続き……。
【新築はいや!】というテーゼが得られたあと、2003年の秋も押し迫ってからのことでした。早速始めたのは、インターネット検索で中古戸建ての物件情報を探すことでした。以前賃貸物件を探したのを、売り物件に変えただけですが……。
さて、問題は予算なんです。いくらのお金を投入できるのか、というイメージが当時ろくすっぽできていなかったのです。自己資金……500万ぐらい??それぐらいしかイメージできない。とりあえず、中古物件で3000万以下という大変アバウトな、そして資金計画の見通しもない無謀な探索でありました。
この時期、いくつかの中古物件を見に行きました。ネットでヒット、問い合わせボタンで問い合わせ、ファックスなり電話なりをもらって、アポイントを取って見学。どうもその辺りから既に私たちの家選びは癖があったみたいで、【築浅】はタブーでした。先の【新築断固拒否】テーゼの影響がここにも出ていたのです。新築戸建てに近いものをとにかく憎む思想がぐいぐい台頭していた時期でありました。
ただ、肝心の「どこに住むのか?」という初期値中の初期値。検索かける最初で考えることすら、大変漠然としていたので、広ーい範囲を、何となく面白そうなのを探すという変な探索であったと思います。不動産屋にとっても厄介な客だったと思います。
一度、見に行った三角形の旗竿地。離合の難しい路地に竿部分が開く大変厄介な土地に、なぜか平屋。充分広さがある土地で、なぜ?みたいなの。こんなのが大好きでした。でも現地に行くととってもつまんない築浅中古物件で……げんなりしてしまいましたけど。
それで、そこに連れて行ってくれたM建設という名前の不動産屋さん。若い新人君。営業がんばんなきゃということで、家まで迎えにきてくれたのはいいんだけれど、この物件でがっかりしたからもういいよって言いたかったのに、頼みもせんのに彼らが「建設条件付きと地物件」でミニ開発している現場に連れて行きよった。
曰く、「いや〜〜おくさん、新築はいいですよ〜〜。何といっても、bonpataさま、奥様の夢をですね、存分に実現していただけるんですよ新築は!」熱いよ営業君。でもごめん、本気で「ぷっ」ってわらっちった。ごめんなさい。でも、それ多分マニュアルに書いてあるんだろうけど、冷静になってごらん、それでグラって来る人ってどんな人なの??夢ってあんた。住宅って夢なんか?
……ほどなく到着。そこにはモデルハウスとして利用している完成済みの一棟。(建売として売るんだろうね)その横に、建築途中の一棟。「こちらはフリープラントなっていますから、bonpataさまのおのぞみのまま!夢を実現していただけるように(また夢って言ったこの人)、ドアの取手ひとつから、壁紙ひとつから、すべてお選びいただけますので〜〜〜!!!」
そして、その家が……何と言うか、本当にもうどうしようもない建売住宅なので、質問ひとつ、お追従のことばひとつかけられなくて、ええ、まあと曖昧に笑いながら、足早に家中をぐるぐる。ようやくお小性のようについてまわる営業氏を振り切って、バルコニーから外を眺めながら目配せをすると、連れ合い目で語れり。(しょぼしょぼだよ〜〜)口に出して言うまでもない。やっぱり【新築に未来はない】という急進思想が、我々の思考の支配権を確立する象徴的な見学となってしまった。
この営業氏、帰りの車のなかでも爆発していた。
「いかがでしたか〜〜??あの土地に、ぜひとも、bonpataさまの【夢】を乗せてあげてください!!!!!!!!!!!!」
車の窓にほおを押し付け、死にたくなる冷たい衝動と戦うこと数秒。
お前の語る夢がしょぼ過ぎるんじゃ〜〜〜〜〜!!!!!
と心の中で絶叫する私。
連れ合い、既に気絶。
こうした一連のことがあって、年明けから、中古物件への当てどない旅が始まるのであった。しかし同時に、この辺りから私は、設計事務所による、中古物件の改築、それをリフォームと敢えて呼ばず、【リノベーション】と名付けられた、ムーブメントに傾倒しはじめていたのであった。一方で物件探しを進めながら、一方で、リノベーションに興味を持ってくれる建築家探しを同時並行的にはじめたのであった。そのなかでであったのが、前述の
argであった。その辺りの話はまた。