政府・与党は、2009年度の社会保障費を2200億円抑制するという「骨太の方針」の続行は不可能と見て抑制幅を圧縮するための財源を探していたが、特別会計積立金と一般財源化される道路特定財源から出すことに決めた。
記事は次のとおり。
社会保障費の伸び、抑制額は実質200億円に 埋蔵金などで穴埋め
2008年12月17日【日本経済新聞】
政府・与党は16日、2009年度の社会保障費の伸びを2200億円抑制する方針について対応策を固めた。年金特別会計の基金を1400億円取り崩すとともに、一般財源化する道路特定財源からも600億円分を捻出(ねんしゅつ)。実質的な社会保障費の抑制額は、後発医薬品の利用促進による200億円にとどまる。たばこ増税の断念などで迷走した社会保障費の抑制問題は、「埋蔵金」をひねり出す付け焼き刃の決着となる。
政府は来年度予算の概算要求基準で定めた社会保障費の抑制方針を守るため、たばこ税の引き上げ分を充当して抑制額を減らす方法を一時検討した。同基準には「新たな安定財源」を確保すれば、抑制枠を見直せる規定があるためだ。しかし、総選挙を控えて増税に慎重な与党が反対し、たばこ税に替わる財源が焦点となっていた。
(記事ここまで)
「埋蔵金」は一度使ってしまえばなくなってしまう。2009年度に関してはこの手当てで何とかするとして、2010年度に関しては、また後で考えるのだろうか。2010年度は2200億円抑制に戻すようなことをしたら、この国の社会保障分野からはごそっと人がいなくなり、必要な社会保障が確保できなくなるだろう。
もういい加減に、現状を把握していない人が思いつきで言ったとしか思えない「5年で1兆1千億円の社会保障費抑制」っていうのをやめればいいのに。「閣議決定だから、抑制はあくまでも続行します。でも社会保障がなくならないように、その他で手当てします」っていう理屈は、何を言ってるんだかさっぱりわけがわからない。
「国のプライマリバランス(収支)を黒字化するため、さまざまな支出抑制策の一つとして社会保障費を抑制するつもりでいましたが、社会保障費はこれ以上削ったらまずいところまですでに削っていたことがわかりました。国のプライマリバランスの黒字化はしなければいけませんが、社会保障費の抑制は外してその他で考えます」と言ってほしい。政治って、そういうもんじゃないのか。
医療・介護・福祉などの社会保障分野は全般に、かなり無理をしながら余裕のない状況で働いている。私が働き始めた頃(20年ほど前)にはすでに抑制が始まっていた。さらに遡って抑制が始まる前は「儲かってしょうがない。ウハウハ」だった時代もあったのかもしれないが、抑制され続けて「ゆとりを持って働ける」ラインを下回り、「普通に働けば普通にお給料がもらえる」も下回り、「かなり頑張らないと続かない」「もう無理」ラインのあたりを、さらに下がり続けている状況だろう。
すでに抑制する仕組みはほぼできあがっていたところに「骨太の方針」が乗ってきたため、下り坂の角度が急になった。そこをどんどん下り続けている状況なので、2009年度は抑制が実質的に「なし」になったとはいっても、上り始められるような状況ではない。下り坂を加速しながら下りていたのが、一定の速度になる程度の効果だろう。
それぞれの医療機関の置かれた状況によって「もう無理」のラインは異なる。これは、どこまで体力が少なくなれば命が続かなくなるかが人によって違うのと同じだ。その医療機関の存続をすべての人が希望していても、「もう無理」ラインを下回れば廃業せざるを得ない。個別に救うんでも全体を救うんでもいいから、必要な医療機関が廃業しなくてすむような政治をしてほしい。
「これで社会保障分野は一息つけるだろう」とか「これで次の選挙では票が取れるだろう」と与党が思っているのなら、大甘だと思う。そんな状況でないぐらい、医療介護福祉は死にかけた状況に追い込まれている。有権者の皆さんは、与党がどんなに実績を強調しても、医療機関倒産件数などを見て「嘘だ」と思ったら、まともな政治をしてくれそうなところに入れて下さいね(そういう政党があればの話ですが)。