厚生労働省はこれまで、後期高齢者医療制度を「高齢者にふさわしい医療制度」と表現してきた。厚生労働省が考える「高齢者にふさわしい」とは「お金をかけるに値しない」という意味だということが明らかになった。
このブログにもコメントをくださっている澤田石 順様が、3月5日に出された平成20年度診療報酬改定の告示・省令について分析し、厚生労働省が考える「高齢者にふさわしい」の意味を説き明かしてくれている。
全体のまとめページは
「厚労省が推進する棄民政策=『行政的安楽死・大量殺人・障害固定計画』の芽を摘み取ろう」というタイトルで、膨大な資料集になっている。
その中の最新の
「後期高齢者医療制度という棄民制度、厚労省の大嘘」というページを見ると、どのような狙いで後期高齢者医療制度を導入するのかがよくわかる。詳しくは原文を見てほしいが、特にすべての人に見てほしい文だけを抜粋してみる。(障害者で後期高齢者医療制度に半ば強制加入させられる人の問題も非常に大きいが、ここでは省きます。
原文を必ずご覧下さい。)後半のまとめは、全文転載した。
■後期高齢者医療制度という棄民制度、厚労省の大嘘
2008年2月13日の中医協答申を熟読したときに、私は初めて「後期高齢者特定入院基本料」という不気味な用語を発見。「後期高齢者特定入院基本料」がいかなるものかの記載が全くないため、不吉な予感を募らせました。その意味は3月5日の厚生労働省告知(官報)・通知においてとうとう明らかに。予想をはるかに超えた冷酷無比な内容であることを知り、私はほんとに戦慄しました。
厚労省はパンフレット等において後期高齢者医療制度により患者さんが受ける医療の内容が変わることはないと幾度も幾度も宣伝してきました。行政庁がここまで明々白々な嘘をついたことが、これまであるでしょうか。しかも、その嘘たるやよほど不注意な方でない限り直ちに見抜ける単純なものです。
▼後期高齢者に対する迫害(棄民政策)の内容
現在判明している、後期高齢者に対する入院医療における迫害を、3月5日の厚労省告示・通知から列挙します。
A100 一般病棟入院基本料(号外第43号 p7)
7対1入院基本料 1,555点
10対1入院基本料 1,300点
13対1入院基本料 1,092点
15対1入院基本料 954点
注4 特定患者(高齢者医療確保法の規定により療養の給付をうける者[以下「後期高齢者」という。]であって、棟外病棟に90日を超えて入院する患者[別に厚生労働大臣が定める状態等にあるものを除く。]をいう。以下この表において同じ。)に該当するもの(第3節の特定入院料を算定する患者を除く。)については、{後期高齢者特定入院基本料}として928点を算定する。
注5 注4に規定する後期高齢者特定入院基本料を算定する患者に対して行った第3部検査、第5部投薬、第6部注射及び第13部病理診断並びに第4部画像診断及び第9部処置のうち別に厚生労働大臣が定める画像診断及び処置の費用は所定点数に含まれる
→要するに、薬、検査、処置などに保険からは一円も出さない。病院の負担でしろということ
新年度からの回復期リハビリテーション病棟(病院)は居宅等退院率6割以上を達成しないと、厚生労働省により厳罰に処せられます。したがって、病院が倒産することを回避するために、後期高齢者の入院制限を強化する回復期リハビリ病院が増加することは引けられません。後期高齢者がリハビリに挑戦できるチャンスは更に小さくなります。救急病院からはお荷物にされるし、回復期リハビリ病棟からは「リハビリの適応がない」と断られるしと、踏んだりけったりの悲惨な状況に陥る後期高齢者が増加することは間違いありません。もちろん、厚生労働省は意図してそのような政策を実施すると決断しました。
▼感想
厚労省が宣伝してきた後期高齢者に「ふさわしい」医療の現実が明らかになり、その内容のスキャンダラスなことにあきれ果てました。ここまで破廉恥な内容だと、白紙撤回に追い込むのは余りにも容易です。こんな政策が白紙撤回されないとしたら日本国はおしまいです。
厚労省はいつものように欺瞞・偽装を積み重ねてきましたが、例年のように直前に公開することにより、市民・患者らはあきらめると確信したのでしょう。医療への公的支出削減原理主義という病は年々悪化してましたが、とうとう厚労省官僚の現実感覚(政治感覚)を麻痺させるほどまでに増悪したのです。
厚労省官僚の医療への公的支出削減原理主義はそれ自体が反人間的なものですが、病気ですから同情の余地はあります。小泉政権は1983年頃からの病気の悪化を加速されました。同情の余地が皆無なのは厚労省官僚の人間観です。
生活習慣病は「悪い」生活習慣が原因なのであるから、個人の罪である
「悪い」生活習慣を継続した結果として、65才から74才において脳卒中、心臓病、呼吸器疾患等を発病して身体障害者になったらのだから、それは自業自得である
「悪い」生活習慣のために身体障害者になったのだから、そのような者に対する医療費は基本的に無駄である
そのような身体障害者は「後期高齢者医療制度」という姥捨山制度に強制加入させられて当然である
