元来自分は用心深い。用意周到。と言うと非常に慎重で奥ゆかしく、冷静で賢い。というイメージがあるけれども、そういうんではなくてもっとはっきりきっちり厳密に言ってしまえば単なるビビリ。
で、何が用心深くて用意周到なのかというと例えばシャンプー。
ポンプ式のボトルの中身が半分ほどになった時点で詰め替え用がストックされていないと不安になるのです。
シャンプーに限らず歯磨き粉しかり、洗濯石鹸しかり、あらゆる種類の調味料や食料品、衣料、ギターピック、に至るまで、上に述べた理由により必ず我が家には長期間の保存により腐敗するもの以外であれば予備の品が常備されているのであります。
ところがそんな用心深く用意周到な自分でありながら、昨日白昼にその事件は起こったのであります。
数日前より体調を崩してしまっていた自分。しかしいくら体調が悪い。熱がある。とはいえ、世間一般の30代・40代のいわゆる働き盛りの皆様同様、仕事を休むワケにはまいりません。 いつも通りに朝から出勤。辛い身体を引きずりながら作業に勤しんでおったワケであります。
意識もやや朦朧としてまいった午後。いつもの我が愛営業車「軽トラッくん」に乗り込みまして配達に出たのでありますが、何しろ意識も朧げで、どこをどう走ってお客様の元へ辿り着いたのかも思い出せずにおる中、その帰り道。いつも快調に登るはずの長い坂道を、何をどうしたことか軽トラッくん、グズつき加減で登ってくれません。ちょっと走れば速度ダウン。またちょっと走ったかと思えば速度ダウン。そんな事を繰り返しますうち、国道を30キロ程度の速度でノロノロ走る自分に周囲の車らがバッシングを浴びせ始めたので仕方なく路肩へ。
なんで〜〜?
生気の失せましたる目で凝視しまするに、なんと、燃料計が0を指しておるではありませんか。これはいかがしたこと。ガス欠か!? 用心深い自分がっ。用意周到なこの自分がっ。
あまりの体調の悪さに数日前からまったく気付いておりませんでした。
朦朧とした頭をフル回転させて考えまするにここは峠の国道。自動車専用道路。路肩といっても僅かのスペースしかございません。長く停車しておくワケにもいかず、かといって周囲にガソリンスタンドもございません。 ここは意を決して行けるところまで行くことに。
エンジンはかかるんです、エンジンは。
周囲を走る車のクラクションと、ドライバーの冷ややかな視線に耐えながらノロノロ運転。ようやく下り坂に。気持ちちょっと楽。
そして平坦な街路に出たところ、まあ普通に走るようだったので、よお〜〜し。このまま帰ったれい!!と思った瞬間。万事は尽きたのでありました。
近くには女子大と高校と大規模病院と観光寺院。数十人の野次馬の見守る中、ちくとも動かなくなってしまった車を路肩へ情けなく押す自分。
救援を待つ間の30分が1時間にも2時間にも感じられたのは言うまでもありません。
波乱と失意のうちに一日を終えようとしていた仕事からの帰り道。そうだ今週土曜はライヴだ。楽しみだ。と思った瞬間。ストック用のギター弦を買わねばならぬのを思い出した自分は、さすが用心深い。用意周到バンザイ。と意気込みつつ辛い身体にムチ打って行きつけの楽器屋へまさに意気揚々と向かったものの、お目当ての弦は見事品切れ。朦朧とした気分で店を出たあと、用意周到クソ食らいやがれ。と呟いてふらふらと家に帰った。とほほ。

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