前の職場にほど近い住宅地のなかに、おいしい定食を出してくれる小さなカフェがあります。そのなも「たんぽぽ」。ときどき行きます。一人でふらりと夕食を食べによったり、何人かとランチを楽しんだり、いい店です。何より、安い。すべて手作りの定食。コロッケ、メンチカツ、トンカツ。これにサラダと煮物の小鉢とみそ汁とご飯、オリジナルドレッシングを必ず二つつけてくれて……すべて1,000円ちょっと。確実にこれはもうけが出ていません。と勝手に想像しています。ここのカレーも好きなんです私。カレー好きですもの。昔ながらの、カレーなんですがちゃんと手作りという感じがよいです。手抜きがありません。脱サラしたご夫婦のお店。
あ。それで、そのお店の紹介が趣旨ではないのです。そこは、切り妻平屋。天井が張ってありません。斜め天井は構造用合板。梁もその向こう側におさめてあるようで、フラットな構造用合板の針葉樹の木目が天井を覆っています。壁はプラスター素材、おそらくタナクリームのような塗り壁。床は、多分檜のフローリング。蜜蝋系のワックス仕上げとお見受けします。トイレに行くと、ここは全部構造用合板で仕上げられています。
家づくりに入るまで、この店のこうした仕上げについて分析的にとらえる目がありませんでした。……家づくりのなんやかんやの取り組みが、こんなへっぽこ施主にもそれなりの目を育てるのでしょう。
そして私は気がつきました。構造用合板仕上げ。悪くない。大きな開口部からさしいる日光に数年はさらされてきた天井、いい感じの赤みがかった風合いになっています。トイレの仕上げもうるさくなく、意外と落ち着いています。これが実は気がかりだったのです。ラワン合板と違って、木目が主張しすぎることによるうるさい感じ、疲れるんじゃないかという懸念。
今まで前々気がつかなかったんです。このお店の仕上げが、私が悩んでいた構造用合板あらわしの仕上げだったということ。そしてこのお店が、私が行き着けているお店のなかで、おそらくもっとも落ち着く空間であることに。かすかに、ジャズを中心としたBGMが流れて入るんですが、本当に静か。人の話し声があってもあまり気にならない。小さな店なのにね。
お店が素敵という話ではないんだった。
つまり、この仕上げ、かなりいい感じだということ。悪くないぞという認識に至ったということを申し上げたいのです。減額案として受け入れるというスタンスじゃなくて、積極的に意匠として受け入れることが出来るじゃん。
あんな落ち着いた空間が、うちにも出来たらいいなあ……。と思ったのでした。