鶴我裕子の「バイオリニストに花束を」中公文庫 を読んだ。N響の第1バイオリン奏者だった人の折に触れて綴ったエッセイ集だ。
日本人の愛してきたアイルランド民謡だって、風前の灯だ。あの「埴生の宿」つまり「ホーム・スイート・ホーム」、それをテーマに使ったバイオリン曲がある。私は子供を集めて「変奏曲」を説明する時に、ちょうど良いと思っていたのだが、もとの曲を知らないのでは、何にもならないではないか。わが社(N響)のフルート首席も「ホーム・スイート・ホームって知りません」と胸を張って言っていた。
アシュケナージの定期公演デビューの日。指揮棒の先を左の掌に刺してしまった。休憩時間に私が考えたこと。「お客様の中に、指揮者はいらっしゃいませんでしょうか」とアナウンスする。
実際は、こうなった。堀コンマスが、弾き振りする、というのだ。この曲は幸い、すっかり手の内に入っているレパートリーのひとつだったので結果はよかった。
こんなエピソードの数々を軽い口調で次々に披露している。

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