このような人間観は現場の医療をまったく知らないことから来るものなので「少しは同情できる」でしょうか。いいえです。なぜならば現場の医療など知らなくても、高血圧、脂質異常症などの「生活習慣病」は、「良い生活習慣」を続けた方にも発生することが医学の常識だからです。「生活習慣病」の原因が遺伝的な体質という他ないことがとても多いことは、文献を読んだらわかります。
▽ヒトラーと厚労省官僚の人間観は性質的に同一なり
外来診療をしている医師はおそらく一人残らず「生活習慣の改善」が極めて困難であることを知っています。「生活習慣の改善」を効果的に行う唯一の手段はアメとムチ(脅迫)による全体主義支配。
「良い」生活習慣を一般市民に「強制」できたのは歴史上において、ヒトラーの国家社会主義政権のみでした。更に、ヒトラーは人々の精神の内容を「変革」しようとし、事実かなり成功しました。ヒトラーは、精神障害者や遺伝病の方々を安楽死させ、ユダヤ人、ジプシー、社会主義者、聖職者などの「抵抗勢力」、「寄生虫」ないし「イデオロギー上の敵」を大量虐殺しました。
ヒトラーは医療費削減のためにそうしたわけではありませんが、厚労省の「医療費適正化原理主義」とヒトラーの人間観は同一といわざるをえません。人間を道具、あるいは「対象」として、マクロ的な数値だけみているのです。
▼結論
既に複数の報道機関は「後期高齢者医療制度」ないし「回復期リハビリに関する棄民政策」に関する取材・調査を始めています。3月5日の官報号外・通知で公開された後期高齢者に「ふさわしい」診療報酬体系の内容が迫害政策であること、さらに厚生労働省の大嘘が天下に周知されることになります。厚労省にはもはや言い逃れの余地はなくなりました。
「リハビリの入り口で遮断する政策」、「長期リハビリを必要とする患者のリハビリを一ヶ月に3時間20分しか認めない政策」、そして「後期高齢者医療制度」の3つは、厚労省が公的医療支出削減のみを目的として意図的に組み合わせたものだと断言します。したがって、この3つを一挙に粉砕し、そのような政策が二度となされないように根絶しなければなりません。
私は確信しています。
自民党・公明党は後期高齢者医療制度廃止法案に賛成せざるを得なくなる
もしも、自民党・公明党が後期高齢者医療制度廃止法案に反対投票をしたら、次期衆議院選挙での大敗北は避けられない
「リハビリを必要とする患者を入り口で切り捨てる政策」、および「長期のリハビリを必要とする患者さんに対して月に3時間20分しかリハビリを認めない政策」、この二つに関しても国会議員と報道機関の注目が集まるようになることであろう
新年度診療報酬におけるリハビリ関連の改定項目は、夏までには白紙撤回されることになる
もちろん、そのようになるために、私は日々できることをしていきます。全国の有志が厚労省の迫害政策・棄民政策を根絶するために立ち上がることを信じて疑いません。
(引用ここまで)
このブログでも、後期高齢者医療制度は「姥捨て山政策」であると1年半前から指摘し続けてきた。同じ問題を指摘している人はたくさんいたのだが、いろいろな政治課題に隠れて話題にならず、ついにほぼ原案通りに導入される事態になってしまった。
本当にこのまま後期高齢者医療制度が施行されるなら、甚だしい「人災」を引き起こす。そしてその責任は、このような憲法にすら違反する施策を立案した厚生労働省の役人と、それを阻止しなかった国会議員の不作為の罪として裁かれるべき性質のものである。
厚生労働省が提示したものがすべて正しいなどということはあり得ない。それは医療現場にいる者であれば、常に感じていることである。これまでは誤った医療制度を提示されても、制度上逆らえないこともあり現場の医療者は従ってきた。しかし今回は、従うことが決定的な国家の崩壊を招く。人間関係も破壊する。かかわる誰もが嫌な思いをする「強制姥捨て山制度」は、絶対に導入すべきではない。
根本的な問題として、今回導入されることになっている後期高齢者医療制度は、高齢者の基本的人権を侵害しており、憲法違反である。憲法違反の制度を国が導入することは許されない。厚生労働省はこの制度を導入するより前に、まず憲法改正を行わなければならないのではないか。厚生労働省が憲法より優位だなどということは、天地がひっくり返ってもあり得ない。勘違いも甚だしい。
このブログでこれまで後期高齢者医療制度について書いた記事は、ざっと次のとおり。
2006/9/12
「姥捨て山政治?」
2007/3/24
「ほんとにやるんだね、姥捨て山政治。」
2007/8/9
「8か月では無理だろう」
2007/9/6
「75歳になったら…」
2008/1/8
「姥捨て山制度、本決まり」
2008/1/22
「高齢者虐待防止法違反で初逮捕」
2008/2/5
「誰か納得してるのか後期高齢者制度」
1年半前には、こんなひどい制度がまさか本当に実現することはないだろうと思いながら最初の記事を書いたが、日が進むにつれてブログ記事の絶望感が増えている。そして今、怒りに変わった。
このブログでは厚生労働省の仕事には苦言を呈しつつも労いと期待を織り交ぜてきたが、やっぱり絶望的に駄目な役所なのかもしれない。こんな厚生労働省、解体してしまえ。