ライヴステージでのパフォーマンスって色々個性があっておもしろい。
超絶演奏テクニックで聴かせる・・・MCで笑いをとる・・・派手な動きで注目をひく・・・奇抜なファッションで唄う・・・などなど、バンドによってホント多種多様だ。レベルの高いバンドほど、そういったものをきっちりと自分のものとして昇華して、バンドのアピール方法の一つとして魅せてくれる。それはプロであれアマであれ、オリジナルであれカヴァーであれ、年配であれ若年であれ、バンドのジャンルや形態に関係なく言える。
大物のブルース・マンたちのステージは、彼らが「たたきあげ」と言われるその所以からか、なかなかにおもしろいショーをみせてくれることが多い。
中でもバディ・ガイのパフォーマンスは最高に秀逸だった。
僕はバディのステージを2〜3年の間に3回も観る機会が過去にあった。大阪城野外音楽堂で2回、梅田Heat Beat というライヴハウスで1回、計3回。
先ず一曲目は「Mojo Workin」。
ブルース・ファンならずとも音楽ファンなら誰もが知るマディ・ウォータースの超スタンダードナンバーでのオープニングに、のっけから会場は興奮の坩堝。歓声が轟音のように暮れかけた野音の空に響く。
しかし、これはあくまでオープニング。本当にスゴイのはここからだった。
数曲オリジナルのブルースが続いた後、バディのMC。
「さあ、この辺で俺のあのヒット曲をやろうか?」
会場全体がウオーっと叫ぶ。
「OK!ワン、ツー・・・」
しかしカウントの後、バンドが演奏し始めたのは、なんとクリームの「サンシャイン・ラヴ」だった。
平然と歌いだすバディ。最初若干あっけにとられた観衆もバディの歌いだしと同時に大歓声・大拍手。
ワンコーラスも歌い終わらないうちにハッとした表情でバディはバンドを振り返り、ノー!ノー!と無理やり途中で演奏を止める。
「ちゃうちゃう!ワシの曲やゆうたやないかあ。これワシの曲とちゃうがな〜」 と米国の大阪弁でバンドに言う。
「ええか?あの曲やで!あのヒット曲や!OK?OK?ワン、ツー・・・」
次にバンドが奏でたのはジミ・ヘンの「パープル・ヘイズ」だった。
会場は割れんばかりの大歓声と大拍手。ウオーっという轟音のような歓声が途絶えなくなる。バディもその歓声に今度は満面の笑みで応える。そして歌いだす。さらなる歓声の轟音。気持ち良さそうに歌うバディ。そしてまたハッと我に返ったように演奏の途中で、ノー!ノー!ノー! とバンドを止める。
「違うっちゅうてんねん! ワレ、ジミの曲やないかいこれぇ! オンドレら今度は間違えたらあかんど!」 と今度は類似穴州の河内弁でバンドに告げたバディは三度目の正直とばかりにワン、ツー・・・とカウントを取る。
そしてまたもや期待通りといおうか、バンドが演奏し出しのはスティーヴィー・レイ・ヴォーンの「コールド・ショット」だった!
会場の熱気は最高潮。割れんばかりの大歓声。この曲ではワンコーラス歌い上げて気持ち良さそうにソロまで弾くバディに会場は大きな歓声と拍手で応える。そしてやはり途中で演奏をストップ。そして物憂げな表情のバディ。
「ジミもスティーヴィーも素晴らしいブルース・プレイヤーだった・・・。彼らは私の弟や息子のようだった・・・。今夜は彼らのためにこの曲を演ろう」。
始まったのはバディのヒットバラード、「フィールス・ライク・レイン」。この演出にはそこに居合わせた聴衆全員がヤラれた!静かな出だしの曲に今までに聴いたこともないような最大級の歓声がウオーっとも、ゴオーっともつかない音で夜空に響き渡った。フェイク気味に歌うサビの部分からは涙している女性もいた。
かくしてその熱いノリは維持されたまま、ラストの曲へと怒涛のようになだれ込んだのであった。
あんな大物にも関わらずなんというステージング!
なんという演出!
なんというパフォーマンス!
というか、シカゴのブルースクラブの雰囲気をそのままあの野音に持ち込んで、さらにそれをあそこまで大きな会場に浸透させてしまうバディの真のエンターテイナーの精神に、先ず僕は最大の敬意を表したかった。
さらに言うなら、別段そのような演出などしなくとも、バディはあの日あの場所に登場し、普通に歌い、普通にギターを弾いて、オーサーカー!と叫ぶだけで聴衆は絶倒して喜んだに違いないのであって、それを考えるにつけ、僕はなんともあの日バディに、内側からブルーに輝くエンターテイメントの「魂」をお膳の上にのせて我が目前に差し出され、いかがでしょう?と、どう答えてよいやらわからないような答えを静かに、しかも執拗に求められている気分にされ、いささかショックを受けたのも事実だったのだ。
つまるところ、ボケ・ツッコミのグローバルな本場であるオーサカで、あれほどのボケ・ツッコミを披露したバディ・ガイはやっぱりナイス・ガイや!
いやあ〜〜、エンターテイメント、バンザイ!!

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