といっても、へろへろになってカングーでたどり着いたのみ。
岡山の話題無し。
明日明後日、岡山大学でイベントです。
夕方まで小学校で仕事をして、そのまま飛び乗る近畿道。宿に入ったのが22時。
閑話休題
久々に月例桃源郷の話題。
昨日のこと。研究同人の初任者が三年生担任で、初任研を兼ねて国語部会としての研究授業でした。教材は東書三年下の「つな引きのお祭り」。説明文。
はじめ
なか
おわり。
三つに分ける。
そんで「なか」をさらに三つに分ける。三つのお祭りの紹介で、節目はくっきり。
授業は、その最初のお祭り。刈和野のお祭りの説明を、四つに分ける学習。
三年生で、そうしたレベルの「かたまり」感、「かたまり」意識はそろそろ持ちたい。
構造的読解力を志向したとき、これは外せない学習指導だった。
で、桃源郷のクラスの常で、子どもは三人。
A君
Bさん
C君
この子たちがそれぞれに、刈和野のつな引きのお祭りのかたまりを腑分けしていく。
○お祭りのあらまし
○つな引きの準備
○つな引きの様子
○お祭りの由来
大人が分析すれば、こんな言葉で四つに分けられる。
子どもたちの段落分けの言葉は多様だった。
Bさん。
お祭りの準備のかたまりを、「ひと月も前」「一週間前」という時間の経過を表す言葉を手がかりに、比較的構造的な分割を達成。
C君。
Bさんと同じ分割を達成したが、その分割理由は、それぞれの段落に書いてある内容を、自分なりに要約して根拠化していた。Bさんの反応が構造的読解の特徴を示しているとすれば、C君はまだ内容的読解の比重が大きい。
A君。
充分な根拠のある分割が出来なかった。その理由の説明も、書いてある事柄のうち、自分の興味をひいた単語を中心に断片的なもの。内容を拾い読みをする低学年的説明文読解の特徴が色濃い。
つまり、この三人は、小3という、低学年から中学年のわたりのシーズンの特徴を一人一人が典型的指標を担うように示している。この三人の反応をつなげていけば、ああこんなふうに子どもは内容から構造へ発達を遂げるんだなぁ……とわかる。
だからとっても面白かった。
実は、私はこの授業での彼ら彼女らのこうした反応分布を、一定予想していたところがある。
その根拠となったのが、この学校の全校生徒の作文集「とうげんきょうっこ」(仮名)。
今年度1学期のそれを私は、自分の本務のために分析していた。そして、この三年生三人の作文を少し丹念に読んでいたのだ。
説明文における反応、そのまま。作文と説明文の読解とがこれほど緊結されていることに、私は初めて気がついた。
Bさんの作文は、大雑把にいって、「はじめ」「なか」「おわり」をもっている。つまり、自分の表現を「かたまり」化できる。だから、読んだ表現をかたまりとしてとらえることができる。
C君。彼の作文は、段落としてはまったく構成できていない。形式的には。ただ、短い一文を、言い切りの形で並列して、自分の体験を切り取ってくる、その内容のシャープさが際立っており、作文としては三人の中では一番面白い。形式的な構造には結びついていないが、内容の選び方切り取り方において、そこに近づきつつある感じがする。
A君。
やはり、作文もややしんどい。体験のトピックを、並列させていく低学年的作文。中心と周辺の分化がまだ見えない。
「2001年宇宙の旅」のモノリスに喩えることは不謹慎かもしれない。
でも、「9歳の壁」を中心に子どもたちが認識上の飛躍を遂げていく発達ドラマは、どこか、あのSF映画の導入の映像と重なる。モノリスに触れた類人猿が、道具の使用を始め、敵を圧倒するドラマ。放り上げられた骨がそのまま宇宙船に変身するキューブリックの美しい映像。
Bさんは今モノリスに手をかけ、登りつつある途中。その向こうに、4年生の原野が広がっているはず。自分を見つめる第三の目が開きかけている。
C君も、そこにモノリスというとんでもないものが鎮座していることをほど近くから見据え、少しずつにじり寄っていっている。ほどなく彼もモノリスに手をかけるだろう。
A君は、原野の遠くに何かがあることはわかっている。そしてそれを確かめる旅の途上。残念ながら、彼の第三の目はまだ堅く閉じられている。
A君を入学時からずっと見ていたS先生は言う。
A君な、二年生のとき、段落を教えようと思ったらな、一人だけ、こんなこと言うねん。
A君「本体は後の方にあんねん。その前は、司会みたいなもんや。」
三人のうち、最も構造的読解力への道のりにおいて遅れをとっているA君。しかし彼の読書量は、三人の中でずば抜けている。そして、「本体」と「司会」というメタ言語を体のどこかに隠し持っているという事実。
中学年を担任するということは、たとえばA君の学びのシーンのどこかで、彼がモノリスに振れた雄叫びを聴くということだ。「ピキっ」という彼の認識の殻の割れる音を、いつか聞くということだ。
現場実践者だけが聞くことができる、そんな音。
わしも聞きたいなぁ……。
明日は八時出発だぜ。
寝ます。