スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国債の格付けを1段階引き下げたことにオバマ大統領が異議を唱えたが、市場は逆に暴落している。オバマが劣化しているのか、米国がどうしようもないのか。
記事は次のとおり。
オバマ氏「米はトリプルA国家」 格下げで新たな切迫感
2011年8月9日【共同通信】
【ワシントン共同】オバマ米大統領は8日、米国債の格下げを受けて声明を発表し、格下げは「米国に新たな切迫感をもたらしてくれた」と述べ、議会と協力し問題解決に向け早期に取り組む姿勢を強調した。大統領が格下げ後に自らの見解を公にするのは初めて。
オバマ氏は、米国債の格下げを受けて、8日の米株式市場が大きく下落していることについて「経済に制御不可能なことは付き物で、市場は上昇と下落を繰り返す」と指摘。「格付け会社が何と言おうと、米国が(最高位の)『トリプルA』国家であることは変わらない」と主張した。
(記事ここまで)
オバマ大統領は、いつもの自信たっぷりの態度で
「米国が『トリプルA』国家であることは変わらない」と語ったが、そこには態度と言葉しかなく、具体的な打開策は何も提示されなかった。
「市場は上昇と下落を繰り返す」のが付き物であると言いながら、米国の格付けは何があっても不動であるというのは、説得力に欠ける。
5日にS&Pが米国債の格付けを最高位の「AAA(トリプルA)」から1段階下の「AA(ダブルA)プラス」に引き下げると発表して以降、世界の市場は下げ続けている。日本の株式市場も毎日下げているし、米国は下げる勢いが速すぎて売りが売りを呼ぶ「パニックモード」に入っているとも伝えられる。
米国債はS&Pが格付けを始めた1941年以降、ずっと最高位のAAAだった。オバマ大統領は「格付け機関が何と言おうと」と格付け機関の権威を認めないような発言をしたが、S&Pはさらなる引き下げもにおわせているし、他の格付け機関も遅からず追随するだろう。「投資不適格」な格付けになったら、デフォルトは避けられない。しかしそこまでは、まだまだ距離がある。
オバマ大統領は、S&Pの引き下げは「不当だ」と言ったが、金融機関や投資家は、S&Pの格付けがこれまでAAAを維持していたのも政策的な力が働いていたためで、実質的にはAAAの信頼度はないと考えていたのではないかと思う。格付け引き下げは避けられないものだと予想されていたし、S&Pもムーディーズも引き下げを予告していた。
8月2日が期限だった米国債上限引き上げ法案も、直前まで大もめにもめているようなふりをしていたが、土壇場で合意に達する筋書きはできていたのだろう。そうでなければ、全速力で平均台を駆け抜けるようなタイムスケジュールを、落ちずにこなせるはずがないと思う。8月3日にはオバマ大統領のバースデイパーティー(実際の誕生日は8月4日)も盛大におこなわれたが、デフォルトの可能性が高かったら準備どころではなかったはずだし。
4年以上前のこのブログで、米国の
サブプライムローン会社が破綻したニュースを伝えた際、記事の中で私は
「借金と関係諸国からの貢ぎ物(と、時には分捕りもの)をあてにして、机上の計算の上に成り立っている米国経済というものが、どうも私には『信用できるもの』に見えない」と書いていた。この頃は私も「そうは言っても米国はしたたかに生き残るだろう」と思っていたが、その後のドタバタを見ていると、言葉と慣習と手練手管だけで信用を維持しようとしている国かもしれないと思うようになってきた。
日米欧の先進7カ国(G7)は7日(日本時間の8日早朝)に緊急の電話会議をおこない、市場安定のために協調するという緊急声明を発表した。日本は米国債を信任し続ける宣言もしたが、オバマ氏がやっていることと、基本的には違いはない。「『心配だ』と言うよりは『大丈夫』と言っていた方が、みんながお金を引き上げないから大丈夫な可能性が高まる」という心理ゲームだ。真実を知っているのは誰なんだろう。誰もいないのかもしれない。
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