それをその場で読み上げながら、オールナイト時代の見事な語りで爆笑ネタをくり出していく。……と書きながら、これを読む人は、ドン引きヒキヒキなんだろうなと思うが、かまわない。カミングアウトぢゃ。
一枚のお便り曰く……先日紅白歌合戦の再放送があったので見ていたら、みゆきさんが黒部て歌って、歌詞を間違えたところ、字幕が、みゆきさんの歌った通りに直してありました。さすがはみゆきさん、NHKに圧力をかけたのですか?
というような具合でございます。ああ、ファンならでは、まさしく「ほのぼのしちゃうわ」なのです。ごめんなさい。
みゆきさんは、加齢を感じさせない、見事なスタイルと、どんどん力強さを増す声と……、ちょっと尋常ではないパワーをみなぎらせていました。どんどん、きらきらと白く輝くもののように変化していって。そのまま、いつか天空に帰っていくつもりなのかしら。とか、ヤバいことを言っております。はい。自覚しています。
MCのおばかトークと、シリアスな歌と。従来その二面性をどう統合すればいいのかというのが、中島みゆき論の一つの軸だったように思う。でも、【鬼束事件】として、ファンの間で知られている
菊池成孔氏の鬼束ちひろの批評をたまたま読む機会があって思ったんだけど、彼の言う、「新宗教であり絶対宗教であるオリジナル宗教のイコン」に、己自身を追い込んでしまう危機に、中島みゆきは常にさらされて来たんではないかと。自己愛と相即する自虐ネタを連発しながら、【聖性】と真反対に疾駆しようとするMCは、その歌の世界が、巫女(ふじょ)の神託にギリギリ接近してしまうこととのきわどいバランスの上に立っているように思える。さんざんの馬鹿話の最後の最後に、オールナイトニッポンの終わりの一曲に添えられるお便りを読むその声は、ひりひりするほどこわばって、悲しみに満ちて、怒りに満ちて、恥ずかしいぐらいの愛情に満ちた、変貌を遂げた声だった。みゆきさんに心酔していたリスナーは、その最後の【託宣】を受け取るために、眠い目をこすりながら布団のなかでがんばっていたことだろう。不覚にも、はっと気がつくと、歌うヘッドライトで八代亜紀がぼそぼそしゃべっているのを聞いて悔し涙にくれたのは私だけではあるまい。(広島は、二部は放送していなかったのです)
このみゆきさんの言説のモードの切り替わりは、コンサートでも一緒。最後の最後に、切れ味のある一言があって、エンディングに向かいます。もう終わりかと、残念さもあり、くすぐったさもあり……。
さて、本編ラスト曲は、予想通り、『歌姫』でした。
これを聞いて号泣してしまった事件の曲です。中盤の『SINGLES BAR』あたりでもう、ちょっと来てしまっていた私は……いやむろん我慢しましたけれどね。思えば、うまれて初めて行った中島みゆきコンサートから、22年以上たっています。高校生だった私が、かいま見の雑踏のなかで聴いた『歌姫』と、50代になって、私も40代を前にして歌い、聴く『歌姫』と。聴き比べるすべなどありませんが、感無量でありました。
……しかし、アンコールラストに、『土用波』を大合唱することになろうとは……。
確かにみんな歌ってた……立上がって歌っていました。平均年齢40代後半、50代60代の観客も目立っていましたが、たちましたよ。『土用波』で……。もちろん私、大声で歌いましたとも。
あ、夜会、大阪でもやるんだってさ!!ブラボー。