僕が忘れものの天才であることについては、前にここで述べた。
恥をしのんで僕が言いたいのは、僕はあくまで「忘れ物」をすることにおいて、他人様より抜きん出た才能があるわけで、決して「忘失」「忘却」においてはその限りではない。
例えば持つべき荷物を持たないで出かけてしまうということなどは日常茶飯事だが、嬉しかったことや悲しかったこと、辛かったことなどは結構他人様に比べ、よく覚えていることが多い。
そういう意味だ。
つい先日もやってしまった。
しかも連発で・・・。
その日も僕は仕事に行くべく、いつもの時間に起床した。
寝ぼけまなこで着替えをし、朝食を済ませ、顔を洗い歯を磨く。
玄関を出て車の前に立ってドアを開けようとした時、車のキーを自宅に忘れたのに気付く(カウント1)。
キーを取りに戻る。
車に乗り、発車。
しばらく走行し、ポストの前まで来た時、投函しなければいけなかった郵便物を玄関に忘れたのを思い出す(カウント2)。
しょうがないので郵便物は諦める。
仕事場に到着。
更衣室で作業着に着替え、工場に降りる。
仕事にかかろうとした時、軍手を更衣室に忘れたのに気付く(カウント3)。取りに戻る。
現場仕事の後、商品を配達するためトラックで出発する・・・・・が、肝心の商品を積み忘れる(カウント4)。
幸い出発してすぐに気付いたのですぐに取りに戻れた(気付かずにそのままお客さんのところに着いてしまったことも以前あった。「お前何しに来てん?」と笑われた・・・)。
何軒目かのお客さんのところで、今まさに納品しようとしている商品に備品を付け忘れているのに気付く(カウント5)。
営業トークでなんとかその場をしのぐ。
夜、仕事終了。
今日はなんだかやたら忘れ物が多かった・・・と反省しながら帰宅しようとするも、事務所のカギを自宅に忘れたことに、ここで初めて気付く(カウント6)。
近所に住む従業員に電話をしてカギを持ってきてもらう(30分事務所でぼ〜っと待ってた)。
CDショップから注文していたCDが入荷した、と連絡があったので帰りに寄った。ついでに他のCDを色々物色していると、「おおっ!エアロスミスのこのアルバム、好きな曲いっぱい入ってるや〜ん」 ということで衝動買いしてしまう・・・・・が、レジまで行ってかわいいおね〜ちゃんの前で財布を自宅に忘れたことに気付く。顔面が火事(カウント7)。
たまたまカバンの中にカードがあったので助かる(ありがとうJCB!)。
帰宅途中、自宅で目を通しておくべき書類を事務所に置き忘れていることに気付く(カウント8)。
自宅に到着。
車を降りようとした時、朝玄関に忘れたと思ってた郵便物が助手席のクッションの下から出現する(カウント9)。
絶望感に打ちひしがれながら、衝動買いしたエアロスミスのCDでも聴くかあ〜、っと思いCDプレイヤーのスイッチお〜〜〜ん!
・・・・・・・・ん?
そのCD、家に持ってた(カウント10!!ノックアウト!!はい残念でした!試合終了でーす!!!!)。
その夜僕は涙で枕をぬらした。

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