それは7月28日(月)の夕暮れ時のことだった。
その日は、午後から大阪地域は大変な嵐に見舞われていた。雷雨、激しい雷雨。名神の大山崎インターを降りようとするカンコのフロントガラスから遠く、盛大な稲光が、京都方面の凶悪な黒雲を二つ三つに引き裂いているのが見えた。……そう思い起こせばその日は大変なことが続いていたのだ。朝から、カンコ(カングー)のカギが消えた。スライドドアを解錠して荷物を入れ、さて、庭に水やりを……と思ってくるり一回り仕事をして車に戻ったらもうカギがない。盗まれたか……。こんな路地で車上荒らしはなかなか勇気が居る。増して車同路傍は難しい。オートマならイザ知らずマニュアルミッションで切り返しを五回も六回もしながら車を展開するのはとってもつらいはず。結局スペアキーで家を出る。
思えば、あれは何かの予兆だったのだ。
その日は、大阪北部の初めて行く町の小学校での仕事。
話をし始めたら、どんどん外で稲妻、稲光、轟音のごとき盛大な嵐。
ようやく仕事を終え、駐車場に出てびっくり。
カンコの向いの車に、年経たヤシの木(どう見ても、それはシュロの木なんだけど、学校の先生たちはヤシヤシとと読んでいたのでそれに倣う)が倒れかかり、えらいことになっている。あの風でへし折れたのだろうか。
カンコ間一髪。停め場所を過っていたら、えらいことになっていた。
思えば、これも何かの予兆だったのだ。
その出来事が起こったのは、7月28日(月)の夕暮れ時のことだった。
近畿道をひた走りに南下するカンコ。体は疲れ果て、朦朧としている。あんまり眠くてどうにかなりそう。
そこへ!!!
ピシッ!
まるで、ゴルゴ13の消音ライフルに狙撃されたような鋭い音(いや、ゴルゴに狙撃されたなら、即死しているはずか)。
飛び石だ。前に割り込んできた RV車が飛ばしたような気がする。でもそんなことは往々にしてあるので、と気にもとめずに車を前に進める。
どれぐらい走っただろうか。
嵐がさって、軽い雨が少し残る大阪。道路が向かう、南河内の山々。そこへ雲間を割って日が差し入る。おおおお。美しい!ぶっといぶっとい虹がかかる。美しい!!!!「ボウ!」とそのまま音読みしたくなる虹。
吉野弘の詩を思い出しながら楽しい気持ちで、西名阪との分岐点の看板が見えた頃。
あれ?フロントガラスに、5センチほどの筋。透明な筋。ちょうど目の前のガラス。窓の端から真ん中に向かって……。これはもしや!さっきの飛び石で、ガラスにヒビが……そして、恐ろしい現象が続いて起こる。
ヒビが徐々に成長を始めたのだ。見る間に15センチに成長を遂げるヒビ。青くなる私。フロントガラス交換。頭の電光掲示板がチカチカと速報を伝えてくる。
本日午後6時半。近畿道上で、カンコさん納車11ヶ月の女性が、何者かに狙撃されました。カンコさんは走行には別状ないものの、フロントガラスに致命的な傷を負った模様。現在、オーナーとディーラーは全力を挙げて、フロントガラス交換の治療を続けております。
10万円仕事……かなぁ。
結局、ヒビは50センチぐらいまで広がり、どうしようもないということで、ディーラーに入院しています。泣きたい気分ですが、唯一嬉しかったのは。
代車が、セニックだったってこと。
あこがれメガーヌ・セニック。




うへへ。これは楽しい。