「『新型インフル感染者1000人超す』の無意味さ」
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日本国内で新型インフルエンザに感染したと確認された人の数が、1000人を超えたそうだ。世界で8番目だとか。今の体制になってから、これを報じることに何の意味があるのか。
記事は次のとおり。
新型インフル、国内の感染者1000人超す…世界で8番目
6月25日9時51分配信【読売新聞】
長崎、福島、茨城の3県は25日、新たに計4人の新型インフルエンザの感染者を確認したと発表した。
これで国内の累計感染者数(成田空港での検疫などを含む)は同日午前11時時点で、38都道府県の1003人となった。
厚生労働省などによると、5月9日に成田空港での検疫で初めて確認されてから、これまで重症化した患者の報告はない。世界保健機関(WHO)によると、感染者数が1000人を超えたのはアルゼンチンに次いで8か国目。
(記事ここまで)
舛添厚生労働大臣は、
19日の記者会見で「今後は原則として遺伝子検査はやらない」と述べている。これまでも疑いが濃厚でなければ遺伝子検査は全例におこなわれていたわけではない。つまり、感染が確定した人の「数」は、今となっては意味を持たない。
スピード違反でいえば、「明確なスピード違反でも、よほど悪質だったり事故を起こしそうでなければ捕まえない」という体制である。本来意味を持つのは「本当のスピード違反は何人いるのか」であって、何人捕まったかは意味を持たない(警察にとっては意味があるかもしれないが)。発熱がない人も含めて、全国民(あるいは相当大人数のサンプル)にウイルス検査をするぐらいでなければ、正確な統計は出てこない。
各国でどのような場合にウイルス検査をするかの基準もまちまちである。日本だけで考えても、19日に記者会見をする前と後では、同列に比較することはできない。第一、各国の人口がまるで違う。1000人を超えたのが8番目だと書いて、何の意味があるのだろう。目指せ世界一、なのかな? 調べてみたから書いておきたかったのかな?
日本では重症者がまだ一人も出ていない。季節性インフルエンザでも、割合からすれば1000人感染すれば重症の人が数人出ておかしくない。重症になりやすい人への感染予防策の効果を差し引いても、新型インフルエンザがこれまでの普通のインフルエンザと比べて著しい脅威ではないと言っていいのではないかと思う。しかし、世の中にはまだ「今回の新型インフルエンザは重大な脅威である」と思っている人がたくさんいる。
今回のインフルエンザを「普通の脅威である」と認識している人にとっては、「1000人を超えた」「世界で8番目」などの今回のような報道も、普通に受け止めることができるだろう。しかし重大な脅威だと思っている人にとっては、「これは大変だ」という気持ちを増幅させてしまう効果がある。センセーショナルに報道する癖がついているのかもしれないが、意味のない数字で煽動するのは感心しない。